「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0380

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 何度となくされたつくしからの拒絶。
 泣き咽ぶ女の悲痛な泣き声と涙に濡れた顔に、憐れみと…そして、憎しみを感じる。
 けっして自分のものになろうとはせず、彼の切ない想いを欠片とも斟酌してくれようとしない女の強情さに。
 …どうして、こいつは。
 自分を愛してはくれないのだと。
 類を見て、類に微笑んだあの顔を自分にはくれないのか。
 どんな人間もどんな女も、誰もが彼を敬い、崇め、彼の関心を得ようと躍起になるというのに、つくしだけはそんな彼を否定し、彼をいらないと拒絶する。
 可愛さ余って憎さ百倍というが、それは司にとってのつくしへの想いそのもの。
 つくしを好きになれば好きになるほど、彼女を欲しいと思えば思うほど、自分を省みようとはしてくれない彼女が憎らしくて…。
 泣いていれば笑わせてやりたい。
 抱きしめてやりたいと思う彼の心を、当のつくしが拒絶して、守ってやりたいと伸ばした手を振り払うのだ。
 ドロドロとしたものが口をついて出る。
 「愛人…それの何が不満なんだよ?」
 「……っ」
 それでも絞り出した声音は、みっともないくらいに掠れて震えていたことを彼女は気がついていただろうか。
 「お前みたいなド庶民で、なんの取り柄もないような女を、俺みたいなステータスの男が見初めたんだぜ?たとえ愛人にするんだとしてもどこのどいつだって、幸運だって言うに決まってる。…お前の母ちゃんや父ちゃんだってそうだろ?!」
 滑り出した口は止まらない。
 何度なく後悔に苛まれ、そしてすべてを打ち壊してきたというのに、司は自分の感情を堪えることができなかった。
 それこそが罪だったのだろう。
 そして、同時に罰だったのかもしれない。
 自らの不明によって引き寄せた当然の破綻と軋轢。
 俺の気持ちをわかってくれ、受け入れてくれと望むばかりで、他人の心を慮ることできない子供の心のままに成長してきてしまった彼にはわからなかった。
 これほどにこんがらがってしまった彼女との関係を紐解く方法が見つからない。
 「親の面倒も見てやる。弟だっていいガッコに入って、望めねぇはずのウチみてぇな大企業に入れてやるさ。前途洋洋ってやつだ。姉ちゃんのお前に感謝するに決まってる。それもこれも俺だけがお前にしてやれるんだ」
 「………ハッ……ぅ」
 つくしの涙は止まらない。
 泣きじゃくるつくしの体に…縋り付いて司はかき口説き続ける。
 彼にはそれしかなかったから。
 
 「お前だってそうだ。ガキ産んで、若奥様って呼ばれて、何不自由なく暮らせるんだぜ?なんでも手に入る」
 自由以外のすべて。
 他の男を愛して、自分の人生を生きる自由以外の、すべてを。
 「ちゃんと大学にも行かせてやる。ガキの面倒はメイドに見させればいいんだから、お前には何一つ不自由させねぇ」
 「…ぁ……ぅ………ぁあ」
 



*****




 結局、疲労が色濃く体調不良が目立つつくしの為に、司は人手のない別館に帰ることは控えて、本館に戻ることを決めた。
 当然、つくしもそれに否やを唱えるはずもない。
 ひとしきり泣きじゃくって、それで気が済んだというわけもなかっただろうけれど、結局平行線のまま、車が屋敷に到着して話は立ち消えとなった。
 泣こうが喚こうが、司が彼女に執着して手放すつもりがない以上、つくしはこの屋敷に戻るしかなかったし、彼は彼で同じ主張をし続けるだけだ。
 …お前は俺から逃げられない。
 …何があっても、俺はお前を離さない。
 さすがに、つくしもそのことは身に染みている。
 そうであれば、諦めるしかなかったのだろう。
 スンと鼻を鳴らして涙を拭った後は、再び無表情の仮面を身に付け司の意思のまま、促されるままに屋敷の玄関を大人しくくぐって、メイドへと引き渡された。
 どちらにせよ、つくしにはどこにも行くところもないのだ。
 親さえも、彼女の味方ではないのだから。
 「さっきの話はまた後だ。とりあえず衣裳室行って、メイク落として着替えて来いよ」
 もちろん笑顔などあるはずもないが、無言のまま頷くだけの彼女の返事は特に珍しいことではなかったから、司も今更何を思うこともない。
 それでも別館で過ごした数日は、ほとんど二人っきりで過ごしたこともあっただろう、それなりにつくしも返事を返していたし、彼との会話に応じることさえもあったというのに。
 それだけに…またも元に戻ってしまった―――戻ってしまったような彼女の態度がひどく寂しく…やるせないものに感じて、司は自嘲する。
 不思議に彼女のことを腹立たしいとは、もう思わなかった。
 言い争っている時にはあれほど憎らしく思ったのに、冷静になってみれば凍えるような哀しみと…自覚がそこにあるだけだ。
 彼女に好かれない、愛されない自分を憐れみたくてもそうできない。
 気づきたくなかった真実。
 いつか彼女は自分の手に入るのだと、彼の素晴らしさとその彼に見初められた幸運に気づきさえすれば、つくしは自分に振り向くに決まっているのだと信じていたかったのに。
 すべての可能性を摘んでしまった、自らの癇癪と身勝手さで。
 …全部、俺のせい、自業自得ってか。
  どれだけ手繰り寄せても、元から結び目のない糸は解けて、気を抜けばすぐに指先からすり抜けてしまうものなのか。
 どうして、この女なのだろう。
 自分ではなく他の男に岡惚れて顧みない女などさっさと見限って、いくらでも容易に手に入る女たちを選んで、自分には見合わない女だったのだとつくしを思い切れるならば、きっと彼女にとっても幸いなのに違いなかった。
 …それでも、お前を諦めらんねぇ。
 どう諦めていいのかわからない、いや、諦めたいとさえ思えなかった。
 「俺も…先に部屋行って着替えてくっから」




******




 カチコチ、カチコチ。
 妙に耳につく時計の音に、よけいにイライラして、司は物に八つ当たりをして晴らしたくなる気持ちをグッと堪えて落ち着かせる。
 何気なく外を眺めた先に、まるで鏡面のように映った自分の顔を見つけ、大きく息を吐き出した。
 「…なに、不安そうな顔してやがんだ」
 口に出してみて、初めて今、自分が感じているイラつきの原因に思いあった。
 彼は不安なのだ。 
 つくしをメイドたちに引き渡して、一人部屋に戻ってまだ30分ほどか。
 女の身支度は時間がかかる。
 この場合は逆の手順だったが、一人では着替えにくいドレスを脱いで、化粧落としをするだけでもそれなりの時間がかかるのは、姉がいる男の司でもわかることだ。
 それなのに、なかなか戻ってこないつくしのことが妙に気にかかって仕方がない。
 屋敷に帰る直前まで、言い争いにもならない争いをしていたからか、それとも…。
 「クソッ」
 どうしても、胸騒ぎを収めることができずに、司は足元のソファをドカッと一蹴りして部屋を出た。
 つくしのいるはずの衣装部屋に向かおうとして、すぐ角の向こう、つくしの世話をしているはずの衣装部屋担当のメイドが、こちらに向かっているらしい姿を見つけて怪訝に声をかける。
 「おいっ」
 「ぼ、坊ちゃん」
 焦ったようにあちらこちらを見回していた女が、司の顔を見上げ真っ青に顔色を変え、怯えたように引き攣った声を上げた。
 「牧野は…」
 司が言い切る前に、
 「牧野様がっ、牧野様がっ!どこにもいらっしゃらないんですっ!!」
 「!?」

 


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