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「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0419

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 ガタン、ゴトン、ガタガタッ。
 浅い眠りの夢現―――耳についた大きな物音に、つくしは目を覚まされた。
 眠い目を擦って枕元の携帯電話で時刻を確認すれば、まだ真夜中の3時すぎ。
 しばらく耳だけを澄ませて気配を探る。
 だが、それっきり物音がすることもなかった。
 …花沢類が帰ってきたの?
 そうなのだとすれば、つくしのベッドに潜り込んでくる可能性大だ。
 今日は鍵は…と無意味に記憶を探って、それが無意味なことだと思い直す。
 誰に…というわけでもないが、あえて言い訳するのなら、今日は類が帰らないと言ったのだ。
 けれど、たとえそうでなかったとしても、おそらく自分は鍵をかけることはしなかっただろう。
 それでもしばらくは耐えて待った。
 何かしらの出来事が起こることを。
 しかし、やがては諦めて、ゴソゴソとベッドから抜け出す。
 他の部屋…類の寝室から、ドアの開閉する物音もしなければ、当然、彼女の部屋にも、類は訪れようとはしなかったから。
 …あたしったら、だからってなんだって言うのよ。
 そう理性は囁いたけれど。
 類がつくしの部屋を訪れないのも、彼女のベッドに潜り込んでこないのも当たり前のことだというのに、それなのに、どうしてかそれが腑に落ちなくて…。
 今、彼が一体何をしているのかが気になって、……なぜか、彼を一人にしてはいけない気がした。
 つくしはソロリソロリと自室を出て、居間へと向かう。
 間接照明の仄かな明かりの元、電気をつけることもなく、大きな体格の男がソファに寝転がっているのが目に入る。
 マンションの部屋を出ていったスーツ姿のまま、類のいる方向からは、濃厚な酒と香水の匂いが漂ってくる。
 「……花沢類」
 つくしの密やかな声かけに、目の上に腕をかけ、眠っているようだった類の腕がピクリと動いた。
 「起きてたんだ」
 いつもは艶やかな美声が、しゃがれて掠れていた。
 その声がなぜか弱々しくて、寂し気で…堪らなくなる。
 今ではあの頃の、高校時代の類へと抱いた憧れはもう抱いていないはずなのに、それなのにどうして辛そうな彼を見ていると、こんなふうに遠い日の切ない想いが蘇ってくるのか。
 途中で途切れて、中途半端なままカタチのまま、終わってしまったつくしの淡い初恋。 …宝物みたいだった。
 類に一目会えるだけで嬉しくて…、彼と会話を交わせただけで天にも昇る気持ちだったことを思い起こす。
 ゴクリと唾を飲み込み、それでもできるだけ平坦な声を装い、つくしは声を絞り出して話かける。
 「今、起きたの」 
 「悪い、うるさかった?」
 「そうじゃないけど、…こんなところで寝ても疲れなんてとれないから、寝室のベッドで寝た方がいいよ?」
 「……………」
 「明日も、仕事だよね?」
 はぁ~と大きく溜息をつき、類がのそのそとソファから体を起き上がらせる。
 「…明日っていうか、もう今日だけど、オフ」 
 「え?そうなんだ」
 「ホントは奈良に日帰り出張の予定だったけど、相手方の都合で急遽予定変更だってさ。ポッカリ予定が空いたから、休み入れさせた」
 「ああ、ここのところ土日返上で頑張ってましたものね」
 仕事の話になったからだろうか。
 無意識に戻ってしまっていた敬語を聞き咎めて、類が顔を上げ微妙な笑みを浮かべて首を傾げる。
 「…また、敬語に戻るんだ?」
 「へ?」
 「さっきまで、普通に喋ってたじゃん」 
 「あ~」
 そう言えばそうだったかと、つくしは類に指摘されて初めて気が付いた。
 「あたしったら、すみません」
 「……昔どおりでいいよ」
 「え?」
 今度は起き上がったまま、再び膝を抱え、類は蹲って顔を伏せてしまう。
 大きな男なのに、まるで傷ついた小さな子供のようだ。
 あきらかに酔っていて、どこか様子がおかしいのは悪酔いしているのせいかもしれないと、つくしも心配になってきた。
 「あの、大丈夫?」
 躊躇しつつも類の傍らに歩み寄り、かがみ込んで、彼の様子を見ようとつくしが類の肩に手をかける。
 途端、ひんやりとした大きな手に手を掴まれてしまう。
 「ちょっ、な、なにをする…」
 「…10分」
 「え?」
 「いや…5分でいい。俺を抱きしめてくれない?」
 「花沢……類」
 目を見開いて驚いているつくしの手を額に当て、頼りなげな目をした類が寂しそうに小さく笑って項垂れる。
 「言ったろ?昼間はいいけど、夜がヤバイ、寒くてしょうがないってさ」
 それでもつくしの返答を待っているのか、掴んだ手には力が入っていなかった。
 いつでも振り払える力の強さだからか、あるいは彼があの‘花沢類’だからなのか。
 強引な行動が苦手なつくしだというのに、なぜかそうされていることに恐怖を感じなかった。
 …だって、この人は花沢類だ。
 それが何の理由づけになるのか、自分でもおかしい。
 けれど、彼にだけはそんな信頼がある。
 あの英徳で唯一彼女を助けてくれた人。
 そして―――、
 …道明寺から、あたしを連れて逃げてあげようかと言ってくれた人。
 躊躇しつつも、彼女の答えを待ってただジっとしている類の肩に両腕を回して引き寄せる。
 そして、形の良い金茶色の頭を胸元に押し付け、つくしは優しく抱きしめた。
 …花沢類があたしの腕の中にいる。
 男女の欲望を伴わない不思議な時間。
 憧れていた人。
 好きだった人。
 けれど、今彼女の腕の中にいるのは、一人の男性ではなく、まるで寄る辺ない迷子のような目の少年だった。
 ただ彼を守りたい。
 助けてあげたい。
 あの日、あの時、唯一彼女を助けると言ってくれた人だから。 
 『何もかも全部捨てて、俺と逃げる?』
 「……あの後、俺、結局フランスに行ったんだ」
 類の言葉に、ハッと追憶からつくしは醒めた。
 「俺はいつも迷ってばかりで、なんでもスタートダッシュが遅いんだ。静のことでも、あんたのことでも」
 類の腕が彼女の体を抱き返し、縋るようにギュッと力をこめる。
 「花沢類」
 「あんたには見透かされちゃったけど、あの頃、俺は静に捨てられてもどうにもできずに、ただ鬱々としてばかりの自分がいいかげんイヤになってたんだ」
 「…………」
 わかっていた。
 類が自分に逃げようなどと言い出したのが、一つの彼の逃避に過ぎなかったことも。
 それでも、
 …嬉しかったから。
 誰にも顧みられなかった彼女を、たとえ心の片隅にでも、わずかにでも彼が気にかけてくれていたことを。
 「だから、あんたに逃げようって誘ったのも、たぶん本気というよりはヤケクソだったと思う」




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