FC2ブログ

「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き①

夢で逢えたら149

 ←夢で逢えたら148 →夢で逢えたら150
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 背中とつくしの間に荷物を挟み、そろそろ夏の兆しを感じる風を受けながら、右へ左へと車の間をぬってレンはバイクを走らせる。
 つくしもバイクの後ろに乗るのがけっこう好きなのか、レンが16才の時に(アメリカでは16才で車・バイクともに免許を取得できる。※ただし州によって異なるがNYは16才。レンはもうすぐ18才になります)免許を取って以来、何度となくこうしてつくしを背中に乗せて走らせてきた。
 ともすれば、『彼女』という位置にいるごく親しい女友達ですら、つくしほどには乗せたことがない。
 自称している通り、我ながらマザコンだと思うし、他の友人たちの中にはこれほど密着した親子関係を築いている人間はいなかった。
 本当の親子ではないからとか、共に他者を受け入れることのできない境遇だった連帯感からだとか、いろいろな理由付けをつけることはできたけれど、レンはただ、この女性が好きだった。
 勝気で一生懸命で、真っ直ぐで、人情家なお人好し。
 強いかと思えば、脆いところもある彼女と過ごす時間が、何よりも大切で愛しかった。
 昔、友人の一人がレンに言ったことがある。
 美しすぎること、才能がありすぎること、賢すぎること…それらすべて、人と違いすぎることは醜いのだと。
 人は異端に敏感で、理解できず、理解できないものは排除したがる。
 それはレンに対する皮肉だったのか、昔からの習慣で深く考えることはとっくに辞めていたが、他人がレンを排斥することは珍しくなかった。
 人とは違うIQが、彼を特別にし、同時に異端視させた。
 大学には彼のように才能溢れる者たちが集まっていたが、それでも彼ほどに優秀な人間は少ない。
 1を聞き、10を知る。
 皆が努力して得ることを一瞬で悟ることがあるがゆえに、彼がまったく努力していないと人々は誤解し、怖れ、妬んだ。
 大学でさえそうだったから、平凡さを美徳とする人々がほとんどの初等教育以前は彼にとって辛いものだった。
 いくら聡明でも、心は幼い子供。
 なのに、大人は彼を不気味がり、子供は彼を排斥する。
 だから、彼は他人に自分への理解を求めるのではなく、楽しくなくても笑い、好意を抱いてなくても嫌悪を抱かないように努力し、自分を変革した。
 彼の必要以上の愛想の良さや陽気さ、人当たりの良さはレンの努力の賜物で、いつの間にか習い性になった微笑みは、どこまでが本当の自分の気持ちでどこまでが演技なのか自分でもわからないほどに板についたのは幸か不幸か。
 だが、そんな彼にも本当の笑顔を引き出すことのできる人間がいる。
 初めて出会った時から、彼女は特別なのだと、レンは悟っていた。
 別に恋人になりたいわけじゃない。
 ただ、ずっと繋がっていたいだけだ。
 この誰も間に存在しえない蜜月に未練があるわけじゃないけれど、少しでも続けばと願わずにもいられなかった。
 だが、いつか、彼女をレンから奪い去り、連れて行ってしまう存在が現れることも最初からわかっていたのだ。
 …まさか、つくしが忘れえなかったあの男が再び彼女の前に現れるとは、さすがの彼でも思いもしなかったけれど。
 しかし、まだ、レンは認めたわけではなかった。
 つくしにとって、果たして誰がもっとも、相応しい…彼女を守り、慈しみ、愛し、幸福にする…男であるのか。
 レンは腰に回ったつくしの手の温もりを感じながら、チラリとバイクのサイドミラーへ視線を走らせる。
 黒塗りの車が1台、レンの乗る大型バイクZRXと同系のバイクが2台、追尾している。
 レンが自分を尾行している存在に気が付いたのは、司が日本に発って間もなくのこと。
 もしかしたら、彼がNYに戻ってきた直後にはもうついていたのかもしれない。
 当初、アヤラの手の者かと緊迫感を憶えたが、その職業的な雰囲気から、別筋の存在に思い至った。
 そして、アムトラック(旅客鉄道)の駅での類の不審な行動…彼が接触していた独特な雰囲気のある人間に思い当たり、そして、つくしからメイプルホテルに避難した日のことを聞き、相手の正体に気が付いた。
 …自分にもSPがついている。
 司と類、どちらがつけたSPかわからないが、類からは個人的に彼への直通回線の携帯番号と発信機つきだというかなりオシャレなキーホルダーを貰っていた。
 『女性だったら、アクセサリーの一つもプレゼントするんだけどね』
 そう、含み笑いながら手渡す類に、
 『…キャシーから俺のことを聞いてるんですね』
 『うーん、残念ながらまだ全部は話してくれないんだ。でも、持っててもらって損はないし、必要かなと思って。糸電話よりは役立つよ?』
 どこまで本気が知れないが、類がキャサリンであるつくしを受け入れたように、自分のこともつくしの一部として受け入れていることが伺い知れた。
 『キャシーには渡さなくていいんですか?それとももう、渡してる?』
 『俺のは、ちょっと手違いで廃棄されちゃってね。でも、司が渡してるだろうから、とりあえずはいいと思うよ。そのうち、俺のも渡しておきたいところだけど、司に見つかるとまた捨てられちゃいそうだしね。どうしたもんだか…』
 肩を竦める類は飄々として、余裕があるのようにも、つくしにそれほどの執着もないかのように見えなくもなかったが、ふと、レンは類の本質の一端を悟った。
 司と正反対なのだ。
 そして、よく似ている。
 ともに、感情の過多を制御できていない。
 もちろん、年齢に応じて、社会的な地位を持つものに相応しい言動を行っていて、他人から見れば冷静沈着、クールなどと称される二人だったけれど、どちらもその本質は不器用。
 司はその不器用さを性格の激しさ、激昂しやすい性質に影響させていたが、類は感情を表に出すことが下手であり、クールなのではなく不器用ゆえに無感動なのだ。
 感じていないわけではないだろう。
 しかし、その自分の感情を情緒として感じることができない。
 ある意味、かなり屈折しているという自覚のあるレン以上に、屈折した男たちなのだ。
 つくしの健全さが、優しさが、温もりが、だからこそ欲しい。
 つくしという太陽があって、初めて人間になれる『ピグマリオンの石像』。
 でも、つくしは一人しかいない。
 自分は『息子』という確固たる地位を手に入れた。
 つくしが誰よりも自分を愛して、大切にしてくれているのを知っている。
 恋人のそれとは違ったが、それはそれでかまわない。
 恋人になりたいわけではなかったから。
 そういう意味ではレンは健全だった。
 では、家族という単位にであれ、つくしの中のもっとも大きな地位を占めたい男たち二人が、彼女を手に入れるには?
 …お手並み拝見かな、とりあえずは。
 レンは内心、人の悪い笑みを浮かべる。
 彼と同じ位置、あるいはその彼さえも凌ぐ位置を狙おうというのだ、せいぜい苦労してもらわねばシャクというものではないか。
 「…の?」
 信号待ちの交差点で、後ろからかけられたつくしの言葉に、レンは我に返り問い返す。
 「え?何?」
 「なんか、あんた妙に楽しそうじゃない?なんか、いいことあったわけ?」
 「え~?何言ってんの?顔も見えないのに、楽しそうって」
 「馬鹿にしないでよ、何年あんたの母親やってると思うのよ。こうやってくっついていれば、あんたがなんとなく哀しそうだったり、辛そうだったりするのだってわかるし、もちろん、なんだか楽しそうな気配もわかるわよ。あんただって、そうでしょ?」
 「…はは、まあね。ちょっと面白いことを想像しちゃっただけ。あ、青になるよ。しっかり掴まってて」
 首を傾げながらも、つくしはギュッとなおさら強く、最愛の息子の背なにしがみつく。
 とりあえず、もうしばらくの間は、この温もりはレンだけのものだった。


 
 午前の会議が長引き、昼食後の予定だったネット回線を用いた世界会議に、否が応でも昼食をスキップせざる得なくなり、司は腕時計を眺めながら舌打ちした。
 どちらにいしろ、それほど食欲があるわけではなかったが、空き時間を見て、つくしに連絡をいれるつもりだったのだ。
 そうは言っても今頃NYは真夜中。
 十中八九、つくしが電話に出てくれないのは確かだったが、万が一にも賭けたかった。
 だが、予定を読み上げる冴子の背後、執務室のドアをノックして入ってきた女の顔を見て、それも諦める。
 NYの西田の直属の部下であり、司との連絡係でもある遠山を、冴子はチラリと見やって次の指示を待つ。
 元々社長つきの秘書である西田と冴子とは指示系統は別だったとはいえ、今は山之内の代わりに西田が司の第一秘書を引き継いでいる。
 だというのに、司への連絡事項を冴子を介してではなく、他の人間を介することに彼女がどう思っているのか、その無表情な顔の中には伺いしれない。
 だが、西田の直属だとは思えない遠山のにこやかで柔らかな笑顔は、かえって一筋縄ではいかない食わせ物であることは周知の事実だった。
 遠山は冴子の3年先輩で、同時期に西田の薫陶を受けていたこともある。
 一方は司の下へと配属され、一方は西田の下へ残り、共にエリートとしてそれぞれの頂点へと向かっていたはずだった。
 もっとも、遠山には冴子のような野心はあまり見えない。
 元々は秘書課ではなく、一般入社の総合職だったと聞くが、西田に見いだされ彼の信頼厚く、腹心と言ってもよい。
 司はまったく興味なかったものの、一応部下の身上書に一通り目を通しているので熟知していたが、夫がおり二人の息子の母親。
 仕事の鬼というか、サイボーグに近い西田とは正反対に、家庭生活を極力優先するという殺人的なハードスケジュールを要する道明寺秘書軍団にあって異端の存在だった。
 ただまあ、別の意味で、遠山のことは司も大いに驚かされたものだったが。
 「…高瀬、先ほどの件はお前に任せる。取り急ぎ、大阪に飛んで交渉しろ」
 「しかし、その件は現地支社の者を向かわせ、私は世界会議に同行する予定では?」
 「いや、いい。こっちは遠山を同行させる。大阪の件は、やはりお前に任せた方が確実性は上がるだろう」
 「…わかりました」
 しばし冴子は俯き、だが次に顔を上げた時には、一礼して踵を返す。
 その後姿を、遠山は見送り、執務室のドアが閉められると司に向き直った。
 「で?何があった?」
 遠山は頷き、西田からの連絡を司に報告し始めた。




web拍手 by FC2

 
関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【夢で逢えたら148】へ
  • 【夢で逢えたら150】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【夢で逢えたら148】へ
  • 【夢で逢えたら150】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク