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「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0415

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 「ゴホン、いえ、すみません」
 思わず地が出てしまって、咳払い一つ。
 …じゃないでしょ、まったく。
 「あたしに聞いてどうするんですか。じゃなくって、否定してください」
 「だって?」 
 何がだって、なのか。
 どこまでもマイペースな類の惚けた物言いに、さすがのつくしのこめかみにも青筋が浮かぶ。
 …この人、こういう人だったっけ?
 今更ながらだが、あらためてそんなことを思う。
 たしかに高校時代もどこか掴みがたいところがあった。
 しかし、もっと触れれば触れる者を凍り付かせてしまう氷の刃のような、冷たさと鋭利さを含んだ少年だったのだ。
 …なんか冷気漂ってたよね?
 それが再会してからこっち、イラつかされることはあっても、当時のような拒絶的な冷淡さよりも、糠に釘のようなどこか捉えどころのないエキセントリックさが目立つ。
 とはいえ、インタビューを受けていた時や部下たちに対する態度は、彼女に見せる顔とはまた別のもので、昔を彷彿とさせてもいた。
 「まあな、それならそれでもいいけどよ。ハァ…バアサンならともかく、同年代の女を一人暮らしのマンションに引っ張り込んでるとか、俺じゃなくても色眼鏡で見るもんだとは思うけどね」
 「…やっぱりそうですよね?」
 いまさら悪名の一つや二つと言えるほど、つくしの方は振り切れてはいない。
 「そんなの言わせたいやつには言わせておけばいいだろ?」
 「……いやいやいやいや」
 「お前なぁ。それこそ誰よりそういった醜聞に敏感にならなきゃなんねぇヤツが、何言ってんだよ」
 「そうですよ!」 
 「いや、つーか、それ牧野、お前もだろうが」
 「うぐっ」
 痛いところを突かれて、つくしが言葉を詰まらせる。
 「類のことばっか言ってるけどよ、お前はいったいどういうつもりなんだよ?」
 「なの?」
 便乗して聞いてくる類の方はまったく真剣味がなく、一見生真面目な表情を取り繕っているが、あきらかに面白がってるだけで、特に彼女の返答を気にしているわけではないのはあきらかだ。
 「…どういうつもりと言われても」
 「聞けば、お前ら二人とも付き合ってるわけじゃないという。けど、世間はそうは見ない。いくら雇用関係があっても、そこはお互い因縁浅からぬ間柄で、酸いも甘いも噛み分けたジジババだっつーならともかく、そうじゃない。お前らを知ってる俺でさえ、そうだ。世間じゃ、ただの同棲としか映らねぇだろうし、いくら互いに独身とはいえ、立場ってものがあんだろうよ?」
 総二郎のいうことはもっともすぎて、つくしには反論できる言葉がない。
 しかし、まさに自分でもしかとはわからない…先ほど類が言ったように成り行きだとしか言いようがなかった。
 かといって、もし同じ提案をしたのが、総二郎、あるいはまるで知らない赤の他人だったとしても、同じように住み込みでの家政婦など引き受けたか、と言われれば否定しか思い浮かばない。
 だが…。
 「お前はいったい何が言いたいわけ?別に俺と牧野が付き合っていようが、ただの雇用関係だろうが、お前に関係ないだろ?」
 面白そうだった類が居住まいを正して、冷静に指摘する。
 それに対しては、総二郎も同意らしくうんざり顔だ。
 「…ハァ、まったくだな。我ながらあきらが乗り移っちまったみてぇだぜ。だがな…類。お前は親友だし、牧野は…まあ、牧野の方はどう思ってっか知らねぇけど、一応は弟子だしまんざら知らない仲じゃない。司の手前もあるから、正直、できればどう見ても面倒になるようなマネは辞めとけと忠告したいところだ。けど…それもな」
 「一応は聞いてもいいけど?」
 「一応かよ」
 微妙な類の言い回しの真意に総二郎も気が付いたのだろう、苦笑いだ。
 「司も親友だが、類、お前も俺にとって親友だ。お前のためには、牧野と…というか、一人じゃないっていう状態は悪くないと思う」
 「……………」
 つくしが視線を総二郎へと向ける。
 彼の言い回しにはどこか含むものがあるように感じられたからだ。
 総二郎もつくしを見て、類へと顎をしゃくる。
 「お前も、最近のこいつと昔のこいつとのギャップで戸惑ったと思うけど?」
 「…まあ、たしかに」
 別人のようだとまではいわないが、それに近いことは思った。
 「この前までの汚ねぇ髭面やこんがり焼けちまった外見はともかくとして、だ。年取って振り切れて社交的にでもなったって言うんなら、まあそれも一つの成長として喜ばしい話なんだろうが。ところが、こいつは根は相変わらずの人見知り、自堕落の引きこもりときてる」
 さすがは幼馴染み、類をよくわかってるとつくしも大いに頷ける。
 類などは「ひどいなぁ」などと苦笑しているだけだったが。
 「こいつ、日本に戻ってからこっち、しばらくオフだったらしいけどよ。朝は昼以降まで寝てるくせに、夜は夜な夜な出かけちゃあ、適当な女引っ掛けて朝帰りする毎日送ってたらしいんだよな」
 さすがに驚いて、つくしが類へと視線を戻す。
 たしかに今も類の生活は似たようなもの―――休みは昼まで寝て、という生活態度だが、休日出勤に明け暮れて、夜には普通に帰って来ていたので朝帰りということがなかったのだ。
 しかし、振り返ってみれば一日だけそんな日もあったか。
 …まあ、まだ若いんだしね。
 しかも、美貌で金もあり、地位にも恵まれ、人生順風満帆、独身なのだ。
 まだまだ遊び回りたい年頃だろう。
 だが、夜遊びしてきたというにはあまり憂さ晴らしできたという感じでもなく、かえって疲労が色濃くどこか憂鬱そうだった。
 つくしの目での質問に答えて、類も特に隠すでもなくあっさりと認めた。
 「夜がヤバイって言ったろ?」




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