「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0371

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 …やべぇ、けっこう手間取っちまった。
 ざっと、つくしを引き合わせなくても構わない相手に一人で挨拶をし、彼女の元へと戻ろうと思っていた司だったが、そう彼の目論見通りにはいかなかった。
 よりによって母親とわりに親しい人間に出くわしてしまい、噂話程度のみならず、直接楓の耳につくしのことを入れることはまだ避けたかったので、よけいな手間と時間を取って返って誤魔化すハメになってしまった。
 …ババアにアイツのことを知られるのはまだ時期尚早だしな。ま、一度に全部っつーわけにはいかねぇから、しょうがねぇか。
 司がつくしをパーティに同伴したのは、社交界にこの人ありと謳われるような人物に、彼女の存在を誇示するという目的もあったのだ。
 めぼしい人物につくしを同伴して挨拶回りをし、顔と名前を周知するはずが、のっけから司の母親の親しい人間と出くわしたことで、中途半端のまま目論見はご破算になってしまった。 
 しかし、たとえつくしを直接誰それに引き合わせなくても、これまで家族以外の女性を同伴したことがない彼が連れ歩いた、その事実だけでも十分なインパクトではある。
 いずれは彼女が自分の子供を身篭っていることもアピールし、外堀から埋めて、自分とつくしの仲を親にも認めさせるつもりだ。
 さすがの鉄の女にも、金だけでは解決できないこともある。
 ましてや、当の司自身が隠蔽どころか自ら誇示しているとなれば、そうそう握り潰せることではない。
 もちろん、未成年でいまだ社会的に地位を確立していない彼が、母親やその母親に付随する強大な権力に、一人で抗えるものではないことはわかっている。
 時期とタイミング、そして誰と誰に会って、どれだけの人間にどう根回しができるか、それが重要だ。
 準備も出来ていないうちに真相が楓に洩れてしまえば、彼の思惑通りに事が運ばないどころか、司にとってのすべて―――つくし自体を奪われることになりかねない。
 良くて大河原家側にバレないうちにと、秘密裏につくしとその子供を隠されてしまうか、悪くすれば彼女とその親に金を握らせ黙らせた上で堕胎を強要し、司から永遠に引き剥がす。
 …ふっ、牧野にとっちゃ、そっちの方が望むところか。
 思い当たって、司が皮肉に自嘲する。
 あるいはつくしを孕ませた以上は、彼女を隠して堕胎できない週数まで待ち、母親の勧めに従って家の都合で選ばれた女と結婚することを条件に、つくしを愛人として囲う方が遥かに容易だし得策なのだろう。
 そうしたことが、司の脳裏を過ぎらなかったわけではなかった。
 彼とて親の権力の強大さは十分に理解していたから。
 だからこそその親に反抗するのではなく、これまでさんざん世の中に八つ当たりをして、鬱憤を晴らしてきた。
 それを今更逆らうなど愚の骨頂で、いかにも手強すぎる相手に違いない。
 それでも、そうすること―――結婚ではなくつくしを愛人にすることを選べば、永遠に自分の望みが叶うことがないだろうことを、司は本能のどこかで察していた。
 …つーか、そもそも気味が悪くて、身も知らねぇ女とヤりたくなんかねぇし。
 司自身、自分でも時々どうかしてると思わなくもなかった。
 しかし、つくしと出会うまで、彼は潔癖すぎるほどに潔癖さで女を厭い、どんな女も抱きたいと思ったことがなかった。
 もちろん彼にも、当たり前の欲望…年相応の性欲はある。
 しかし、そうした欲望と生理的嫌悪とを天秤にかけて、嫌悪感の方がより優っていたというだけのこと。
 そんな男が、政略結婚などできるはずもない。
 「…しかし、あいつらどこ行ったんだよ」
 あちらこちらと見回し、つくしたちの姿を探すが一向に見つからない。
 もちろん、あきらが司の許可もなく、つくしを連れてパーティを抜け出すとも思えないが、どうやらいつの間にか二人は移動してしまったらしく、とうのあきらの姿さえも見えなかった。
 会場内で電話をするのはマナー違反だ。
 だが、どこか人目のないところで連絡を取るかと思いつつ、司は実行しあぐねていた。
 どちらにせよ、彼らがこの広い会場内のどこかにいることはわかっている。
 …面倒臭ぇな。
 と―――、
 「ど、道明寺さんっ!!」
 女の呼び止める声にチラリとも振り返らず通り過ぎようとして、何気なく流した視線の先、なんとなく見覚えのある女の顔に、司は怪訝に足を止めた。
 …誰だ?
 声をかけはしたものの、あまり期待していなかったのだろう。
 目を留め立ち止まった司の姿に、左右に友人らしい女たちを従え、三人できゃあきゃあ歓声をあげて喜んでいる。
 さして司にとっては珍しくもない光景。
 司が不機嫌に顔を顰める前に、喜色満面リーダーらしいその女が燥いで歩み寄ってきた。
 「お久しぶりです、道明寺さん!やっぱりこちらのパーティに参加されてたんですね」
 「西門さんたちに続いて、道明寺さんにもお会いできるなんて、わたしたち凄いラッキー」
 「最近、道明寺さんは学校にいらしてなかったから、ここでお会いできてとても嬉しいです!!」
 女たちの話から、どうやら英徳の学生だと見当をつける。
 「…学校ってことは、お前ら牧野のこと知ってんよな?」
 司にとって彼女たちの声掛けに答える価値があるとしたら、つくしとの繋がりがあるというその一点だけだ。
 彼の足を止めることができたことを喜んでいた女たちも、司の口から飛び出した名前に一瞬で顔を顰めて顔を見合わせた。
 それをイライラと眺めて、司が重ねて問いかける。
 「どうなんだよ?牧野の顔知ってんのか、知らねぇのかどっちだ?」
 「…あ、はい。あの、私たち、牧野さんと同じクラスですから。ねぇ?」
 「ええ」
 「はい」
 リーダーらしい前髪をトサカ立てた女に、他の女たちも口々に同意する。
 「牧野、連れて来てんだけどよ。どうもハグれたみたいなんだわ。お前ら見てねぇ?」
 「道明寺さんが、牧野さんを連れていらしたんですか?」
 「ああ」
 司の返答に女がムッとしかける。
 しかし、すぐにそんな表情を潜めて、気味の悪い愛想笑いでニンマリと笑う。
 そのどこか悪意を含んだ醜悪な顔に、イヤな既視感を覚える。
 「…そうだったんですか。あの人ったら、相変わらず、なんですね」
 「相変わらずってなんだよ?」
 眉根を寄せた司の冷たい視線に一瞬たじろいで、女はわずかに顔を青ざめさせたが、それでもその口は止まらない。
 さすがに司の腕に手をかけたりすることは控えて、連れの女たちも後退っている。
 悪意の滲んだニヤけた顔を片手で隠し、いかにも心配げな声音を作って女が毒を吐く。
 司の心臓を毒して心を蝕む言葉を。
 「道明寺さんは騙されてるんですわ。あれほど、私たちが忠告いたしましたのに」
 「………………」
 「今回は西門さんや美作さんもいらっしゃいましたけど、牧野さんったら花沢さんとご一緒でしたのよ。もう触れなば落んといった風情で、こう…花沢さんの腕に手をかけて、うっとりと見つめたりなんかして…、もう本当に見苦しいったら」
 「…………類と」
 絞り出した声はみっともないくらいの動揺に、小さく掠れていた。
 目の前にチカチカと赤い火が点滅する。
 ダメだと思う理性と、赦せないという激情との狭間で司の心が揺れ動く。
 「花沢さんは花沢さんで、静先輩がフランスに行かれたものだからヤケになられてるんでしょうねぇ。そうじゃなきゃ、あんな人と…いえ。二人でジッと見つめ合ったりして、傍目に熱々の恋人同士のような雰囲気でしたわ」




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