「愛してる、そばにいて」
第6章 始まりの刻橋①

愛してる、そばにいて0386

 ←愛してる、そばにいて0385  →愛してる、そばにいて0387
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 大きく目を見開き、驚愕に固まったつくしの顔を面白そうにジロジロ見ていた男が、小さく噴き出し、くくくと笑い出す。
 「はははは、信じるとは思わなかったな。あんた騙されやすいでしょ?」
 「…は?」
 青ざめかけていたつくしの顔が、今度は違う意味でポカンと口を開いて、アホ面を晒してしまう。
 「ジョークだよ」
 「なっ!」
 言っていい冗談と悪い冗談があるはずだ。
 しかも、互いに見も知らぬ人間。
 何にしても、そんな冗談が許されるはずがない。
 「あなたねっ!」
 「だって、普通わかると思うけど。飲んでグデングデンにでもなっていたって言うならともかく、服だってちゃんと着たままだったでしょ?」
 「……………」
 ハッと自分の服を見下ろし、今は違う衣服に着替えているが、目が覚めてすぐ、着ていたものは昨日のままだったと、安堵に胸を撫で下ろしたことを思い出した。
 「ま、今は着替えてるみたいだけど、…さすがの俺も意識のない女を勝手に着替えさせるほど非常識じゃないからさ」
 非常識じゃない。
 どう好意的に考えても、ここまでの流れからしてすでに十分非常識な気もするが、そこはありがたいところなので無言に留める。
 「…でも、なんであたし、あなたと同じ部屋で寝てたんですか?」
 それも同じベットで、というやつだ。
 その質問に、男はあっさりと、
 「他に部屋がなかったから」
 「はぁ?!」
 疑わし気に顔を顰めるつくしをよそに、男は飄々とどこまでもマイペースに話を進めてしまう。
 「それにしても、あんたまたずいぶんよく眠ってたね?さすがに夕方には起きると思ってたのに、あんまりにもよく眠ったままだったから、やっぱりどこかまずいとこでも打ったのかとちょっと心配したかな」
 ちょっと…。
 やや言葉尻に引っかかるところはあるものの、さんざんぱら迷惑をかけておいて、つくしが言えた義理ではないのは間違いなかった。
 「それとも、今から病院行っておいた方がいい?」
 「いえ」
 「そ?別に遠慮しなくてもいいけど?」
 「大丈夫です、すみません。その…ここのところ少々寝不足気味だったので…」
 ここ数日、来たるべき勅使河原との対決や隼斗との離婚、そしてこれからの新生活のことなど、さまざまな心配や懸念にあまり眠れていなかったのだ。
 「ふぅん?まあ…いいけど。じゃあ、そういうことで俺、シャワー浴びてくるから。あんたは適当に冷蔵庫漁って、なんか飲み物飲みながらテレビでも見ててよ?」
 「え?」
 何がそういうことで…なのか、男がそれこそ適当なことを言い置いて、ヒラヒラと手を振り、さっさとシャワーへと向かってしまった。
 「……あ」
 他に部屋がなかった…というのは、ある意味男のウソだ。
 ざっと見たところ、一部屋どころかつくしが男と寝ていた寝室の他に、広い居間を除いても、2つ、3つ別に部屋があることはドアの数からしてあきらかだった。
 しかし、居間の惨状からして、他の部屋の状態も想像に難くない。
 かろうじて二人が寝ていた寝室はまだ耐えうる環境を保持していたが、それでも脱ぎ捨てた服やら本の散らばった床、テーブル類の状態からして早晩、居間と同じ状態になるだろうことは容易に推察できた。
 ということは、まだ覗いていない他の部屋に関しても同様なのだろう。
 鬼が出るか蛇が出るか…。 
 …まだ寒い季節で良かった。
 夏場だったら、見たくもないものをこれでもかと見ることになっていたかもしれない。
 「ひ~、ゴキブリとかわんさといそう」
 そんな想像をしたら、つくしはなんだか痒くなってきてしまった。
 …てか、昨日お風呂入ってないし。
 ため息を一つついて、再び作業へと戻る。
 男はのんびり寛いで的なことを言っていたが、さすがにそうもいかないだろう。
 …とりあえずはやりかけたことくらいは、終わらせちゃわないとね。




*****




 家主に何か飲んでいろ…と言われ、かなり躊躇したものの、山積みになったカップやらグラスを洗い終わった時には相当開き直ってしまっていた。
 そうでなくても、何が悲しくて赤の他人の家を片付けているのか、すでに当たり前の常識やら普通の感覚も麻痺していて、とりあえずは男がシャワーから出てくるまでは、よけいな疑問やら諸事雑事も横に置いておこうと覗いた冷蔵庫。
 …はぁ~やっぱりねぇ。
 「なんか飲んでろって、ほとんどビールとミネラルウォーターしかないじゃない」
 グッタリだ。
 それでもいったいいつからあるのか、酒のツマミらしいチーズやらクラッカーらしきものも多少は入っている。
 とはいえ…、
 「うーん、人んちで勝手に食べるわけにもいかないし…」
 とにかく空腹が耐え難い。
 元々つくしは規則正しい生活を習慣としているし、何があっても三度の食事だけは欠かさないタイプなのだ。
 「まあ、仕方がない、か」
 選択の余地もなく冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出して、勧められたテレビでも見るべく、先ほど自分が綺麗に拭いたばかりの革張りのソファへと腰を下ろす。
 「ちゃんと掃除さえしていれば、ここって凄い綺麗な部屋なのよねぇ」
 たぶんそれなりに有名なインテリアデザイナーを入れているのだろう部屋の内装は、豪華というよりお洒落で都会的だった。
 それに部屋の散らかりようからはわからなかったが、実はまだそんなに築年数の経ったマンションではないのではないだろうか。
 壁紙は真新しく、完璧な調和で配置された家具もまた同様。
 「ホント、信じられないわぁ…えっと、リモコンって」
 リモコンを探すのにまた一苦労しそうだとうんざりしたが、ざっとコーヒーテーブル周りを見回しただけで、意外にもすぐに発見できて、逆に驚かされてしまった。
 「お、あったあった」
 おそらくかなり頻繁に使用しているのだろう。
 これだけはと、キッチリとテレビ前のコーヒーテーブルのど真ん中にちゃんと置かれていて、探す手間をかけさせられずに済んだ。
 …はぁ~、テレビかぁ。
 つくしもテレビは嫌いではなったけれど、テレビ自体にあまり良い思い出がない。
 それというのも、テレビを観るという行為は、常に彼女の孤独と密接な関わりがあって、必要がなければあまり観たいものでもなかったのだ。
 屈託や葛藤とは無縁だった学生時代―――つくしの場合は高校二年生以前に限定されるが、勉強にバイトにと毎日が忙しかったし、隼斗との短い結婚生活でも兼業主婦の多忙さであまり観る機会に恵まれなかった。
 けれど一時期、司と離婚して隼斗たちと一緒に暮らすようになるまでの期間、依存性のようにテレビをつけっぱなしにしていた時期がある。
 何を観ていたというわけではなく、観たかったわけでもない。
 ただ人の声の代わりの意味合いが強かったように思う。
 賑やかな家庭で育った彼女にとって、無音の部屋というものが耐えられなかったのだ。
 …それに。
 道明寺邸に囚われ、勉強とテレビを観る以外、司の訪れを怖れていた時代を思い起こしかけ、………慌ててその昏い記憶を振り払う。
 「あ~、もう、やめやめ!」
 ブンブンと頭を振って、気分を切り替えようと、結局テレビのリモコンへと手を伸した。
 パチッ。
 ちょうどテレビに映し出されたのは、バラエティ番組の再放送のようで、どこかで見たことがあるような芸人たちが入り混じり、派手なパフォーマンスをしながら鬼ごっこのようなものをしていた。 
 興味がないなりに、それでも手の中のリモコンを手慰みに転がして、観るともなくテレビに見入る。
 「へぇ、牧野ってこういうの観るんだ。俺もけっこう好き」
 「へ?………あっ」
 気配もなく突然背後からかけられた声に、つくしが驚いて飛び上がった。




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0385 】へ
  • 【愛してる、そばにいて0387】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0385 】へ
  • 【愛してる、そばにいて0387】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘