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「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0434

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 「あ、ああ…慰謝料、ね」
 さすがに隼斗との結婚・離婚の経緯や、司から受け取った慰謝料の顛末については総二郎には伝わっていないらしい。
 …そりゃそうか。
 ベッタリだった学生時代はともかくてして、彼らもいい年齢の大人だ。
 いつまでも互いの事情について、なんでもツーカーというわけにもいくまい。
 「そうやって普通の格好してホケホケ歩いてるお前見てると、とても道明寺家の元若奥様には見えねぇけどよ。それでも蛇の道は蛇って言って、お前の顔を知っている人間は知っている。ましてや、お前、学生時代にシンデレラガールとか言って、一時期世間を賑わしたしな」
 「そうらしいね」
 とはいえ、それも遥かに遠い過去の話で、つくしは芸能人ではないのだ。
 彼女だけではなく世間にしてみても、そういつまでも覚えていられるものではなかったのだろう。
 道明寺財閥御曹司の元妻なのではないかと、これまでつくしが指摘されたことはなかった。 
 「司がSPつけてたよな?」
 「……それ」
 顔を上げたつくしの険しい顔を見て、「あっと」と総二郎が気まずそうに視線を彷徨わせた。
 「西門さんも知ってたの?」
 「あ~やっべぇ」
 図星のようで、顔に手を当て、あっちゃ~と呻いている。
 しかし、悔いてもいる様子からして、どうやら言うつもりが無かった失言だったらしい。
 「…俺から喋ったとかいうの、司には内緒な」
 「内緒って、いつあたしがそんなことを道明寺に言う機会があるって言うのよ」
 うんざりと吐き捨てる。
 どこまで総二郎が司と彼女の事情を知っているのか知らないが、やはり彼らの認識はどこかズレていると言わざる得ない。
 「でも、俺も云々…って言うところをみれば、SPのこと、お前にもバレてたわけだ」
 「…まあ」
 そこにもいろいろ事情はあったが、それをこと細やかに他人に説明などしたくなくって、つくしは曖昧に口篭った。
 「あいつの気持ちもわかってやれ。後、自分の立場もな」
 いつかにも聞いたような総二郎のセリフだったが、大人になった今ではつくしの方にもそれなりの余裕もあり、また彼らのような世界に生きる者たちの条理や事情もある程度は理解している。
 だからかつてのように反論することなく、曖昧に首を振り苦笑するに留めた。
 「で?どうだ、あれから何か進展したか?」
 「……進展したかって」
 「類とだよ?」
 総二郎の声音からして、特につくしを咎めたり非難するつもりではないようで、それどころかニヤニヤとからかい顔だ。
 …ヤらしい顔してても下卑てもいなくて、男のくせにやたらと色っぽいとかなんなのよ。
 友人というには語弊があるだろうこの男に、弄られる筋合いではないと眉根を寄せ、知らず睨んでいたらしい。
 「そう怖い顔すんな」
 「つまんない冗談やめて」
 「なんだ、進展ねぇのか」
 呆れたような物言いの総二郎を放置して、目の前に配膳されたサラダに向かい合う。
 よけいな勘ぐりをされたり、探りを入れられるのは真っ平だ。
 …まさか、この人、いまだに道明寺と繋がってるんじゃないでしょうね?
 もちろん親友である以上、それなりに交流は続いているだろうが、よもやNYの司へとわざわざ彼女のことを注進しまいと思いつつも、胡乱に総二郎を見やる。
 だが、総二郎は総二郎で、つくしや…類に対していろいろと思うところがあるようで、
 「あいつもいい年こいて、相変わらずチンタラやってるんだな」
等々、わけのわからないボヤキを零していた。
 「お前らマジで、何もないわけ?」
 「…ないわよ」
 ドキッと胸が鳴ったのは決して疚しいせいではないはずなのに。
 しかし、それならば類にデートに誘われたのはいったいなんなのだ、と言う心の声をつくしは無理やりに押さえ込んだ。
 …どちらにせよ、一々この人に報告する義務はないんだから。
 「これはあくまでも俺の好奇心から聞くんだが、お前、あいつと同居しててヤツに男を感じたりしないわけ?」
 「それって、どうあたしに答えて欲しいの?」
 いやに執拗な総二郎の意図がわからない。
 司の親友だと言い、類の親友でもあるはずこの男にとって、自分はいったいどういう立ち位置にいるのだろうか。
 つくしの問いかけにスッとニヤニヤ笑いを消し、思いの外真面目な顔をした総二郎が、つくしから視線を外して息をつく。
 「そうだな、そう返されると俺も困るな。いい大人のすることに一々口出しする野暮天にはなりたくねぇから、あくまでも俺の好奇心ってことで答えて欲しかったんだがな」
 どこか含む物言いの総二郎を怪訝に見つめるつくしへと、困ったように小さく笑んで…けれど、なにをどう思い切ったものか、ボソリと口火を切った。
 「お前、類と静のこと知ってるか?」
 「類と静さんとのこと?」 
 突然の話題の変換に面食らって、鸚鵡返しに言葉を返す。
 「静を追いかけて、類がフランスに行った後の顛末のことだ」
 何をどう知りようがあったというのか。
 ちょうどその頃、つくしは記憶を失い、司の妻として生きていたのだ。
 そして、現在その頃の記憶の大半を失っている…あるいはかなり思い出してはいても、我がこととしていまだ実感を伴っていない。
 それでも時折訪れる夢の中での出来事が、過去の記憶に合致し始めている。
 たしかに他人から伝え聞く事柄が、本当にあったことなのだと彼女に教えていた。
 新たな苦悩を呼び込んで―――。
 …だからって、何が変わるわけでもない。
 自分はあくまでも‘牧野つくし’なのだと、意固地に固執する。
 おそらく誰にも今の自分の恐怖はわからないだろう。
 日増しに蘇ってくる記憶の渦に、自我を‘道明寺つくし’に乗っ取られるのではないかという脅威を抱いていることなど。
 …もし、全部思い出してしまったら、いったいあたしはどうなってしまうの?
 ‘道明寺つくし’として過ごした10年間よりも、‘牧野つくし’として生きた歳月の方がよほど長いはずだというのに、どうしてか‘道明寺つくし’の記憶を完全に凌駕しきれない。
 「お前が高校時代のある期間から、司と離婚する少し前…日本に戻ってきたあたりまでの記憶がないことは俺も聞いて知っている。だから、そうじゃなくって、類からヤツ自身のことに関して何かを聞いていないかってことなんだよ」
 「類から?何かって言われても」
 総二郎は何を言おうとしているのか、一つの予感。
 脳裏に浮かぶ、一つの写真がある。
 そして類の心の病とも言える夢遊病と虚無、荒廃の気配。
 かつての司のように暴れるとか放蕩に耽るとかそんな極端なものではなかった。
 類の場合は社会人生活もまともにこなしてはいるし、世間のルールに従って特にそれらに反することもない。
 けれど、やはりどこか類もまた、人生に対して投槍だった。
 食事一つにしても、生きる気力に希薄なのだ。
 …どうして。
 誰よりも美しく全てに恵まれていながら、どうして彼ら―――類も司も、いつも何かに飢えて満たされていないのだろう。
 「静さんが家を出てフランスに渡ったのを、類も追いかけて行ったっていうのは、たしかにあたしも聞いてるよ?でも、あとは静さんの念願が叶って、国際弁護士になったということと、花沢類ではない人と結婚したってことくらい。それだけだよ」
 「…そうだな。それでヤツも一度は静を諦めて、引き籠もり生活を辞めてイギリスの大学に通いだした…日本には戻らなかった」
 「らしいね」
 そこまでは聞いている。
 それ以上の何を総二郎は語ろうとしているのか、いや、なぜそんなことをつくしに聞かせようとしているのだろうか。
 「そのままだったら、たぶん時間はかかっても、類も静を吹っ切ってそれなり立ち直ったんだろうとは俺も思う」
 「……………」
 「前向きにかどうかはともかく、それなりに見合いもこなしてたし、一時期はあいつも親のお膳立てだったが、結婚を前提にそこそこ女とも真面目に交際してたらしいからな。」




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