「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋①

愛してる、そばにいて0393

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 …いつまでもこだわっていても、しょうがないし。
 過去もまたつくしの一部であり、いくら否定したところで変わることもなければ、なくなることもありはしないのだ。
 「で、さっき話した精神保健福祉士云々の話だけど」 
 「あ、はい」
 「ここに暮らしてるのは俺一人だから、当然俺のいない日中、部屋の管理さえちゃんとやってくれれば、どう過ごしてくれても構わない。もちろん、夜もね。つまり、それなりに時間あると思うんだ」
 今の状況だと、数日は掃除や片付けその他に費やされそうだが、たしかにその一時さえ乗り切れば、同じサイクルの繰り返しでそう大変なことなどないだろう。
 しかも、食事の支度もいらないとなればなおさらなことだ。
 …散らかす人間がほとんど寝に帰るだけの生活だしねぇ。
 「だから、そうした空き時間に学校に通うなり通信教育を受けるなりすれば、一石二鳥なんじゃないかな?たしか社会福祉士資格持っていれば、半年かそこらで精神保健福祉士の受験資格もとれるはずだよね?あんたにとっても悪くない条件だと思うけど?」
 悪くないどころか、怖すぎるくらいの好条件だ。
 むしろ、どうしてほとんど知人に過ぎない…しかも、偶然出くわしただけのワケアリの女にそんな話を突然持ち出すのか、そっちの意図の方が気になる。
 …まさか、また道明寺繋がりとか?
 ありえない話ではなかった。
 類は司の親友だ。
 見も知らぬつくしの就職先にさえ手を回すような人間なのだ―――司という男は。
 暗澹とする。
 しかし一方で、これがあきらや総二郎からの話であれば、それもありえそうな話である気がしたが、類の場合は不思議に司と繋がっている気がしない。
 …あたしが道明寺家にいる時も、花沢類とは交流していなかったみたいだし。
 もちろん司とは家庭内別居状態だったので、彼の交友関係や行動のすべてを把握していたわけではなかったから、彼女が知らなかっただけで付き合い自体は続いていたのかもしれない。
 しかし、司が日本や欧米などの先進国、後はせいぜい東欧に赴任していたくらいで
ほとんど発展途上国には駐在していたことがなかったのとは真逆に、類はアフリカや中東諸国を中心に派遣されていた為か、ほとんど司やつくしの身近に彼の気配はなかった。
 それでも、類もまた司の親友の一人であることには違いないのだと、つくしは堂々巡りに悩んで黙り込んだ。
 そんな彼女を眺め、類が首を傾げる。
 「まだなんかある?」
 「…あ、えっと…その…」
 言葉を選んで、口ごもる。
 「ああ、もしかして、給料?」
 「え?あ…いえ」
 一人合点して、類がサクサクと話を進めてゆく。
 「そっちはうちの本宅…花沢の屋敷の同じような職種の人達と同じ給料体系を取らせてもらって、カタチだけでもあっちからの派遣ってことにするつもり。もちろん、さっき言ったとおり、イレギュラーに仕事を頼むわけだから、特別手当はちゃんとつけるから安心して?」
 音に聞こえた花沢家の給料だ。
 そう悪いはずもなかったし、そうではなくても食住が保証されている。
 たとえ安い報酬だったとしても、補ってあまりある条件だった。
 しかし、
 「いえ、本当にそういうことじゃなくて」
 「うん?」
 「なんで、あたしなんですか?それこそ花沢さんのご実家のお屋敷の方で、いくらでもそちらのスペシャリストの人たちがいらっしゃいますよね?そうした人を派遣してもらえば、それで済む話なんじゃないですか?」
 というか、そもそもなぜそんな不便な思いをしてまで、不慣れな?一人暮らしをして、いくらでも手のある実家に帰らないのだろうか。
 「ん~、日本に帰国した当初は、そのつもり…誰か屋敷の古参の使用人に来てもらおうと思っていたんだけどね」
 溜息をつき、首に巻いていたタオルをスルリと抜き取って、パサリと類がその場にタオル投げ捨てた。
 何気に、超自然な動作で…。
 すでに乾き始めた髪をサラリと撫で、薄らと笑みを浮かべる美貌は男の魅惑に満ちて、この上なく美しくセクシーだが、残念ながら彼女の視線と関心は、今投げ捨てられたばかりのタオルにだけ向けられていた。
 …これかっ。
 呆れてつくしはタオルを凝視するばかりで、そんな類の色っぽい仕草にはまったくの無関心。
 「牧野?」 
 「え?あ…ハッ。えっと?」
 つい胡乱な目でタオルにいつまでも見入ってしまっていたが、類に不審げに呼びかけられ、慌てて向き直る。
 
 「なんの話でしたっけ?」
 つくしの視線の先を追って、タオルに行き着いた類がクスリと笑う。
 彼女の内心を見透かして、類は面白がっていた。
 「なんで、こんなにだらしなくて実家に帰らないのか?」
 「はははは」
 常識的に当たり前の感慨ではある。
 しかし、それでもさすがに当の本人に言い当てられては、バツが悪い。
 「まあ、生活の面だけで言えば、屋敷に戻った方がたしかに楽なんだけどね。…いい年した男が、親の目やら耳の行き届いた実家にいるっていうのも、何かと面倒臭い話でしょ?」
 「え~?」
 そんなこともないだろうと反論しかけて、けれどさすがにいい年のつくしも思い当たることないわけでもない。
 …そっか、女の人とか連れ込むのにも実家じゃねぇ。
 勝手に納得しかけて、すぐさま当の類に否定される。
 「言っとくけど、ここに女は引っ張り込んだことないから」
 「…ああ、そうなんですか」
 まあ、たしかにこんなゴキブリもわんさといそうな魔窟に、並みのお嬢様では耐えられまいと、大いに頷ける。
 「じゃなくって…ガキの頃ほどじゃないけど、やっぱりこの年にもなっていつまでも独り身だと、親がまたいろいろ干渉してくるようになってね」
 「はあ、なるほど。そういうものなんですね」
 「そういうのも鬱陶しいし、干渉されるのもごめんだしね。第一、これまで10年近くも一人暮らしをしてきて、一人でいることに慣れてる。いまさら大所帯の屋敷に戻るのも、たいがい億劫だったかな」
 「…え」
 一人暮らし…10年もやってきてこの惨状とは恐れ入る話だ。
 「一人って…一人だったんですか?」
 「うん」
 …うん、て。
 「俺はさ、司やあきらみたいに先進国ばかりを回ってきたヤツらとは違って、けっこうバス・トイレがない野宿に近いようなところにも行ってるから、これでもかなり耐性あるんだよね」
 …耐性。
 たしかに、深窓のお坊ちゃまがこんな魔窟で平然としていられるのだ。
 それなりの歴史があって、類にもいろいろあったのだろうとはつくしにもある程度は察せられなくもない。
 …それにしたってねぇ。
 「で、向こうにいる間に手頃なマンションを用意させて、こっちに越してきてから使用人も適当に屋敷から見繕わせるつもりだったんだけど、いざそうなったら適当な人材がいなかったんだよね」
 「…適当な人材って、花沢さんのところならいくらでもいるでしょ?」
 「ん…この10年俺も日本にいなかったし、俺の両親も滅多に帰らないから、留守宅に家族が誰もいない間、かなり使用人絞ってたせいもあって、古馴染みの人は転職してたり退職してたりで、かなり入れ替わってたからさ」
 「はあ~?入れ替わってたからさ、って」
 それはまあ、ありそうな話ではある。
 あるが、それのいったい何が問題だと言うのだろうか?
 …別に、違う人を雇い入れればいい話なんじゃないの?
 そんなこんなな打明話をしているうちに、類が話を一旦中断させ、キッチンの冷蔵庫の方へと向かってゆく。
 そして冷蔵庫を見て、綺麗に片付いた流しを見て何かを悩んでいる。
 そんな彼の仕草や行動を見ているうちに、つくしもピンときた。
 …あんな格好のままだしねぇ。
 いくら風呂上りとはいえ、まだまだ肌寒い季節。
 空調を完璧に調整してあるにしても、上半身ほとんど裸に近いランニング一枚では冷えてきたのだろう。
 「…えっと、何か温かい飲み物でも淹れましょうか?」
 「抹茶ミルクがいいな」
 「……………」
 ニッコリ。
 …抹茶ミルク。




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