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「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0381

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 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ
 荒ぐ自分の息遣いばかりが耳について煩い。
 酷使しすぎた肺と心臓が軋んで悲鳴を上げるのを無視して、司は走り続けた。
 心地よい温度に調整された邸内、しかし全力疾走をしていればいやでも熱が上がり、まるで真夏の最中の屋外にいるかのように汗だくになって、縦横無断に屋敷内を探し回る。
 『少しだけ、一人にしてくれと言われて、お一人にしてしまったんです』
 これまでつくしは門扉が開いていても、一人で外出することがあっても逃げ出したことがなかった。
 それはそうだろう。
 一見一人になっているかのようでも、必ずそこには司なり、使用人なり、英徳学園の生徒たちなり、司の息がかかっている人間の目があったからだ。
 そして、何よりたとえつくしが実家に帰ったとしても、親たちさえも彼女が司の許可なく逃げ帰ったのだと知れば、追い返されるのがオチだろう…いや、少なくても彼女がそう思っていたことはたしかだった。
 司は一度たりとも、彼ら、つくしの家族を盾に彼女を脅しつけたことはない。
 しかし、学園内での彼の強大な支配力を見せ、邸内での権力、果ては警察への影響力まで見せつけていれば、どんな愚か者でも自分の非力と司の力を思い知ったことだろう。
 ましてや、つくしは赤札によって数々のイジメを受けて、司自身によっても恐怖を植え付けられてしまっている。
 無意識の意識で、それを利用して、司は彼女を半ば屋敷内に監禁していたのだ。
 恐怖という名の檻と鎖で幾重にも縛り付けて。
 「どこ行きやがった」
 おかしいくらいに、声音が震えいるのに気がついて、司は今自分が感じている恐怖を自覚する。
 …あいつにはどこにも行くところなんてねぇんだ。
 ただでさえ、精神的に追い詰められ、肉体的にもギリギリな状態の彼女がどこへ行けるというのか。
 こんな時に限って、屋敷内を取り仕切っている家令と連絡がつかずに、使用人一人一人に言付け指示を出さねならず、その手間と時間の経過に焦燥して歯噛みしていた。
 バタバタと足音荒く走り抜けた司を、通りかかったメイドが見かけて、ギョッと立ち尽くす。
 「おいっ」
 「は、はいっ!?」
 「牧野は見つかったか?」
 「…ま、牧野様ですか?」
 その反応の鈍さで、相手がいまだ行き渡らない連絡網から漏れた人間だと気がつき、司が舌打ちをする。
 「牧野を探せ。…いなくなった」
 「え?でも、牧野様でしたら…」
 指示を出し、走り出そうとしていた司が足を止め振り返る。
 「どこだっ、どこにいるっ!?」
 「エ、エントランスの方に」
 恐ろしい剣幕の司に顔を青褪めさせ、メイドが後退る。
 「エントランスぅ?」
 たしか、彼女が消えたことに気がついて司が真っ先に連絡をとったのが、屋敷外に出るのに一番容易いルートである正面玄関―――エントランスの方だったはずで、当然のこと真っ先に捜索させていた。
 当番のメイドやSPが確認して、つくしの姿はなかったことはすでに報告されている。
 その後も、つくしが現れれば、その場で呼び止められていたはずだ。
 「別館にお戻りになるのに、迷われて正面に出てしまったとおっしゃられて…」
 別館の方向からではあまりに遠大な距離に、敷地外に出るのは不慣れな人間では無理な話だ。何度も周辺を散歩して、道明寺邸の広大さなど、つくしだとて十分わかっているはずだ。
 つくしは愚かな女ではない。
 …それならば。
 大回りかっ。
 邸内と敷地外に出るのに近い出入り口ばかりに気を取られ、方向違いの出口への注意を怠ってしまっていた。
 鬼ばかりの隠れんぼで勝とうとするならばどうすればいい?
 すぐに答えが思い浮かんだ。
 一時的に邸内のどこかしらに隠れて、出口への関心が反れた頃を見計らって逃げ出すのが一番だ。
 あるいは―――、
 「外からか」
 いくら広い敷地とはいえ、建物を基点に外周を回ればいやでも迷わずに正面に出ることは可能だ。
 司がつくしの脱走に気がついて、邸内や門前へと使用人たちを集中させたことで、その他への注意は疎かになっていた。
 その隙に、つくしが外へと出たとしたら。
 そして、ちょうどその彼女が外周を大回りして一周した頃には、すでに探し回ったところへの警戒は薄くなる。
 いわば鬼の後ろからついて回って、脱出を図るつくしの意図に司も気がついた。
 おそらくつくしはそうしたタイミングを図って、門前へと向かうつもりなのだ。
 「正面付近をもう一度捜索させて、牧野を探させろっ」
 「ぼ、坊ちゃん」
 呼び止めるメイドの声を無視して、再び走り出す。
 ふいに脳裏につくしの泣き顔と声が蘇る。
 『何もいらない、あんたからは何一つ欲しくないの。お願いよ、もうあたしのことを解放して』
 …逃がさねぇ。
 …絶対に捕まえる。
 苦しい、辛い、哀しいと訴える女の泣き顔にかき口説き、司は心の内で唱え続ける。
 驚いている使用人たちを無視して、正面玄関のドアを開け放ち、雨の降りしきる外へと飛び出して、司は闇夜の向こう、屋敷の敷地内をグルッと見回し透かし見て、周囲に目を凝らしてつくしの姿を懸命に探した。
 「………っ」
 小さな悲鳴のような声が聞こえた気がして、屋敷の外壁の一角、玄関へと続く2階のバルコニー部分へと視線を向ける。
 …いたっ。
 「牧野っ!!」
 「いやああ、来ないでぇっ!!」




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