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「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0439

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 なんだか知らないうちに類にデートとやらに連れ出され、朝マック…とはさすがにいかないが、近場のカフェで簡単なサンドイッチとオレンジジュースのモーニングで朝食を済ませることとなった。
 「…なんていうか、あんたって意外にすごく庶民的だよね?」
 「そ?」
 「F4が、っていうよりあんたみたいなセレブな人が、こういう店を普通に利用するとか、以前だったらまったく想像もできなかったよ、あたし」
 コーヒーを啜って、小首を傾げている様までもが美しく、ウィンドーから射す明るい朝の光に照らされた横顔は、まるで宗教画のストイックな美貌の天使のようだ。
 …角刈りだけどね。
 「ま、俺も英徳時代はこういう店、入ったことなかったけど」
 「あ、やっぱり?」
 「イギリスに留学した頃からかな。司んとこと違って、うちは各国に屋敷を構えてるほどじゃないからね。適当なアパート買って一人暮らししてたし、大体外食だったからさ。毎回一々ホテルのレストランでっていうのも面倒で、こういうところも利用するようになったんだよ」
 「メイドさんとかいなかったの?」
 「もちろん、いたよ」
 ガクッ。
 …もちろんかい。
 つくしのイメージする一人暮らしとは、やっぱりかなり違うようだと脱力する。
 「って言っても、あの頃から知らない人間にプライベートスペースに踏み込まれるのはイヤで、あんたみたいに住み込みじゃなかったし、…通いの人間にしても何度か痛い目見てたからさ。結局、あんたが最初に俺の部屋見た時みたいな状態になると、たまにハウスクリーニングを入れたりするって感じだったかな」
 「なるほど」
 そのたまにがどの程度の頻度だったかは知らないが、人間とは緩い方向には慣れる生き物だ。
 常に綺麗に整えられた豪奢なお屋敷で育った男も、徐々に汚部屋に慣れ切っていったことは想像に難くない。
 …じゃなきゃ、絶対にあのとんでもない部屋で我慢できてたはずがないわよ!
 しかも、どうやら恐ろしいことに、彼女が現れなければ、まだまだ頑張りそうな状況だったのだ。
 ガサコソと這いずり回っていた黒い虫の映像に軽く嘔吐いて、慌てて脳裏から消し去る。
 「あいつらと離れてから、俺もそれなりに友人付き合いした人間もいたんだけどさ。そうやって付き合った人間が、必ずしも俺らと同じ階級の人間とは限らなかったしね」
 「へぇ?」
 意外だった。
 しかし考えてみれば、いくら他人に拒絶的だったとはいえ、静と疎遠になり親友たちとも遠く離れていては、いくら非社交的な男でも、さすがに一人っきりではいられなかったのだろう。
 「大学には世界各国からいろんな階層の人間が集まってきてた。まあ、さすがに貧困層の人間が海外留学してくるってことはめったになかったけど、才能を認められて国家が支援して…ってヤツも普通にいたし、そうかと思えば司んとこを凌ぐような大財閥の一族の人間なんてヤツもゴロゴロいたな。まあ、さすがに一族を継ぐような後継者はそういなかったけど、それこそ千差万別だったよ」
 どうやらその経験が、今、こうして形になっているらしい。
 …発展途上国ばかり回ってたからって理由だけじゃないんだ。
 「もちろん、いろいろ回って、知らないで口にした物が猿の脳みそだった、なんて経験もあるけどね」
 「うぐっ」
 「ぷっ」
 サンドイッチを喉に詰まらせ目を白黒させているつくしの様子に、くくくっと笑う男を涙目で睨みながら、慌ててオレンジジュースを口に含んでなんとか詰まったパンを飲み下す。
 「げほっ、ケホケホッ、ちょっとぉ!」
 「いや、冗談なんかじゃないよ?もちろん、東南アジアやアフリカでも、主要都市には設備の整った高級レストランなんかいくらでもあるけど、俺が赴任したたのはそういうところばかりじゃないってこと」
 「そ、そっかぁ」
 かなり驚きだ。
 御曹司といえば苦労知らずで、蝶よ花よ、お膳立てされた環境の中、綺麗な仕事だけを優雅にこなしているイメージがある。
 もっとも、司の身近にいたつくしも、そのイメージがあくまでもイメージに過ぎず、彼ら経営者がそれこそいつ過労死してもおかしくないような、過酷な激務に身を置いているかよく知っていた。
 もちろん、そうしたことがすべての経営者に当てはまるわけではないだろうが、少なくても司や、司の父母はそうだったのだ。
 「あきらや司なんかはアメリカやヨーロッパの先進国をメインにしてるだろうし、司なんかは今はなおさら国賓待遇で迎えられることも珍しくないだろうけど、それでも若い頃はそれなりに、うわっていう経験もしたことあるんじゃないかな」
 「……かな」
 「司は片時も妻を傍らから離さない愛妻家として有名だったから、わりとあんたや戒もどこへでも連れて行かれていたかもしれないけど、それでもさすがにそんなところにまでは、妻子を連れては行かなかっただろうから、ピンとは来ないかな?」
 記憶を探れば、つくしや戒を転勤や長期の出張には必ず同行させていた司だったが、類の言うとおり、政情不安なところや治安が良くないところへはつくしたちを伴っていなかったように思う。
 「そうだね。憶えてる範囲でもそういう経験はなかったみたい」
 つくしの同意に、類がチラッと一瞬彼女の顔を見た気がした。
 しかし、彼は特にそのことについて、それ以上つくしに尋ねようとはしない。
 彼女の話はちゃんと聞いているようなのに、類という男はそういう男で、単につくし個人にそれほど関心がないだけなのかもしれなかったが、彼女が自分から話そうとしないことをあえて聞き出そうとすることは滅多になかった。
 だが、たまにはそうではない時もある。
 「あんたってさ、高校の時までの記憶はほとんど、それとも全部かな?…もう戻ってるんだよね?」
 「……………」 
 「俺もあんたの記憶喪失のことや司との離婚に関しては、あきらや司の姉ちゃんからの又聞き程度にしか知らないんだけどさ。4年…もう5年近く前か、俺と会ったあんたは、俺のことをまったく憶えてなかった」




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