「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0427

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 「え…」
 静と類の話から一転、まさかの回ってきたお鉢に虚を突かれて言葉に詰まってしまう。
 「普通、離婚が決まったら、そういうのはサクサク処理してしまいたいものなんじゃない?」
 「……ああ」
 優紀や進にも言われてることだ。
 つくし自身、牧野姓のままだから特に違和感を感じていなかったが、他人から見れば奇異なことだろうし、隼斗にしてみてもいつまでも‘既婚’のままでは決まりが悪いだろう。
 しかし、
 「もしかして、まだ未練がある?元旦那に」
 それこそ思わぬ言葉に、つくしは驚いて、ポカンと類の顔を見上げた。
 「あれ?図星?」
 ブンブンブンッ。
 思いっきり首を横に振って、慌てて口でも否定をする。
 「違う、違う」
 「じゃ、なに?離婚訴訟で揉めてる?違うよね、旦那のハンコも押してあったし」
 そういえば、類には隼斗から受け取った離婚届を見られてしまっていたのだったか。
 プライバシーの侵害だとあくまでも突っぱねるべきか、あるいはいつものように曖昧に誤魔化してしまうかと一瞬悩んで、だが、結局そのどちらでもなく、話してしまうことにする。
 「息子が…えっと主人の息子が、重篤な病気で、その手術をアメリカで受けることになっててね」
 「旦那の連れ子?」
 「…そう。本当はその子が完治するまで見届けてあげたかったんだけど、さすがにそれはできないことだから、せめて、日本を発つ時までは母親のままでいてあげたいの」
 隼斗には了承をとってあることだが、進と優紀は当然のことながら難色を示して、そのことに関してはあまり良い顔をしていない。
 もしかしたら…もしかしたら、この飄々とした男ならば、彼らとはまったく別のことを言うのではないか。
 そんな不可思議な期待に動かされ、つい口にしたプライベートな事柄だったが、類は特別な感慨を覚えたふうでもなく、「ふぅん」と、一つ相槌を打っただけで特にそれ以上深く聞き出そうともしないが、反論もしてこない。
 なんとはなしに物足りなさを感じる自分の不合理さに顔をしかめて、つくしはカップに残った飲み物をがぶ飲みした。
 「ジュッ、ジュッツ!!」
 「……もう一杯買う?」
 啜り上げても出ないカップを意地のように吸い上げているつくしに、類は呆れ顔だ。
 「いい。もうそろそろ帰るし…あんたも仕事でしょ?」
 「別にもう一杯くらい飲む余裕あるよ。あんたの吸い上げ具合なら一気飲みできそうだし」
 「冗談」
 さすがに大カップ二杯は無理に決まってるだろうと、軽く類を睨めつけ立ち上がる。 
 「さ、あんたも会社に戻って、さっさと仕事してきちゃいなさいよ?元々仕事人間っていうわけでもないんだから、やることやって、それから息抜きでも気分転換でも好きにしたらいいんじゃないの?」
 「…ハァ」
 あまり芳しくもないようだが、それでもつくしの言う言葉に利を認めたようで、渋々にでも素直に立ち上がる類の顔は本当にうんざりしていて、まるで子供のようだとつくしの方こそ呆れ半分、笑ってしまう。
 「なに?」
 「うん」
 二人連れ立って店を出る。
 いくらなんでも、ズバズバ言い過ぎかと思いつつ、しかし、言ってしまうのは、この妙に気安い空気からかもしれない。
 再会してからこっち、雇用関係の上下を無視してかなり言いたい放題言っている自覚はつくしにもあったが、不思議に類はそれを厭うことなく、むしろ面白いと感じているようで、彼女のタメ口を逆に推奨していた。
 …変な人。
 類の顔を見上げ、ついマジマジと見入ってしまう。
 黄色い声が混じったざわめきに、幾人もの通行人の女性たちが、彼を見てきゃあきゃあ噂し合っていた。
 「だから、なに?」
 「いや、宝の持ち腐れっていうか、自分を有効活用していないなって」
 「なにそれ?」
 面食らった顔まで綺麗だとかどんだけよ、とか内心で思いながら、何食わぬ顔で肩を竦める。
 反らした視線の先、いかにも外国人らしい人相風体の老夫婦が、二人でスマートフォン片手に前後左右見回しているのがふと目について、つくしは首を傾げた。
 「仕方ない。…戻るか」
 腕時計を眺めた類が、ため息を零す。
 さすがにタイムリミットというところだろう。
 もっとも野心に溢れて、あるいは職業人としてもっとも第一線でバリバリと仕事をこなすような年代の男の、あまりにやる気のないセリフに苦笑させられることも度々。
 それでいて、見聞きする会社での様子や世間の噂から、彼がけっして仕事ができない昼行灯などではなく、俊英の経営者であるらしいのだから、つくしにしてみればそれが不思議だった。
 …道明寺とは全然違う。
 自然に思いついた名前に、ドキリと心臓がそばだてる。
 「明日も弁当持ってきてくれるんでしょ?」
 「…仰せとあればお持ちしますけど、何も素人のあたしが作ったものなんかじゃなくって、おエライ会社の副社長様なんだから、名の知れた料亭の仕出し弁当とか、そうじゃなくっても、お屋敷の料理人さんが作ったものを届けてもらった方がずっといいんじゃないの?」
 「俺、グルメじゃないし」
 何を期待していたわけではないが、それでも微妙なそのお答えに、つくしはピクピクと引き攣る。
 しかし、そこはやはり彼女も、その手のプロと張り合うほど身の程知らずではない。
 しょうがないと、類のなにげに失礼な物言いを聞き逃して応諾する。
 「雇い主様の仰せとあれば、承知いたしました」
 「うん。ついでに、こうして息抜きしたいしね」
 「息抜きって…あたし相手にお茶なんかしてないで、たまには女友達でもデートに誘って気晴らししなよ」
 よもや総二郎のようだということはあるまいが、類の言動からして、少年時代とは異なりそれなりに女性とも交際しているようだし、現在決まった恋人がいないにしても女嫌いというわけでもなさそうだ。
 「明後日、週末でしょ?それとも今週もまた休日出勤?」
 「ん~、たぶん今週は休めそう?」
 疑問形なのは、たぶん自分でもまだわからないからなのだろう。
 先ほども目についた外国人老夫婦が、通りの向こうに消えたと思ったら、ため息をつきながら戻ってくるのがどうしてもつくしの目についてしまう。
 …英語通じるかな。
 昔取った杵柄。
 最近ではめっきり使用することもないが、どうにも見過ごせず、躊躇を振り切って類に別れを告げる。
 「じゃ、あたしこれで帰るから」
 「車で送らせるよ」
 「ううん、いいよ。行きと違って大荷物ないし、もう帰り道もわかるから。じゃ、お仕事頑張って」
 まだ、何か言いたそうな類をさっさと置き去りにして、やはり道に迷って困っているらしい老夫婦に近づいて声をかける。
 ‘Can I help you with something?(※何かお手伝いしましょうか?)’




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