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「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0431

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 「あの子に会いたいのよ」
 「……………」
 「萌奈が死んだら、大河原の身代はあんたのものになっちゃうんだもの。いくらうちの親族が強欲だって言ったって、そうそう滅多なことはできないはずよね?」
 出された朝食を口にしながら、司は投げやりに答える。
 「お前が俺と結婚して、ガキでもできていればな」
 たとえ萌奈が死んだとしても、大河原家の継承権は司と滋との間の子に移る…つまりは司の大河原財閥の経営権参画への根拠をより強固にするだけで、大河原傍系一族には何らメリットはない。
 それどころか大河原一族にとっては一族存亡の危機。
 道明寺一族に乗っ取られてしまえば、もはや彼らの関与する余地がなくなることは明白であり、いくら大河原家の傍系一族が強欲でも、道明寺財閥までをも相手取り、戦争を仕掛けることはできないはずなのだ。
 「……私はあんたをまだ、完全には信用しきれてなのよ」
 それも当然のことだろう。
 現在、司は滋母子の庇護者でもあったが、同時に、もっとも強大な敵にもなり得る存在でもある。
 「まあ、お前の危惧もわからないじゃないし、俺を信用できないのも当然のことだろうよ。実際、お前との間にガキでも作って、大河原を乗っ取っちまえば一番手っ取り早いのは確かだからな」
 「っ!」
 大きく目を見開き、滋が息を飲む。
 そんな滋にチラリとも視線を向けることなく、
 「が、俺に契約を持ちかけたのは、お前であって俺じゃない」
司が冷たく切り捨てる。
 滋がぐっと唇を噛み締めた。
 「……パパが元気だったら」
 「親父の庇護に甘んじて、自分で基盤を作らなかったお前のミスだ。繰り言を言っても仕方がないことだろ?」
 わずかばかり食事を口にしただけだが、司には最初からほとんど食欲があるわけではなかった。
 一口、二口、一度に出させた料理を一応はまんべんなく食べ、朝食を終える。
 …戒もいねぇしな。
 小さく長く息を吐き出した滋もある程度は気を取り直したのだろう。
 苦しげな…けれど元の勝気さを取り戻した顔が、司を見上げ睨めつける。
 「それでもあんたにだって、私との結婚にメリットがなかたわけじゃないでしょ?あんたが異例の速さで母親を押しのけて、社長の地位に就けたのは私との婚約発表の影響もあるはずよ」
 司が肩を竦めて、席を立つ。
 「当たり前だ。双方にメリットがあるからこその契約だ。一方的に依存されても迷惑だ」
 「……っ」
 「お前が俺にとって利用価値が有る限り、俺の指示に従う限りは俺もお前との契約を守る」
 「ホントね?」
 それでも念を押さずにはいられない滋の心情を一顧だにもせず、司が傲慢に言い放つ。
 「俺が一度口にした言葉は絶対だ。疑うな、探るな、抗うな。……どちらにせよ、俺もNYにジッと引きこもっていられるわけじゃない。その俺と結婚しようというお前にしても同様だ。他人に搾取されたくなければ、自分自身で自分と自分の大切なものを守れるだけの力をつけることだな」




*****




 「ただいま」
 ウトウトしていたらしい。
 聞き慣れた声につくしがふと目を覚ませば、いつの間にか帰ってきていた類が、ちょうど冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出すところだった。
 慌てて寝込んでいたダイニングチェアから立ち上がる。
 …あ、ありえないっ。
 しかも自室ならばまだしも、雇い主の家具にがっつり座り込んでの居眠りだ。
 使用人としてあるまじき怠慢だと項垂れる。
 そんな彼女を類が見て、首を傾げた。
 「別に24時間労働契約でもないんだから、わざわざ俺を待ってないで寝てればいいのに」
 「…いえ、昼間かなり自由にさせてもらってるし」
 かなりどころか、厳密に求められているのは部屋の整理整頓だけとかいう言語道断な労働契約だ。
 時間も自由なら、その範囲もかなり大雑把、その上かなりいいお給料を貰っているのだ、それなりの働きをするのは当然だろう。
 …かといって、安賃金でもそれはそれで困るんだけどね。
 衣食住のうち食住は保証されているから、ただ生活するだけならそれだけでもかなり楽ではある。
 しかし、こうして類と傍目に同棲よろしく非常識な二人っきりの同居生活を、そういつまでも長く続けていられるものではない。
 で、あれば、類の当初の申し出ではないが、自分も今後の身の振り方としてそれなりの蓄えと準備が必要だった。
 東京に戻ってきた時には進のところにしばらく厄介になるつもりだったが、だからといって所帯を持って妻子を養っている弟のところへ、そうそう迷惑をかけるわけにもいかないだろう。
 …進やひなちゃんは、いいって言ってくれててもね。
 それはそれ、だ。
 いくら仲の良い姉弟とはいえ、つくしにもそれなりの遠慮はある。
 「それ、今日の戦利品?」
 「へ?」
 顎をしゃくられ、類の視線を辿る。
 どうやら彼が言っているのは、老夫婦に今日のお礼だと貰った和菓子セットのことらしく、ついテーブルの上に置きっぱなしにしていた。
 「スタバの前で居合わせた老夫婦と一緒に行った店かなんかで買ったんでしょ?」
 ズバリと言い当てられたことに驚いて、つくしが類を見返せば、不思議なほどに優しい眼差しに出くわし、思わず彼から視線を反らした。
 彼の容姿がいいことなんて今更なことなのに、そんな目で見られてしまうと、なぜか落ち着かずにドキマギしてしまう。
 …いひぃ~。
 我ながら意味不明な奇声を内心で上げる。
 「お節介だよね、あんたって。わざわざ身も知らない人間に声かけてまで、労を買って出ることもないのに」
 いかにも冷血漢そのものの物言いに、ガクリ。
 「……あんたねぇ」
 つくしがムッと唇を尖らせるのさえ、なぜか類は楽しそうだ。
 高校時代の類が、けっしてつくしには見せることがなかった様々な表情。
 まるで彼女に心を開いているかのような、彼の言動に戸惑ってしまう。
 そんなはずはないのに。
 どんなにかそれを望んだかしれない高校時代ですら、彼にとってのつくしは通りすがりの知人に過ぎなかった。
 つくし自身、自分が類にとって意味のある人間になれるとも思ったことがなかったくらい。
 類はつくしにとっても、どこまでも遠い存在で、ただその姿を見られれば良かった。
 少しでも彼に言葉をかけてもらえれば、…同じ空間にいることを許してくれるだけで、天にも登る気持ちなれたのだ。
 憧れだった。
 自分が彼に叶わぬ恋の幻想を抱いていた自覚もあった。
 ―――恋に恋をしていた。
 それでもあの頃の彼女にとって、彼に恋していることが唯一の支えであり、唯一のキラメキだったのだ。
 「お節介って…、困ってる人に自分の出来る範囲で、手助けを申し出ることは当然でしょ?」
 自分だって右も左もわからない海外で道に迷えば困るし、誰かに聞きたくもなる。
 その際に、言葉がわからなければ不安にもなるだろう。
 …せっかく夫婦で旅行に来て、楽しい思い出に嫌な思いが残ったらお気の毒じゃない。 日本のイメージが悪くなるとまでグローバルなことは言わないが、いくら英語に自信がないにしても、道を尋ねようと声をかけてくる人に気付かないフリ、見ないフリで無視はいただけない。
 「そ?」 
 「そうよ」
 「そっか」
 素直にあっさりと納得して頷く類は、まるで小さな子供みたいだ。
 どこまで本気なのか、あるいはフリなのかわからない胡散臭さはあるが、少なくても今の彼女をありのまま、そのままで受け入れていることだけはたしかなようだった。
 「今まで俺の周りにはそういう奇特な人間っていなかったからさ。なんかある意味あんたって、俺にとって驚異の塊っていうか、珍獣みたいに感じるかな」




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