「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0435

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 「…そうなんだ」
 聞きたくない、とまでは言わないが、類の女性関係など自分には関係ない話だ。
 それでもチクリ痛んだ胸の奥の痛みを、あえて見て見ぬフリをする。
 …道明寺の関係者なんかに、わけのかわらない感情を持ってどうするのよ。
 たとえそれが過去、まるで救世主のように崇めて憧れていた初恋の人だったのだとしても。
 もはや馬鹿な幻想を抱いていられるばかりの、純朴な少女ではないのだから。
 「ま、結局どれも結婚に至らなかったわけだし、あきらかにヤツが気乗りしていないのはバレバレだったけどな」
 「でも、いずれは会社の都合で、条件の合う人と結婚するようなことは言ってたわよ?」
 つくしにもプロポーズ紛いの、ジョークを言っていたことは黙っておく。
 …単なる与太だし。結婚するつもりない?とか、ふざけるのもいい加減にしろって感じよね。
 「政略結婚に反発してる風じゃなかったけど?」
 「はぁ~、ま、そりゃそうだろ。下手に真っ向から拒否すれば、面倒臭いことになるのはわかりきってるから、あいつものらりくらりだ。が、そういうことはともかくとして、だ。問題は女嫌いなら女嫌いなりに、あるいは女なんて誰でもいい、拘りもねぇってくらいに、突き抜けてりゃそれでもいいんだけどよ」
 「結局、あんたは何が言いたいのよ?」
 いい大人のことだと付き離したようなことを言っているかと思えば、総二郎の物言いは奥歯にものが挟まったような物言いで歯がゆい。
 「類…あいつ、夢遊病みたいなのあんだろ?」
 知っていたのか。
 思わず総二郎をマジマジと見つめ、驚きに開きかけていた口を閉じる。
 「ガキの頃もちょっとあったけどよ。それでも、それほどひどくなかったし、それも徐々にデカくなるにつれて収まってたんだよな」
 「そうなんだ」
 意外な話。
 いや、今となっては、彼女にとってもそう意外なことではなかった。 
 「それが一時期…静と別れてから、またひどくなったらしくてな。英徳の高等部を一応卒業したことにはなってるが、引きこもりが併発して、一年大学を浪人してんだよ、あいつ」
 「え?」
 そういえば類自身も、イタリアのどこだかにしばらくいたような事を、言っていたかもいれないとつくしにも思い当たった。
 「ま、その後、2年スキップしてるから、結局トントンになって、トータル一年早く大学卒業してるんだかな。高3の頃にも少しあったろ?まあ、お前はそれどころじゃなかっただろうから、覚えてないかもしれないけどよ」
 それどころではなかったのは総二郎の言う通りだったが、それでも当時の類の状況は、自分でも呆れるくらいによく覚えていた。
 …あの頃のあたしの拠り所だったから。
 類自身には何もしてやれないと、突っぱねられたこともあった。
 それでも結局は、連れて逃げてやろうかと、戯れにでも言ってくれた恩義もある。
 「静もある意味、罪な女だよな」
 「……え?」
 自分の中に沈み込んでいたつくしが、俯いていた顔を上げ、あらためて総二郎を見返す。
 「ガキの頃はそんなこと、考えもしなかったし…そもそも俺らは、互いのことにすらそれほど関心がなかった」
 自嘲に歪んだ総二郎の顔は、学生時代の軽薄なものとは何処か違った。
 …この人も大人になってるんだ。
 それはそうだろう。
 4年前に顔を合わせた時には自分のことにいっぱいいっぱいで、自分や司、もっと近しい人たちの変化に打ちしがれて、総二郎やあきらたちの変化に目を向ける余裕などなかった。
 「俺たち…俺もあきらも後で知ったことなんだが」
 「……………」
 語調を変えた総二郎を見つめ、無言で次の言葉を待つ。
 総二郎はらしくなくつくしから目を反らし、話し出してもなおまだ迷っているようだった。
 それでも口に出してしまった以上、彼もある程度心を決めていたのだろう。
 わずかな逡巡を振り切って、再び口火を切った。
 「5年…いや4年くらい前か。類のヤツ、静とけっこう長い間、不倫していたらしい」
 「………え?」
 「俺らにも秘密にしてやがった。ヤツがそのことを俺らに話したのも、つい最近、静と別れてずいぶん経ってからのことだ」




*****




 『司を変えたお前だから…と言うんでもないが、思えば静を除けば、唯一あいつが自分から関わった女がお前なんだよな』
 結局のところ、ドライを装った総二郎が一番お節介だったというわけだ。
 自分では決して認めなかったけれど。
 十数年前に、それを司に対して発揮して、つくしを苛んだ彼の独善的な友情だったが、奇妙なことに今回はそれほどの嫌悪や反発を感じなかった。
 たぶんそこには、なにを見当違いなことを、といった気持ちもあったに違いない。
 …花沢類が、あたしに関心を持ってくれたことなんかなかったでしょうに。
 「自分の分は自分で払うって言ってるのに」
 「お前も俺らの世界に生きてたこともある女だろ?メンツってもんがあるんだ。女に自腹なんて切らせるわけねぇだろ」
 「…類に奢ったこともあるけど?」
 「マジかっ!?」
 ポカンと驚いてる顔が、美形のくせにかなりの間抜けヅラだ。
 そうはいっても、
 …そんな顔も綺麗だけどさ。
 崩れるってことがないのだろうか、この連中は。
 「ま、あいつは幼馴染みの俺らにも、理解しがたい宇宙人だからな」
 大いに同意できるところだが、たかだか女に奢られたことがあるくらいのことで大げさな話だ。
 …奢ったって言ったって、スタバのコーヒーとかその程度なんだけどね。
 さすがにランチやディナーは類持ちだったが、それでもセレブな男のわりに、彼は庶民的な店のチョイスも嫌がらない男なので、つくしもそう強情を張らずに済んた。
 また、その代わりにと、安価なカフェでくらいは彼も奢られてくれる。
 もっとも現在彼女は、衣食住の食住付きで類に雇われているのだから、ほとんど食費に関して彼に丸抱え同然なのだが。
 「とにかく、俺は女に財布出させたりしねぇから」
 そこはやはり学生時代とは異なり、総二郎の言う通り、男のメンツというのがあるのはつくしも理解していた。
 …ま、仕方ないっか。
 それ以上ウダウダと会計でごねることなく、内心で溜息を付きつつも素直に礼を言う。
 「ご馳走でした」
 「ああ」
 総二郎もつくしのそんな気遣いを察して、鷹揚に頷き笑ってくれる。
 隠家的店だったようで、味のわりに人気がなく、薄暗い内装もあって、幸い総二郎に気づく人間はいなかった。
 しかし、たまたま総二郎の斜め正面側の席に座っていた女性客が、その笑みを目撃して顔を真っ赤に赤らめ硬直しているのがつくしの目に入る。
 …あ~、わかるかわる。
 奇妙なおかしみが湧き上がる。
 どこまでも平凡だったはずの自分が、そうした男たちと深く関わることになった人生の数奇さを思って。
 下手に騒ぎ立てられる前にと、さっさと店を後にする。
 「じゃ、あたしはこれで」
 いつの間に連絡したのか二人が大通りに出たとたん、ドンピシャのタイミングで、先ほど総二郎が乗っていた車が横付けされた。
 「今日、車は?」
 「…いえ」
 「呼んでねぇの?」
 どうやら総二郎の認識的に運転手つきの車での送迎を想定しているようだが、つくしはもう富豪の若奥様ではない。
 普段はたいてい自分で自分の車を運転していた。
 今日は一人で用足しがてら、気儘なそぞろ歩きを楽しみたかったから、駐車場を気にしたくなくてたまたま自身の車をマンションに置いてきただけだ。
 「なら、ちょうどいい。類んところまで送ってやるから、ウチの車に乗ってけよ」




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