FC2ブログ

「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き①

夢で逢えたら150

 ←夢で逢えたら149 →夢で逢えたら151
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「ラティーノ(ラテン系)の女?」
 眉根を寄せて怪訝な顔をした司に、遠山は大きく頷いた。
 「はい。それもヒスパニック系(スペイン語圏出身者)のようで、カーティスが通りかかるふりで確認しています」
 確か、山之内が会ってたのもラテン系の男。
 だが、アメリカ中にいったい何人のラテン系移民がいるというのか。
 現在アメリカ国内には5000万人を超えるヒスパニック系住民が住んでおり、実に人口の16パーセントを超え、黒人を抜いてアメリカ最大のマイノリティ。
 実際に、NYにおける道明寺本社で勤める人間の中でもポピュラーだ。
 同時期に、同系の人間が現れたので不審に思いもするも、単なる考えすぎ、疑心暗鬼にすぎないようにも思える。
 「それが、どうも知り合いのようだったとカーティスは申しております。ご命令どおり、面が割れているSPとは違う人間を配置しておりますが、あまり近づくと気づかれる可能性も高く」
 特にまだ何かが起こったわけではなかった。
 司のスキャンダルなど日常茶飯事のことで、今回はたまたまつくしにまで飛び火したのは、司的にも遺憾であったが、
彼の場合は自業自得、そしてつくしはいつものごとく彼の迷惑を一身に受けて貧乏くじを引くのが宿命ともいえる。
 司的には、大っぴらにつくしを確保し、保護したいところだが、何かと面倒な女でもあるので、あまり表だってSPを張り付けたのではマズイ。
 だが、何かが引っかかる。
 つくしに関して、司は自分のカンを侮らなかった。
 「…わかんねぇな。関係あるんだか、ないんだか。あいつ、土星のネックレス、ちゃんとつけて歩いてるんだろ?西田もうるせぇこと言ってねぇで、さっさと盗聴器も作動させておけばいいものを。何がプライスレス(値段がつけられないこと。プライバシーの間違い)だよ。相手はマトモな連中じゃないかもしれねぇんだ。常識的なこと言ってんなよな」
 「……」
 三十路もとっくに超えた大人となっても、言い間違えは相変わらずのようで、遠山的にもツッコミどころは満載なのだが、あれで中々に世話好きで甲斐甲斐しい西田とは異なり、この野獣を相手に言い間違えを一々指摘するほど遠山は度胸が良くない。
 とりあえず、次にこの言い間違えを聞いた人に訂正は任せて、西田から受けた指示の承諾を司にとった。
 「まあ、いまのところ、張り付いてるしかやるこたないよな。あっちは、なんだかんだ言って収束してきてんだろ?」
 「ええ。やはり、騒動の中心である副社長がいらっしゃらないので、気の抜けたシャンパンと同じことのようで。いまいち、ゴシップに盛り上がりもかけるというところなのでしょう」
 「ハッ!暇な奴らだぜ。他人の色恋気にしてねぇで、自分のケツのハエを追えっていうんだよな」
 辟易して髪をかき上げながら、顔を顰める司を見て、遠山はクスリと微笑んだ。
 「副社長だからですよ。なまじのスターよりも、副社長のカリスマ性は世間をも揺るがします。世の女性の半分は、副社長に恋い焦がれているそうですよ?」
 司の不機嫌を解そうというのか、この女にしては珍しいおべんちゃらを言うのに、司はニヤリと唇の端を歪めた。
 「…あんたも、俺に恋い焦がれたりするわけ?」
 「私は、夫一筋ですので。世の女性のもう半分というわけですわね」
 「ふん。あんたも、あの女も。まあ、元々、俺はあんたの好みじゃねぇもんな。あのヤロウと一緒くたにされたんじゃ、俺も迷惑っつーもんだし」
 司は再び腕時計に目を落とし、椅子を立つ。
 傍に控えた遠山も手早く、机に散らばった資料をそろえ、すぐそばに置かれたアタッシュケースに収納しだした。
 踵を返しかけながら、ふと、司は傍らの肩にもみたない背丈の小柄な女を見下ろす。
 「あんた、いったい、いつからNYにいたんだ?」
 「そうですね、10年くらい前でしょうか」
 「へー?俺があんたと最後にあった当時は、あんまりそういうのに興味ありそうに見えなかったけどな」
 そういうこと…野心だろうか?
 司の物言いに、遠山は困った笑みを浮かべる。
 そうすると、元々下がり気味の眉がもっと下がって、かつて不幸そうに見えると言われた顔が、本当に寂しそうに見えた。
 実際、寂しさを感じていたとしても、不思議ではないと司は思う。
 「大学を出て、最初はダメもとで受けた道明寺日本支社に就職したんですが、ちょうど社長視察について視察に来ていた西田さんに目をかけられまして。就職した当時は総務課に配属されていたんですが、秘書課に転属になってすぐに西田さんについてNYに来ないかとお誘いを受けたんです。海外にも興味があったし、あの当時、今の自分を壊して変えたいな…ってちょうど思ってたから」
 遠山には当時、さまざまな悩みがあった。
 世の女性たちと同じく、恋の悩み、友人との別離、有名私立大学を出て、英語・フランス語・中国語と語学力に堪能で仕事ができた為、同僚に妬まれていた。
 そんな時、西田の誘いはこの上なく魅力的に思えたのだ。
 きっと彼女の親友もそんな思いで、海外にでたのだろう。
  「…女は変わるな。最初、あんたが俺の前に現れた時、誰だかわからなかった」
  「私こそ、副社長…道明寺さんが、私を憶えていてくださるとは思っていなかったです」
  「忘れないさ。…いま、結婚してるんだろ?」
  「ええ。これでも、2児の母です。すっかりおばちゃんですよ」
  「一才上の俺は、それじゃあ、オヤジか?俺もガキが一人いるしな」
  「あ、すいません、そんなつもりじゃなかったです。道明寺さんは今でも素敵ですよ」
 そんな風にサラリとお世辞をいうところも、変わったところなのかもしれない。
 懐かしい女との再会に、司はつくしともう一度出逢って、時が再び動き出したのを感じずにはいられなかった。

 
 結局、司が東京メイプルに帰りついたのは、0時を過ぎていた。
 疲労が蓄積して、こめかみに鈍い痛みを感じるが、このまま眠るわけにはいかない。
 明日も分刻みのスケジュールが待っているのだ。
 社内改革をして、だいぶスケジュールに余裕ができたはずの司だったが、なるべく早く東京を立ってNYに戻るためには、多少の無理は死からがない。
 かつてはもっと、凄まじいハードスケジュールをこなしていたのだ。
 …俺も、年ってことなんかな。
 彼らしくもない自嘲が洩れる。
 この時間帯なら、こちらは真夜中でもNYは真っ昼間。
 文句言われる筋合いじゃねよな。
 そう強気なのは表面だけで、ここのところというか、再会してから事務的な要件以外は受けてくれない、ツレナイ相手へと念を送る。
 トゥルルルルルル、トゥルルルルルル。
 第一関門の、電波がどうのというアナウンスはどうやら流れてこないが、期待と「俺様をこんなに振り回しやがって」という憤慨が交互に
訪れる。
 が…。
 『ただいま、電話に出られません。ぴーという発信音と…』
 「わざわざ、声吹き替えてやがる癖に、機械的な内容にするんじゃねぇっ!」
 つくしの声に意気込んでここ数日の無視という仕打ちに文句を言ってやろうとした司の気勢をそぎ、思いっきり事務的な口調に留守電に切り替わったことを知る。
 威勢良かったのは携帯を切るところまでで、かなり落ち込みは酷い。
 …確かに、つくしからは「付き合えない」と言われていた。
 だがそれは、あの女特有のまたわけのわからない遠慮や考えすぎる性格からくるもので(「愛していない」と言われたことは都合よく蓋をして)、強く押せば、勝気なようでお人好しなつくしは絶対に落ちる!
 司を拒み切れないのはわかっていた。
 だが、こうして立場ばかりか、実際的な距離まで離れていると、つくしと再会できたのは夢で、再び「愛する女」を得て、幸せになれるという希望が露と消えてゆく気がする。
 あれほど夢で逢えたら…と思い続けてきた願いが、いまや実際に夢だったらと言う恐怖にすりかわり、こうしてたった一人、冷たく豪奢な部屋に一人佇んでいると、まるで世界で自分一人が取り残されたような孤独に苛まれた。
 「…クソッ」
 口汚く携帯を罵り、イライラと形の良い親指の爪先を噛みながら、思い直して、再び携帯を持ち直す。
 時差のあるNYならいざ知らず、時間的に他人に電話をするような時間帯ではなかったが、司は構わずコールする。
 どうせ、相手も自分に負けず劣らず忙しいのだ。
 まだ、寝てはいないだろう。
 いや…あいつなら、拘束時間から解放された途端、瞬時に寝ることもありえる。
 中々とられないコール音に、自分の予測が当たっているようで、司はイライラと指を机に打ち付けた。
 『…誰?』




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【夢で逢えたら149】へ
  • 【夢で逢えたら151】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【夢で逢えたら149】へ
  • 【夢で逢えたら151】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク