「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0425

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 「は?」
 180度明後日の方向の思わぬ言葉に、びっくりしてつくしは背の高い類の顔を見上げた。
 いたずらっぽい顔は、からかってるわけでもなさそうだったが、さりとて真剣とも言えず戸惑ってしまう。
 「外れか。…まあ、そうか。あんたまだ離婚届け出してないんだっけね」
 「………まあ」
 「そんな状態で、男漁りするキャラでもないか」
 かなり歯に衣着せぬズケズケした物言いだが、間違ってはいない。
 どうやら妙な誤解されてはいないようだ。
 だから、というわけではないが、それでなんとなく正直に話してしまっていた。
 「両親に、ここ数年、音信不通にしていた親に電話しようと思って」
 「へぇ、そうなんだ」
 あっさりと流され、どうやらそれ以上質問する気はないらしい類の様子に、かえって身構えていたつくしの方が拍子抜けしてしまう。
 …別に何を聞いて欲しいわけでもないけどさ。
 何となく釈然としない気がする。
 チンという音と共にエレベーターが階下に到着した。
 「…どうぞ」
 「ん」
 類を先に下ろして、自分もその後に続く。
 途端、
 「え――ッ!」
 黄色い声が聞こえてつくしが振り返ると、目が合ってしまった声の主はギョッとすぐに口を噤んだ。
 だが、エレベーターホール付近にいた社員たちは、その声のせいで一斉に二人を振り返り、類に気がついてしまったらしい。
 つくしたち、というよりも類をだろうが、当然のように彼と並んで歩く彼女もまた注目の的になっていた。
 …だから、イヤだって言うのに。
 内心青色吐息。
 「行くよ?」
 「…はい」
 けれど、すぐに入れ替わりにエレベーターに乗り込もうとしている車椅子の人間に気がついて、つくしは今出たばかりのエレベータードアへと引き返し、閉まらないように扉を押さえる。
 「すみません」
 「いえ」
 礼に会釈を返し手を離す。
 間を置くことなく、エレベーターの扉が閉まった。
 ジッと見ていたつもりはなかった。
 しかし、やはりついマジマジと見入ってしまっていたのだろう。
 類がそんな彼女に気がついて首を傾げた。
 「なに?」
 「え?」
 「知り合いだった?」
 「…いや、違うけど」
 言葉の続きを促すような類の眼差しに、仕方なく答える。
 「あ…その、会社に車椅子の人とか、なんか意外だったからさ」
 「そ?たぶん一般職の特別枠の人だと思うけど、うちもそれなりに大きい企業だからさ、そんなに珍しいわけじゃないよ」
 「いや、珍しいとかじゃないんだけど」
 話してしまうか迷って、別にかまわないかと思い直す。
 「最近、うちの父も膝を粉砕骨折してね」
 「ああ。障害が残った?」
 「…ん、リハビリしてるところらしいから、どこまで残ってしまうのかはまだわからないんだけど、元の通りに…とはいかないみたいなの」
 「車椅子?」
 「あ~、どうだろ」
 自分のことではないとは言え、親のことだというのに、らしい、みたい、挙句の果てにどの程度の障害を負ったのかさえまるでわかっていない、他人事な自分の言葉を類はどう思っているだろうか。
 「えっとさ、どこに行くの?」
 「どこがいい?」
 話題を変えようと行き先を尋ねたのに、逆に聞き返されてしまった。
 「…ん~、あたしだったら、ちょっと休憩する程度だったらスタバとかで十分なんだけど」
 一人や女同士ならともかく、さすがにスーツの男性と二人でファーストフードというのも難だろう。
 「じゃ、ちょうど目の前にあるから、そうしよう」
 あっさりと頷かれる。
 「いいの?」
 「ん?ダメなの?」
 「いや、あたしが提案したんだし」
 「じゃあ、いいじゃん」
 「………まあ、あんたがそれでかまわないなら」
 釈然としないものの、本人がいいと言うものを、提案したつくしが渋る謂れもないと、結局そのとおり決まった。
 …お坊ちゃまのくせに。
 何度か一緒した外食もそうだが、元々なのか、それとも長年の発展途上国暮らしの賜物なのか、類はセレブな出身や生まれ育ちにも関わらず、わりに庶民的な食事や生活習慣を忌避しない。
 そうした店にも抵抗ないようで、普通に利用している。
 さすがに美味しいとまで感じてはいないらしかったが、普段はサプリメントや健康補助食品でさえ十分満足?しているくらいだから、特にグルメではないのだろう。
 …ううん、たぶん、違うな。 
 こだわりがない、おそらくその言葉が一番しっくりくる気がした。
 「何にしようかなぁ」
 「俺、抹茶ラテ」
 「じゃあ、あたしはキャラメルマキアート」
 お互いに好みの飲み物を購入して、空いてる席に腰を下ろす。
 お茶の時間というにはかなり遅めで、まだアフターファイブというには早すぎる中途半端な時間帯のせいか、店内にはほとんど人がいない。
 そのせいだろう、オープンな店のわりに衆人の目が少なく、ほとんど彼ら二人―――というより類に注目している人間はいなかった。
 「ケーキでも注文すれば良かったのに」
 「ん~、一人で食べてもねぇ。類も食べる?」
 「俺はあんたが作って持ってきてくれた弁当があるからいらない」
 「弁当って、夕食でしょ?まだまだ時間あるじゃない」
 「腹減ってない」
 「まあ、いいけど」
 それでも以前は夕食もスキップして、朝まで抜くことがあったというのだから、どんだけ燃費がいいんだとつくしは呆れて肩を竦めた。
 「この辺りだと、文京区にある順天堂医科大学付属や、東京女子医科大学病院が有名どころだよね」
 「え?」
 「北海道に凄腕の医師チームを抱えた病院があって、そっちの評判もなかなかだそうだし、当然そういう病院はリバビリにも力を入れてる。そういうのはあんたが専門なんだし、相談に乗ってやればいいんじゃないの?」
 他人のことになど興味がなさそうで、実際に3か月も同居していて、半ば友人のような口を利くつくしのことにすらほとんど何も言わない男が、珍しく口にした言葉に戸惑う。
 まるで、つくしの屈託―――両親との確執を見透かしたような言葉。
 「気になってるなら、連絡とればいいよ。連絡とって、やっぱりイヤだと思えば、また距離置いてもいいんだし、そうやってウダウダ悩んでる時間の方がよほど無駄だし、苦痛なんじゃない?」
 「そう、か…な」
 類の忠告に反発を感じているわけじゃない。
 しかし、どう答えて良いのかわからず、つい口籠ってしまう。
 「うちもたいがい親との関係は疎遠だから人のこと言えないし、よけいなお節介だと思うけどさ」
 「…ううん。ありがと」
 互いに互いの家の事情を詳しく知っているわけではないけれど、それでも年齢なりに経験や思うところもある。
 類に勧められたからといって、すぐに両親に連絡を入れられるかはともかくとして、たしかに居場所を知られてしまったにしても、彼女はもう子供ではないのだ。
 誰に何を拘束されるはずもない。
 それよりも…、
 「あのさ」
 「…うん?」
 チープな紙のカップの飲み物を啜る姿さえ優美だと、つくしは妙な感嘆を憶えながら、ふいに思いついた事柄を口にしてみる。
 類もまた、単なる雇用関係の枠を超えた口出しをしたのだから、かまわないだろう。
 「あたし、去年、静さんに会ったよ?」
 
 


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