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「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0370

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 「それとも、なにか?お前が床に手ぇついて、俺に土下座でもして頼むか?牧野」
 司の嘲る言葉に唇を震わせ、つくしが視線を伏せる。
 あきらかに屈辱を感じているのに、これまでのように反抗的に対抗するのではなく、自分の非力をすでに思い知って、しかし、屈する自分になお傷ついてるのがあきらにも…傷つけている当の司にさえもわかった。
 間に入ろうとあきらが口を挟む。
 「おい、司」
 「……わかった」
 「あ?」
 唇を噛み締めていたつくしが、大きく深呼吸を繰り返したとみるや、ソファから立ち上がって…そしてすぐさま床へと座り込みかける。
 とっさに、司がその腕をとって止めなければ、本当に彼の言うとおりに床に手をつき土下座していただろう。
 すでに膝は折れ、床に伏せかけていた。
 「バカ野郎っ、何をする気だ、お前っ!」
 「…なにって、土下座」
 怒鳴りつけた司の勢いに怖じけて、つくしがわずかに身を引いて、先ほどとは異なる理由で体を震わせ顔を青ざめさせている。
 「ふざけんな!こんなところで土下座とか、お前、アホかっ。俺に恥かかせる気かよっ」
 自分が土下座をしろと命じておいて、恥をかかせるなという勝手な言い草に、さすがのあきらも呆れて、司を叱咤する。
 「いい加減にすんのはお前だろ、司。むやみに牧野にあたって、お前は何がしたいんだよ」
 もちろん司のつくしへの気持ちを揶揄しての言葉だ。
 取られた腕をそのままに、すっかり元の拒絶した顔で司からそっぽを向いてしまっているつくしの様子に、司も頭が冷えて、掴んでいた手をゆっくりと離す。
 「…とりあえず、座れ」
 逆らう無益を心にも体にも染み込まされているつくしだ。
 どれだけ葛藤があるか。
 それでも諦めた顔で、命じられた通りに立ち上がってソファへと戻る。
 「じゃあ、どうすればいいのよ?土下座もダメだと言うのなら、どうしたら和也くんへの赤札を撤回してくれるの?」
 「……………」
 自分の非を認めているのに、素直に謝ることもできずに、司は言葉に詰まった。
 いや、もしかしたらその場にいたのがつくしだけで、あきらや外野がいなければ、素直に謝罪ができたかもしれない。
 しかし、結局、司はムクれた顔で意地を張ることしかできなかった。
 思うように自分をコントロールできない苛立ちと、バツの悪さといった馴染まぬ様々な感情を処理しきれず戸惑ってもいたのだ。
 「牧野、安心しろ。どちらにせよ、司が登校してないことで赤札のイジメも下火になってんだ。俺ら…俺も総二郎も今まで率先してやってたわけじゃねぇし、類は言うに及ばずだ。過熱するのは、やっぱ司が熱入れてる時くらいだったからよ。…まあ、無視や物を隠すくらいのことはされてるかもしれねぇけど、お前ん時ほど派手にはやられてねぇと思うぜ?だいたいあいつ、相当図太そうだから、それくらいなら大丈夫そうだぞ?」
 おそらくつくしの気を引き立たせるためだろう。
 あきらはあえてことさら明るく茶化したのだが…。
 「バカなこと言わないでよ…そんなの苛める側の勝手な言い草じゃない」
 「牧野」
 「………」
 「どうして、やられもしてないあんたにそんなこと言えるのよ。どれだけやられた人間が辛くて、苦しいかなんて、イジメる側のあんたたちになんか絶対わかんない。たとえ笑って見せてたって、心で泣いてるの」
 「……………」
 「……………」
 自分のことでは滅多に泣くことがなかった彼女の涙声に、男たちが言葉を失う。
 他人を虐げることで自分たちの憂さを晴らし、あるいは八つ当たりしていた彼らとは違い、他人のために涙して、他人のためにプライドを捨てて土下座までしようとする女の優しさと哀しみに、ないはずの憐れみが心に沁みて胸が痛む。
 「チッ、わかったよ。あいつの…青池和也の赤札は撤回する」
 「司」
 「……………」
 「お前のも」
 ついでのようにボソリと司が呟く。
 「だから…泣くな」 
 そっぽを向いたままのつくしの頭をクシャクシャッと撫でかけ、美しく結い上げていることに思い当たって、司はその手を彼女の肩へと移し、グッと掴んで離す。
 「はぁ~」
 片手を額にあて、思いっきり大きく息を吐き出すあきらに司が怪訝に顔を向けた。
 「なんだよ、お前?」
 「……いや、いろいろな」
 「は?」
 あきらはあきらなりに感じることがあったらしい。
 しかし、こんなところでそれを詳しく話すつもりもないのだろう。
 「それよりお前、こんなところで燻ってていいのか?江原さんとか松坂さんにさっき挨拶してきたけど、お前とまだ顔を合わせてないって探してらしたぞ?高浜さんんとこはまあ、牧野連れて行ったらしいけどよ」
 「…ああ」
 誰のことだか思い当たって、司がつくしを振り返る。
 …連れてゆくか。
 しかし、つくしはさっきの司たちとのやりとりで落ち込んでしまった気分を、まだ引きずっている。
 とてもじゃないが、知らない人間と挨拶だけとはいえ会話したい気分ではないだろう。
 それにいくら顔を周知させることが目的とは言え、誰彼かまわず見世物よろしく引き合わせなければならないというものでもない。
 できるだけ社交界に顔が効き、影響力のある人間、伝播力のある人間につくしを印象付ける必要がある。
 江原や松坂もそうした人間たちに相当するが、わりあいパーティ会場では顔を合わせる人種なので、今日無理をさせてまで顔合わせをしなくても、新年会やら何やら、あるいは司自身の誕生日の前までにまた会う機会もあるだろう。
 …ま、興味があれば、自分から見に来るだろうしな。
 「あきら、お前パートナーは?」
 「ああ、今日はピン」
 あきらの相手は大概不倫相手ばかりなので、こうした席で連れてくる女は付き合ってる女ではないことがほとんどだ。
 それでも相手には不自由していないのだろうが、現地調達を目論んであえて連れてきていないことも少なくない。
 しかし、それにしても少し早いとは言えクリスマス・パーティの席で一人とは珍しい。
 そうしたことを、司の表情だけで読み取ったあきらが複雑そうな顔で笑った。
 「今日は何人か関係のあった女が出席してて、バッティングしそうだったからさ」
 「……はっ」
 相変わらずの爛れた女関係に嘲笑う。
 ようは下手に女を同伴して、三竦みの状況を避けたというところなのだ。
 「あんがいクリスマスをピンで寂しく過ごすのが嫌で、女同士でこうしたパーティに参加してる女も少なくないし、その女を狙ってピンで来る男もいるわけよ」
 勝手にしろと鼻を鳴らし、司はソファから立ち上がった。
 「それならあきら、お前、しばらくここに居ろ。…俺はちょっと挨拶回りしてくっから牧野、お前もここであきらと飯でも食って少し休んでろよ」




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