「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋②

愛してる、そばにいて0413

 ←愛してる、そばにいて0412 →愛してる、そばにいて0414
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「はあ?メイドぉっ!?おいおい、それって何の冗談だよ?」
 さすがの総二郎にも許容の範囲外だったようで、彼らしくない素っ頓狂な声を上げ、そのまま驚いて絶句している。
 …そりゃ驚くよね。
 つくしでさえ、今のこの状態が未だに信じられないくらいなのだ。
 「別に冗談なんかじゃないよ。一ヶ月ほど前から、俺のマンションに住み込んでもらってる」
 ポカンと口を開けて、総二郎がつくしへと目で確認を求めてくるのにやや困りつつ、それでも特に反論するべきところもなかったから、うんうんと類の言葉に同意。
 それでやっと総二郎も冗談でも嘘でもないと理解したらしい。
 二度、三度と唾を飲み込み、何事かを口にしようとして、けれど、上手い言葉が思いつかないのか顔を片手で撫でて呻いた。
 「…なんつーか、何を言っていいのやら」
 「何も言わなくていいよ」
 「何も言わなくていいよ、ってお前なぁ」
 ボヤく総二郎にさっさと見切りを付け、類がつくしへと意識を移す。
 「牧野」 
 「え?あ…はい」
 混乱している総二郎に見入っていたつくしの方は、突然に注意を向けられ戸惑っていたが、しかし、一方類はといえば、そんな二人の困惑をすでに置いてけぼりに、いつもどおりの平常運転に戻ってしまっていた。
 そして、この先の予定もサクサクと進めてしまう。
 「うちの食堂のスペシャルランチ、こっちに運ばせるから」
 「へ?」
 「…は?」
 呼びかけられたのはつくしだけだが、総二郎も寝耳に水だったようで、いったいまた何を言い出すのかと?ポカンとしている。
 「下で食べてもいいけど、この時間帯だときっと凄い混雑してるから忙しないでしょ?」
 「ああ~まあ、そうですよね。そりゃあ、あたしはかまいませんけど…」
 考えてみれば、自社の副社長が社員食堂になど現れては、ひと騒動になってしまうのは間違いない。
 …うっかり、有名社員食堂ランチにつられて来ちゃったけど。
 さらには類ばかりではなく、やはり超有名人の次期茶道家元まで同伴だ。
 そうでなくても、さっきの今で、相乗効果であることを考えると、つくしにしてみても無用な注目は浴びたくなかった。 
 「総二郎、お前も俺らと飯食うんだよね?」
 「…まさか、俺だけ余所で食ってこいとか、冷たいこと言うつもりだったんじゃねぇだろうな?」
 「言わないけど、今日のランチはうちの社員食堂だから」
 微妙な顔をしているのは、総二郎にしてもいろいろ言いたいことがあるのだろう。
 しかし、とりあえず類の性格からして、イヤだと言えば、じゃあ一人でよそにいけ、と言われるだけなのは熟知しているのだろう。
 特に異論は唱えなかったが、その横顔に漂う哀愁に彼の言いたいことがつくしにも十分わかって、思わず噴き出しかけ、慌てて何食わなさを装い口元を覆った。
 トントン。 
 「あ、来たみたい」
 「……だな」
 入室してきたのは、類の第一秘書の遠藤で、いわゆるおかもち持参。
 さらにその後ろに付き従う女性秘書が、どこから引っ張り出してきたのかチープなスチールワゴンを押して入室してくる。
 なにやら花沢物産のエリートビジネスマンと美人秘書が、新幹線の移動販売か何かのように見えてきた。
 「…なんつーか、シュールな光景だな」
 「わかります」
 「そ?」
 三人三様の感想を述べる一同をよそに、ウェイターよろしく遠藤が料理を配膳しようとするのを見てとって、つくしが立ち上がって代わりを申し出る。
 「あ、あたしがやります」
 「うん。後は俺たちで適当にやるから、しばらく引き外して」
 「かしこまりました」
 類の指示に、遠藤が総二郎やつくしに会釈をし、女性秘書に目配せして部屋を退出してゆく。
 「じゃ、準備しちゃおうか」
 「わ、すご~い、豪華ぁ。ホント、美味しそう」
 おかもちを開け、つくしが両手を合わせて歓声をあげるのに、類がにっこり微笑んで頷く。
 「見た目だけじゃなく、結構味や栄養バランスも評判いいらしいよ?」
 「へぇ~、さすが大企業の社食!凄い楽しみ。…三人分全部並べるのは無理だから、とりあえず、西門さんと花沢さんの分だけ並べちゃうので先に食べちゃってください」
 つくしの指摘に小首を傾げ、
 「ん~、サイドワゴンあるからそっちも使って分割すれば大丈夫でしょ。総二郎、お前、そっちからサイドワゴン持ってきて」
 「あ?…ああ、了解」
 類の指示出しに多少戸惑ったようだが、総二郎が素直にソファを立って、執務机の方からサイドテーブルを引き出してくる。
 「皿とか料理は俺が出すから、牧野はお茶の用意して」
 「あ、はい」
 なにやら奇妙な成り行きだが、三人一丸となって立ち働き、昼食の準備に取り組む。
 類は自宅マンションではたいがい縦の物を横にもしないような男だが、たまには自ら率先して働くこともあるらしいと、妙なところで感心してしまう。
 …ま、指示出ししてるところは、さすがに堂に行っててカッコイイけど。
 手にファンシーなプラチックプレートを持っていても、王子様バリの美男が姿勢良く立っていると、背景におフランスが見える気がするから不思議なものだ。
 「しっかし、俺ら何やってるわけ?一々こんなことするくらいなら、どっかのレストランの個室借りて外食するか、仕出し弁当でもデリバリーすればそれで良かったんじゃねぇの?」
 総二郎の言うことはもっともだ。
 「ん?」
 「まさか、お前んとこ来て、わざわざ社食出されるとか思わんかったぜ」
 チープなスチールスプーン片手に、ボヤき出す。
 「牧野がうちの社食の人気メニューなら、一緒にランチしてもいいって言うからさ」
 「はあ?」
 総二郎のつくしを見る目が、『お前、どんだけもの好きなんだ』とそう言っている。
 有名企業の社食の限定ランチをバカにするなと言いたいところだが、まあ総二郎のような男ならそう思うのも仕方がないかと諦めた。
 「いえ、花沢さんや西門さんのようなセレブがよく行かれるお店でランチをご同席するとなると、かなり堅苦しい感じになっちゃうかなぁと思ったもので」
 +道中衆人環視というオプションつきだ。
 「何をいまさら。堅苦しいもなにも、お前だって今までさんざん…司の嫁してた頃には普通だっただろ?」
 予想していたことだが、それでもズケズケと古傷を抉るようにして、容易に出される司の名前につくしは顔を顰めた。
 しかし、そんな彼女のわかりやすい表情に、総二郎も彼女の気持ちを察したのだろう。 苦笑して、
 「そんな顔すんな。事実じゃねぇか」
 「…事実ですけど」
 「だったら、奥歯にものが挟まったような言い方して、一々気を使ってもいられねぇよ。つーか、司の名前が普通に出てくるとわかっていて、どうしてお前は類のところに来たんだ?」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0412】へ
  • 【愛してる、そばにいて0414】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0412】へ
  • 【愛してる、そばにいて0414】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク