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「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋①

愛してる、そばにいて0408

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 「はい、抹茶ミルクです」
 「ん、ありがと」
 まるで亭主関白のように新聞から目も上げずに、類が頷き礼を言う。
 一応は類も経済人。
 空き時間を見つけては、日本誌だけではなく海外版の経済新聞も電子版で一通りは目を通すらしいが、たいてい朝は出勤ギリギリ、寝起きのコアラかナマケモのように、一連の動作を流れ作業的にこなすだけの彼が、こうして紙面に向かい合っているのはごく珍しい。
 とはいえ、今日はつくしの寝起きの都合で、妙に早い時間に叩き起されたせいではあった。
 おそらくそれも彼女の責任ではないはずだが、それでも相手が夜遅くまで仕事をしている人間だと思うと、どうしても罪悪感を拭えない。
 …そういえば、道明寺もこうして朝から新聞を読んでたっけか。
 もっとも類とは異なり、司は常に余裕をもって行動していた。
 それこそ移動時間などに電子版をざっと目を通す方が、数少ない休息時間を別のことに使えただろうが、司は忙しなく新聞を読むよりも、朝の時間にゆったりと紙面を繰るのを好んでいた。
 …根っからの仕事人間っていうか、きっとヤリ甲斐感じてたんだろうな。
 学生時代の彼を思えば意外だったけれど。
 それでも家族と共についた食卓では、読むのを一旦辞めて、つくしや戒の話に耳を傾け、妻子との時間を大切にしていた。
 いつもはあえて過去―――司のことを思い出すのを避けていたというのに、今日見た夢見のせいだろうか。
 不思議に抵抗なく、そんなことを思い起こす。
 「……なに?何か興味を惹く記事でもあった?」
 見るともなく類の読んでいる紙面の裏側を眺めていただけだったのだが、そんなことを聞かれ、自分がずいぶん長々とボンヤリしていたことに気がつかされる。
 「牧野?」
 「え?…あ、いえ」
 カサカサと音を立てて裏返し、つくしが眺めていたと思しきあたりを類が見る。
 「ああ、メキシコ湾の海洋石油掘削合弁事業の記事?これたしか、司んとこの関連会社が競合してるやつだよね?」
 「はあ、そうなんですか?」
 特に意図して見ていたわけではないし、そういうことには興味がなかったから、具体的に聞かれてもつくしにはそうなのかとしか答えられない。
 「司んとこは石油事業だけはどうにも弱かったけど、ここのところの躍進は目を見張るよ。機会があれば、それをキッチリ利用してさらに会社を大きくする…さんざんガキの頃は反発してたけど、なんだかんだ司も鉄の女の手法に似てきたね」
 「……………」
 なにげない雑談の一つのようで、そこに何か含みがあるのか、類の表情や声音からは推察しがたい。
 特に揶揄するという感じではなかったが、さりとてつくしがどういった過去を持つ女であるかわかっていながら、類は特にそれを慮ることもなければ、話題に禁忌を設けることもなかった。
 そして、今もサラっとそれだけで会話を終わらせ、つくしが返事をしようがしまいが、殊更こだわっているようには見えない。
 「……あの」
 「ん?」
 「花沢さんはどうして、あたしを雇おうと思ったんですか?」
 つくしのいまさらな問いかけに、新聞に目を落としたままだった類が、わずかに顔を上げつくしを見上げる。
 「どうして…て?」
 「あたしが道明寺の元妻だったってこと、知ってたんですよね?…えっと、たしか最初、あたしにメイドにならないかと提案をした時も、花沢さんはあたしのことをそう言ってたと思うし、あっ、まだ道明寺と離婚してない時にも一度会ってるんですよね?」
 つくしはまったく憶えていないが、それも類が言っていた憶えがあるし、たしかかなり以前、桜子もそんなことを言っていたような気がする。
 「俺言わなかったけ?ちょうど部屋も汚くなってきたし、かといって自分のテリトリーに下手な人間を入れて、煩わされるのイヤだったからって」
 「……それはそうですけど」
 だが、だからといって、つくしが類にとって煩わしい人間ではないなどと、十数年ぶりに再会した、それもほとんど単なる知人に近い人間をどう判断したというのか。
 片手間に話す話題ではないと思ったのか、類が新聞を置いて、彼に飲み物を配膳したままテーブルの脇に突っ立っていたつくしにも、自分の対面側に座るようにと促す。
 「座れば?」
 「あ…はい」
 そして、少しだけ考えるように片肘をついた手に顎を乗せ、視線を一巡させる。
 「空気がさ」
 「…空気?」
 「邪魔にならなかったんだ」
 また曖昧な言い回しに、つくしが眉根を寄せた。
 昔ほどには細切れではなかったが、類の言葉はゆっくりと吟味しなければわかりにくいところがある。
 「俺に色目を使わないこととか、余計な詮索をしないこと、知り得た俺の個人情報をよそで漏らさないこと。そういう基本的なこともそうなんだけどさ、俺にとって邪魔にならない…っていうのは凄い稀有なことなんだ」
 「……………」
 他人に拒絶的で、英徳の非常階段で出くわすと必ずのように不機嫌な顔をして、場所を移動していた少年時代の類の顔が思い起こされる。
 「非常階段友達だって、あんたが言ってたからって言ったろ?」
 「…それは」
 「あの頃は、なんだよそれ、って思ったけどさ。今思うと、そうだったのかもって。…司の元妻だとか、しがらみがどうだとか、そういうんじゃなく、ただ俺にとってはあの高校時代の妙な女だったあんた…牧野つくしとまた一緒に過ごしてみたかったのかも?」




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