「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋①

愛してる、そばにいて0404

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 類のマンションに住み込みで働き出し、なんだかんだで優紀に連絡しないまま半月が過ぎていた。
 やっとつい2日ほど前に連絡して、隼斗との離婚、そして東京へ戻った事を優紀に電話で伝え、現状をサラッと話したところだ。
 『はっ!?花沢さんって…あの花沢さん?英徳であんたの憧れの王子様だった、花沢物産の御曹司だよね?』
 驚愕するのももっともだが、この年になっても少女の日の初恋をいつまでも持ち出されてしまうのは気恥ずかしいものがある。
 とはいえ、つくしの記憶的には一昔というほど昔のことではないので、生々しいほどでもないが、さりとて懐かしいというほどには古い記憶でもなく…といった感じだ。
 「あんたも普通の勤め人だったのに、いきなり土日がないような仕事に転職とかって、なにげに大変だよね?」
 「…まあ、そのかわりに、わりに自由がきくっていうか、一人の分、やることさえやれば特に干渉されないし、気楽ではあるんだけどね」
 「でも、夕方からとか出かけられないんでしょ?」
 互いにパスタやサンドイッチの軽食で食事を済ませ、ランチをとる客たちでざわめく店内で人目を気にして、声のトーンを落としながらの会話だ。
 「ん~、夕食の仕度とかまでは望まれてないから、別にいけないってこともないんだけどね。でも、やっぱり帰ってきたらお茶くらいは出して欲しいだろうし、お金で雇われてるからには、お給金の分、ちゃんと仕事しなきゃって思うからさ」
 「ふぅん…まあ、つくしは真面目だもんね」
 「…そういうんでもないんだけどねぇ」
 類のマンションの部屋の管理を任されているとはいえ、それは主に片付けと掃除に関してだけのことで、実際には事細かな従業規定などないし、ほとんどこれといって義務付けられた職務もないのだ。

 あとは秘書に依頼された朝食の仕度や、朝出勤のためのサポートくらいなもので、現在つくしがやっていることは、彼女が自発的に見つけて負っているものがほとんど。
 下着や普段着の洗濯、以前は秘書が毎朝持参していたスーツ類の保管や、マンションに届けられる郵送物の分別と管理も結局は、どうしてもやらなくてはならないものではないだけに、自ら架さなければどこまでも怠惰になってしまう。
 …自由裁量たって、限度があるでしょうに。
 イレギュラーではあってもいわゆる彼女の職務はメイドなのだろうし、そうであれば道明寺邸で見慣れた彼らの仕事に準じてつくしは職務に励んでいた。
 常識の範囲と自分の経験(主人側としてだが)から判断して、職務を遂行するしかない。
 「ご主人様がご帰宅される頃には、家にいるようにしてるってわけなんでしょ?」
 「まあね。あたしにしても特に夜遊びしたいってわけじゃなし、お茶だけ出せば後は、放置で構わないらしいから、そこは全然苦じゃないんだけどね」
 へ~、ほ~と興味津々に聞いていた優紀が、首を傾げてイタズラっぽい顔をしてくる。
 「なによ?その顔」
 胡乱に見返せば、忍び笑うだけ。
 「言いなさいって」 
 「……いや、思いついただけなんだけどね?」
 「うん?」
 「なんだか、お手伝いさんに雇われたっていうより、お嫁入りしちゃったみたいだなって思ってさ?」
 二杯目のアイスティのストローを咥えたまま、……優紀のとんでもないセリフに見事に固まってしまった。
 「はあ?」
 「だってそうでしょ?旦那様が帰宅するのを三つ指ついてお出迎えして、お風呂にしますかぁ?お茶ですかぁ?それとも?って聞くわけじゃない?」
 「…三つ指ついたりなんかしてないわよ。旦那様とかいう呼び方といい、なんだかいろいろ語弊があるみたいだけど、ごく普通に受け答えしてるだけだってば」
 優紀のニヤニヤ笑いからして冗談のようだが、それでもつくしにしてみればずいぶんタチの悪い冗談だ。
 口を尖らせ、ズズズッとほとんどなくなってしまっている飲み物を意地になって吸い上げる。
 そんなところを子供っぽいとでも思ったのか、からかう風情だった優紀が苦笑して口調を改めた。
 「まあ、冗談はともかくとして、凄いいきなりの人生の変遷だね」
 「そうかな」
 「だうだよ。元旦那…っとと、まだ隼斗さんとの離婚届け出してないんだっけ?」 
 「あ…うん。まあね」
 自分でも意味のないこだわりだとわかっている。
 しかし、隼斗と陽太が日本を出るまでは…と、つくしは未だ届出を保留にしていた。
 隼斗にしても離婚届を出す時期に関しては、つくしに一任すると言ってくれてもいたし、どちらにせよ、陽太の日本での事前検査の結果を受け、二人は近々渡米することが決まっている。
 「離婚を決めて…さあ、新しい人生への再出発だ、って矢先の追突事故でしょ?しかもその相手が、因縁浅からぬ高校時代の初恋の人!っていったいどんな偶然よ」
 改めて人に言われると、たしかにそのとおりだとつくしも思う。
 「どんな、って言われても、ね」
 「運命、とか?」
 「運命?!」
 妙に乙女チックな優紀の返しに、自分でもやや子供じみている自覚のあるつくしの方が逆に呆れてしまう。
 しかし、もちろん優紀にしてみても半ば冗談だったようだが、それでも彼女の顔はどこか複雑なものを含んでいた。
 「ま、一々なんでもかんでも運命に関連付けるほどあたしも夢見がちじゃないけどさ…でも、実はちょっと安心しているところもあるんだよね」
 「え?」
 ポツリと呟かれた小さな声に、マジマジと優紀の顔に見入る。
 優紀にしてみても、迷いがあるのだろう、曖昧な笑みを浮かべ、手元のオレンジジュースに視線を落として小首を傾げ、しばらく言葉を選んでいた。
 「………離婚して、あんたがどれだけ凹んでるんだろうって心配してたから、意外に元気そうで、ちょっとだけ意外だった」
 「…優紀」
 「あんたが最初の結婚…道明寺さんとのことのすぐ後、あまり間を置かずにほとんど出会ったばかりの隼斗さんと結婚しちゃったじゃない?」
 優紀の言葉に、つくしも当時のことを思い起こす。
 いつもはおっとりとかまえて、あからさまに人の意見に反対するのではなく、寄り添おうとしてくれる優紀が珍しくつくしの再婚に難色を示した。
 「正直、あたしは反対だったし、…実際にそう言ったよね?」
 「…そうだね」
 「もちろんあたしが言う筋合いじゃないってこともわかってたけど、…でも、あの時、あんたが隼斗さんとの結婚を選んだのは間違ってる気がしちゃったの」
 「……………」
 間違っている。
 『…あんたのそれは依存なんじゃないの?本当に牧野さんのことが好きで結婚するんじゃないんでしょ?陽太クンが可愛いから、牧野さんが気の毒だから…共感できるからって、それで結婚とかって絶対に間違ってる』
 キッパリとつくしの弱さを糾弾した優紀の想いと友情は、当時でさえちゃんとつくしにも通じていた。
 けれど、だからといって一人で過ごす夜に、暗闇の向こうにある恐怖に耐える日々が耐え難く、目の前に差し出された安易な温もりを無視することなど、当時のつくしにはとてもできなかったのだ。 
 …あたしは隼斗さんと陽ちゃんを利用してた。
 彼らがくれる温もりと優しさに逃げて、自分の傷と向かい合うことを避け、結局は一人で立つことなどできはしなかった。
 人は時として人に必要とされ、頼りにされることで自分の存在価値を認めて、力を得ることができる生き物なのだ。
 「依存は愛情じゃない…いずれ破綻する時が来る、だなんて、ずいぶん偉そうなこと言っちゃったなって」
 「…優紀は間違ってなかったよ」
 彼女の言うとおりのことが現実になった。
 しかし、優紀は小さく首を振って、そんな彼女の自嘲を柔らかく否定した。
 「ううん、間違ってたのはあたし」




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