「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0424

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 進から父・晴男の事故、そして入院を聞いてすでに一ヶ月が過ぎ、無事に手術を終えて退院していることも聞いていた。
 ただ粉砕骨折した箇所が、一番複雑だと言われる膝蓋骨だったこと、年齢的なこともあり、多少障害が残ったらしい。
 しかし、結局つくしは父の見舞いに行くこともなく、いまだに連絡をすることもできないでいる。
 進は彼女の意を汲んで、あえて両親に現在の彼女の携帯番号も連絡先も伝えないでいてくれていた。
 これまで何度も番号を眺めては、スマートフォンの画面にタップできず、類のマンションの自室でゆっくりと連絡を取るよりも、こうした忙しないところで電話する方がまだマシな気がして、電話をするなら外出先でしよう、そんな風に決めていたのだ。
 とはいえ、いざ実際にかけようとすると、それはそれで自室と同じような抵抗感が湧き上がって、やはり同じ経緯を辿ってしまっている。
 …気詰まりになってきたら、待ち人が来たって言って切ればいいんだから。
 だが、そう自分に言い聞かせても、なかなか思い切れない。
 「…よし!」
 気合一つ、わずかに震える指先を叱咤して、スマートフォンの画面に触れる。
 「なに、力んで携帯握ってるの?」
 「ひっ!」
 思わずビクッと体を揺らして、バッと背後を振り返れば、予想にたがわずというべきか、予想するまでもなく見慣れた美貌が、呆れた様につくしを見てクスクスと笑っていた。
 …こ、この人って、どうしてこんなデカい図体して、猫みたいに気配を感じさせないわけ?!
 「そりゃあ、一人で百面相するのに忙しくて、周囲に気を配ってなかったからでしょ?よほどドタドタ音を立ててるんでもなければ、けっこう気がつかないものなんじゃないの?」
 「は?」
 まるで彼女の心を読んだかのような、ドンピシャな返答に、つくしはポカンと類の顔に見入ってしまう。
 「ど、どうして?」
 「…言いたいことがわかったのか?」
 うんうんと頷く彼女を見て微笑む類は、本当に機嫌が良さそうだ。
 「口に出てたよ」
 「ええ?」
 「自分であんまり気にしてなさそうだとは思ってたけど、牧野、あんたってもしかして全然自覚してないわけ?けっこう思ってること、ボロボロ独り言で言ってるよ?」
 「あ~」
 類に指摘されて、つくしも思い当たる。
 他人に聞かれてマズイことを言ったことはないようだが、何度か心で思ったつもりのことを、いつの間にやら口に出してしまっていて、恥ずかしい思いをしたことはあったのだ。
 …あちゃあ、出てないつもりだったんだけどな。
 どちらにせよ、そう頻繁なことではないはずだったのに。
 「とりあえず、こんなところにいつまでも長居もなんだし、ちょっと出ない?」
 「え?出るって、下の社食に行くんじゃないの?」
 「ん~、それも悪くないけど、落ち着かなくない?」
 「うーん」
 本当のところ、類とのお出かけというのはかなり躊躇する。
 たしかに社食はなおさらのこと、目立つに加えて類の素性を知っている社員たちの余計な噂になりかねず、実際に一度社食を利用したところ、ほとんど衆人環視の中、人々の注視とヒソヒソ話に晒されることになった。
 「ちょっと休憩するのなら、ここで…ほら、そこの缶コーヒーでも飲んで一休みすればいいんじゃないの?」
 ここなら役員フロアだけあって、一般フロアよりはよほど一通りは少なく、当然衆目も避けられる。
 つくしにしても、そこらへんを考慮してあらかじめ死角を選んでいた。
 「やだ」
 「…………やだって、あんたは子供か」
 「それくらいなら、副社長室に戻って、あんたにコーヒー入れてもらった方がまだマシじゃん」
 「あ、そうする?」
 それの方が遥かにいいと、つくしが瞬時に飛びつく。
 「だからヤダって。気分転換したいのに、会社になんか残ってたら、なんやかんやと仕事させられるに決まってるでしょ?」
 「ええ~まあ…それも、そっかぁ……ハァ」
 たしかに類の言い分も一利ある。
 一応は休憩時間だとは言っても、目の前に目的の人物がいれば質問もするだろうし、相談したくなるのが人情というものだろう。
 仕方なくつくしは類に促されるまま立ち上がった。
 「で、王子様はどちらにお出かけをご要望ですか?」
 「王子様って…、30過ぎの男捕まえて、さすがにそれは辛いんじゃない?」
 最初の頃はわりに遠慮していたつくしも、伊達に3ヶ月近くも同居していない。
 半ば友達のように一緒に暮らしているのだから、今ではそれなりにズケズケ言えるようにもなっていた。
 …これも歳食ったってことなのかな?
 単に初恋の王子様の幻想が崩れてしまっただけかもしれなかったけれど。
 「あんたは外見もまだまだ王子様でいけそうだけどさ。そうじゃなくって、中身の話。ワガママ一杯、ヤダって言えばなんでも叶うと思ってるあたり、マンマって感じかと思って」
 そんなつくしの物言いが、類は面白かったらしい。
 「ぷっ、ワガママ一杯、ヤダ、か。まあ、そうかも。でも、なんでも言えば叶うなんて、俺だって全然思ってないけど?」
 「そう?」
 「思わない?」
 苦笑してチラリと流された視線が、一瞬だけ真剣だった気がしたから、つくしもしかたなく同意する。
 「…まあ、そうだね」
 類と二人、ちょうど到着したエレベーターに二人並んで乗り込む。
 スーッという感覚と同時に、エレベーターが昇降してゆく間なんとなく間が持たない気がして、つくしはエレベーターの回数表示をなんとなく見守った。
 気詰まりなわけではなかったが、それでも話題を探してしまっている。
 「さっき…」
 「え?」
 隣に立つ類の顔を見上げて首を傾げる。
 「どこかに電話しようとしてなかった?ラウンジでだよ」
 「……ああ」
 知られて困ることではなかった。
 しかし、そうは言っても余計な詮索もされたくなかった。
 …類だって、興味ないだろうし。
 両親とここ数年ほとんど連絡を取りあっておらず、電話をかけにくいことなど、どう言えばいいというのか。
 「別に…」
 「…彼氏のところ?」




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