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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き①

夢で逢えたら152

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 『副社長は現在、日本で難しい立場に置かれています。詳しいことは申せませんが、普通だったら問題なくスムーズに
契約更新できた案件を、副社長の人格問題で相手方に渋られていまして、道明寺財閥との提携はともかく、副社長では相手にできない。父君である総帥に出向くよう申し渡されていまして。もし、今回、副社長が折れて、総帥自らが乗り出すことになりますと、この十数年かけて総帥から基盤を受け継いできた副社長の実力を疑問視する人間もでてこないとは限りません。ほぼ、副社長は財閥の実権を掌握したとはいえ、まだ年齢的にもお若く、古い世代の中には反発する勢力も残り、盤石とはいえないのです。普通の女性問題であれば、これまでの通り副社長の道明寺財閥に対する貢献や、経済界で示してきた確固たる実力とで強引にねじ伏せてしまうことも可能ですが、今回は未成年とのセックススキャンダルに始まり、要様の殺人未遂事件、数々の女性遍歴や悪い噂が蒸し返されて、面白おかしく三流誌に掲載されていただけのことが、大きくビジネスの場でも取り上げられる自体となっています。ここで伸るか反るか、それで今後の状況が大きく変わる可能性もでてきました』
 そんなわけで、当初の予定を大きく延長しての日本出張になっているのだと、西田からは説明があった。
 つくしにしても、司の動向が気にならなかったわけではない。
 だが、もう司とは関係ない人生を送ると決め、宣言した立場上、それをわざわざ西田に確認をとるのも躊躇われたし、
逆にこうして西田からさも当たり前のように報告を受けるのも複雑だった。
 西田は自分と司の関係をどう捉えているのだろうか。
 もちろん、西田も司とつくしの男女関係をある程度は把握はしているのだろうが、それが通り一面のことなのか、それともさきほどのあの意味深な発言のように、深いものだと考察しているのか。
 単なる痴情の縺れが、これまでの司の努力や財閥に働く人々の明日に影響を与える。
 つくしは回線の切れた携帯電話を眺めながら、身震いした。
 「…キャシー?」
 「あ」
 かけられた声に振り向くと、アイスティのグラスを持ったレンが優しい笑みを浮かべて、つくしに差し出した。
 「飲みなよ?喉渇いただろ…」
 「うん」
 受け取り、素直に飲み干しながら、つくしは先ほどから、どう切り出そうか迷っていたことを言いあぐねる。
 「あのね」
 「あのさ」
 言葉が被さり、見つめ合って、互いに噴出した。
 「はは、俺たちって似た者親子だよね。隠し事できないじゃん」
 「何よ?隠し事してたの?」 
 「そう、キャシーもでしょ?」
 隠し事…結果的にそうなるのだろうか。
 レンと親子として暮らすようになって、2人だけの世界に埋没するようになって、互いに隠し事などできないほどに
密着してきた。
 つくしはレンが付き合った代々の彼女のことさえも知っているし、レンもご同様。
 類が自分の一部であったのなら、レンのことはまるでわかたれた分身のように感じていた。
 もちろん、それが錯覚であることはわかっている。
 さまざまな秘密の為に、周囲から壁を置かざる得なくて、レンを庇護するという名のもとに彼に依存し、彼に執着した。
 レンもまた、そのつくしの歪な愛情を受け入れてくれたから、余計に二人の世界が出来上がっていたのだと思う。
 いつの日か、レンが独り立ちしつくしから離れる日がくることはわかっていたが、それでも、二人だけの優しい世界を
壊したくなかった。
 司は破壊者だ。
 いつの時も、つくしの小さな幸せを壊し、嵐に巻き込む。
 「キャシーさ、道明寺さんのこと、好きなの?」
 好き…その一言では言い表せない複雑な思いがつくしにはある。
 もちろん、レンもそれをわかっていたが、すべての心情など言葉で表しきることなどできるはずもなく、そしてその必要がないくらいに『好き』という言葉にはシンプルで大きな力があった。
 「好き…なのかな」
 「違うの?」
 「どうだろ、ただ懐かしいだけの気もするけど」
 ふ~ん、と気のなさそうな返事をして、レンはつくしが首から下げた土星のネックレスを見つめる。
 「…じゃあ、類さんは?」
 「好き」
 今度は、間を置かず返された返事に、レンは首を傾げ、苦笑を浮かべた。
 「本当はさ、わかってんでしょ?まさか、本当に自分でわかっていない、なんてことないよね?それとも、俺に内緒にしたいの?」
 「…だって、もう十何年も昔のことなんだよ?」
 司を懐かしく思うのも、ついこの彼からもらったネックレスに触れてしまうことも。
 すでに習慣の一つとなっていて、どうして自分は、いつまでたってもあの男を忘れることができないのだろうか。
 ホンの一時…それこそ、それも時間にすればたった1年にも満たない間だけ、交差した人生の中にいた男。
 愛し愛され、そうと自覚して付き合ったのはそれこそ1か月にも満たなかったのではないだろうか。
 それなのに、どうして、こんなに長い間、自分も司も囚われ続けて。
 「俺にはさ、十何年間も声さえも聞くことができなかったのに、続く想いがあるかなんてわからないけど、
少なくてもキャシー変わったよね?」
 「変わった?」
 「うん、生き生きしている。元からエネルギッシュだったけど、なんだか、キラキラしてて、恋する乙女入ってるよ」
 最後はお道化たレンの背中をバシッと叩き、「痛いって!」とレンに悲鳴を上げさせる。
 「まったく凶暴なんだから」
 「大人をからかうからでしょ?」
 赤い顔で睨みつけるつくしの顔に小さく微笑みかけて、一度視線を外し、レンはもう一度視線を戻した時には真面目な顔を作っていた。
 「…俺、アヤラの人間に会った」 
 破顔していたつくしの顔が見る見る青く強張る。
 「半年くらい前かな、初めて、アヤラの使いだと名乗る人間が現れたのは…。と、言っても、何をされたわけでもない。あの人とママとの約束があるからね」
 「なんて?」
 「あの人、数年前からガンを患ってるんだって」
 意外な答えに、つくしが目を瞬かせる。
 「まあ、一度会わないかとか、傍にいて力になってあげないかとか遠回しに言ってたけど、どうも内部で後継者争いが
起きてるみたいだ」
 「…っ、あんたには関係ないでしょっ!?」
 絞り出された声は悲鳴のようだった。
 だが、つくしの動揺する様とは裏腹に、レンの態度はあくまでも冷静だ。
 チラッとつくしに視線をくれ、小さく頷く。
 「まったくだね。でも、周辺はいろいろ思惑があるんだろうと思う。キッパリ、関係を持つのは断ったんだけど、どうもしつこくてね。辟易して、日本旅行に行くついでに、少し行方を晦ませたんだ」
 「あんた、それでいつまでたっても帰ってこなかったわけ?しかも、アメリカに帰ってきてても、しばらく連絡なかったし…。一応、手紙はくれてたから黙ってたけど、少し心配してたのよ?」
 「うん、ごめん。なんだか、電話入れるのはヤバイ気がしたし。逃げてもしょうがないから、帰ってきたんだけどね」
 自分一人だったら、このまま逃げてしまっても良かったのかもしれない。
 出自はともかく、つくしに育てられ、それなりに逞しく生きるすべを教え込まれたレンは、お坊ちゃま育ちではなかった。
 だが、自分からは一生逃げ切ることなどできない。
 それは、つくしにさんざん言われた。
 どんなに誤魔化しても、偽っても、自分の根幹に関わることならば、いつかは立ち向かわねばならない日が絶対にくる。
 「…どこに行ってたの?」
 「いつもどおり、日本のつくしの…ママのお墓によって、少しだけあちらこちらを回った。あ、そうだ。お墓で、進を見かけたよ」
 「え?」
 つくしが大きく目を見開く。
 「あれ、たぶん奥さんだと思うんだけど、笑顔の優しそうな女の人と、可愛い女の子連れてたな。ちょっと、昔のつくしに似てた」
 「…そう。元気そうだった?」
 「うん、仲良さそうで、幸せそうだった」
 「そ…か」
 最後に別れた大学生の時の進を思い出す。
 まだまだ、童顔で高校生にも見えた弟は、気が弱くて頼りなかった。
 それが今ではもう、父親なのだ。
 自分が母親であるように、あの小さかった弟も立派に成長したのだと、ほんのちょっとの寂しさと感慨を覚える。
 「その後、ブラジルに行った」
 「え?」
 つくしが顔を上げ、レンを見返す。
 「…まさか、あんた?」
 「昔、ママとあの人が会ったブラジルのレストラン、まだあってね。あそこって、あの人の幼友達が経営しているお店
なんだよ。それで、もしかしたら…て」
 「…っ!?」
 息を呑むつくしに、レンは曖昧な顔で首を傾げる。
 「会ったの?」
 「ん~、会ったって言うか、見かけただけ?」
 「レン…」
 「そうそう話しかけたりできないよ。すっごい人数の手下っていうのかな?SPみたいなガラの悪そうな厳ついおじさん達に囲まれてたしさ」
 それはそうだろう。
 いくら国外とはいえ、いつ何時対抗勢力に襲われないともかぎらない。
 現に、そうして、ルイス・アヤラの家族たちは凶弾に倒れたのだから。
 つくしは安堵の息を吐く。
 レンが話したことの全てが、そのまますべてだと信じて。
 「で、あの人の顔を見て、ワシントンに行った」
 「ワシントン?」
 ずいぶんな遠征だ。
 そもそも日本から南米、南米から帰国するなりNYではなく、ワシントンとはなぜ?
 知り合いもいないはずだ。
 「ちょっと、会いたい人がいてね」
 「会いたい人?」
 「まあ、知人の知人…って感じなんだけど、ちょっと相談事があって」
 つくしの眉が怪訝に顰められる。
 「たぶん、その人との交渉が上手くいけば、いろいろスッキリ解決するといいなあ、なんて思ってるんだけど」
 レンの思わぬ言葉に驚き、つくしが激昂する。
 「ちょっと!?どういうことなの?なにそれ?また、勝手にあんた!進路を変更したことといい。何か変なことに顔を突っ込んでるんじゃないでしょうね?詳しく話しなさいよっ」
 「変なこと…ではないんだけど、まだ、俺もハッキリしたことわかんないから、決まってから話すよ。ていうかさ、言いたいことはそこじゃなくて、実は、また、アヤラから接触があるってこと」
 「えっ?!なに?」
 驚くつくしに、レンが先日から何度か、アヤラの一家の者から個人的に会いたいという手紙や、どこから番号知ったのか何度か電話を受けていることを話す。
 そして、道明寺か花沢…おそらく道明寺のSPがつくしやレンにもついていることも。
 たぶん、そのせいで、アヤラの者たちはレンに直接、接触することができないのだ。
 道明寺は確かにダークサイドとはまったく関係のない企業だ。
 だが、あれだけの規模の財閥。
 当然、アメリカにいくつも存在するその道の者たちともそれなりの繋がりがある。
 それはいつの時代も、権力者たちや有力者たちが物事を円滑に進めるための手法で、誰も表立っては言わないが暗黙の了解でもあった。
 いざとなれば…裏社会の者たちは道明寺さえも敵に回すことも厭わないだろう。
 だが、それはいざとなれば…だ。
 下手につついて、。道明寺を怒らせれば、裏社会のものたちといえど、揺るがないとはいえない。
 怒らせたくない相手なのは間違いなかった。
 そして、花沢でもそれは同様。
 「…そのことなんだけど、いま、SPつけるのやめてって断ってて」
 「……」
 レンがつくしを真っ直ぐに見つめて、先を促がす。
 「その、道明寺とは私、付き合ったり、ましてやそんな守ってもらうような関係になるつもりなくて。そうなると、筋が違うっていうか」
 シドロモドロに言うつくしの言葉をレンは、黙って聞いている。
 「でも、あの人たちが私たちに関わろうとしてるなら…」
 つくしはその先が言えずに俯く。
 司や類の助けがなくて、どうやってレンを守ればいいのか。
 さりとて、司や類に迷惑をかけたくない。
 そのジレンマにそれ以上何も言えないつくしを見て、次いでレンはキャビネットで微笑む母セリと父、そして赤ん坊の自分が写る写真に視線を移した。
 「俺は、キャシーが道明寺さんたちを頼るかどうかについて、何も言えない。確かに、俺の問題で、道明寺さんたちに
頼るのは筋が違う。キャシーは私たち、って言ったけど、実際は俺だけの問題なんだ」
 「違う!私の問題でもあるよっ」
 つくしの悲痛な表情に、自分が失言をしたことを悟る。
 「…ごめん、そうだね。たださ、俺思うんだけど、キャシーが道明寺さんたちを巻き込みたくないって気持ちと同じように、あの人たちもただ、あなたを守りたいだけだと思うんだ」
 そんなのわかってる。
 わかってるからこそ…。
 「だからさ、たぶん利用するみたいで嫌なんだと思うけど、守られることは自分の為…とは一概に言えないんじゃない?大切な誰かの気持ちを守るために、あえて自分が折れるって案外難しいことだと思う」
 「…でも」
 「わかるよ、道明寺さんたちみたいな立場の人にとって、これがどれほど怖いスキャンダルか。あくまでもプライベートな問題のはずの女性関係をあげ連ねたゴシップでさえ、ビジネスで支障もでてるんだろ?けど、俺も道明寺さんたちと同じく、他の何より、誰よりキャシーが大切なんだ」
 唇を噛みしめて俯くつくしへと乗り出し、レンがその頭をポンポンと叩く、かつて幼い頃、彼女がレンにそうしてくれたように。
 「俺が守ってあげられなくてごめんね…」
 いつも守られてばかりで。
 レンの切ない顔が、つくしの熱い涙に歪んで哀しく揺れた。




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