「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0368

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 ギョッと驚くつくしをよそに、得意満面にこやかな笑みで司が相手の勘違いを肯定する。
 ―――いや、勘違いではない。
 まさに、司にとって自分が口にしているのは嘘偽りのない事実なのだ。
 たとえ、相手が想定している人物との間に、激しい齟齬があるのだろうと、そうでなかろうと。
 「おお!やっぱり、そうなんだね。会場に君が入ってきた時から、皆の噂になっていたからね。君が恋人を連れてきたようだ、と」
 後退る素振りで後ろへと体を引くつくしの手をぐっと握り直して抑え、司が宥めるように何度か握ったその手の力を弱めたり、親指の腹で撫でたり慰撫して励ます。
 「そうか…おめでとう。…私は私的に大河原さんとの付き合いはないんだが。これからは君に仲介を頼めるね」
 「それは、どうでしょうか」
 相手は謙遜ととったようで、
 「おいおい、頼むよ」
苦笑して、困惑しているつくしへと改めて向き直った。
 「初めまして、だね。大河…」
 「牧野です」
 「………ん?」
 相手の言葉に被せるようにして、司が紹介する。
 「なんだい?」
 「彼女は牧野つくしです。ぼくの婚約者の」
 「は?」
 ポカンと司を見て、もう一度つくしを見て、再び司の顔を見た男の顔は、あきらかに予想外のことに驚いて言葉を失ってしまっている。
 それに太々しくニヤリと笑いかけ、司が一礼する。
 「あまりぼくが高浜さんを独り占めしてしまっていては、他の方たちに申し訳ないですから、またあらためてご挨拶に伺うことにして、今日のところは…彼女とこちらのパーティを楽しませていただいてよろしいですか?」
 「あ、ああ、も、もちろん」
 海千山千の経済界人だ。
 驚いてはいたが、すぐにその驚きを隠し、にこやかさを取り戻してつくしへも社交辞令を発揮する。
 「牧野さん、君も楽しんでください」
 突然回ってきたお鉢につくしは躊躇いつつも、元来生真面目なタチで、愛想よく挨拶をされて無視をできるような女ではないから、つくしも失礼にならない程度に挨拶を返す。
 「…はい、ありがとうございます」
 「高浜さん、道明寺君っ!」
 見計らったように二番手が、割入ってくる。
 おそらく相手は今日のパーティの主催者である高浜だけではなく、司にも声をかけたい魂胆だっただろう。
 しかし、軽く会釈を返して、司はその相手の試みをあっさりと交わして別の場所へ。
 この機会に彼と既知になりたいとワッと寄ってきそうな連中を無言の威圧で下がらせ、会場の一角へと移動する。
 ビュッフェスタイルの料理が、ズラッと並ぶカウンターのほど近くのソファへとつくしの手を引き導いた。
 「ここ、座って」
 否やを言わせる間もなく座らさせてしまう。
 「足、平気か?」
 「…それは、まだなんとか」
 「ふぅん?ならいいけどよ。少しでも痛みがぶり返すようだったら言えよ?」
 「………うん」
 一応、屋敷を出る前に主治医には診察させて、厳重にテーピングさせていたから、歩き方も不自由さは感じられない。
 しかし、つくしは多少痛いからといって容易に不平不満を口にするような女ではなく、ギリギリまで我慢してしまうタチなのは、他人の心の機微に疎い…というよりも傲慢に無視する傾向にある司にしても、ここ数ヶ月の彼女との密度の濃い付き合いでわかるようになっていた。
 「…あの」
 「ちょっと、ここで待ってろ」
 そしてそのままそこにつくしを残して、ビュッフェテーブルへ。
 ヒソヒソと内緒話をしてはチラチラと自分を伺う連中をガン無視して、あれこれと今の彼女でも食べられそうな料理を皿に盛って、オレンジジュースのグラスと一緒につくしへと差し出せば、つくしも条件反射で受け取るが、さすがにすぐにむしゃむしゃ食べだすということもなく、あきらかに手の中の皿を持て余して落ち着かない様子だ。
 司が今日のパーティにつくしを連れ出したのは、彼女の気分転換も一つの目的だったが、その他に彼女を周囲に周知することや、そのことに伴い以前までは上辺の付き合いに終始して避けていた人間と接触する目論見があった。
 しかし、それらのことを別としても、元々彼にはパーティ等の社交場で果たさなければならない役割がある。
 まだ学生で、会社の経営には直接関わらされてはいなかったものの、本来なら総帥である父の妻である母が果たすべき役割の一つ、日本においての道明寺家の顔繋ぎを課せられていた。
 普段もただ漫然とパーティを楽しみ、自分の立場に悦に入っていたわけでもなかったのだ。
 荒んで投げやりになってはいても、それなりに負わされていた責任の重みと役目。
 …やることやっとかねぇと、それはそれでうぜぇことになるしな。
 それらさえ定期的に果たしていれば、とりあえず両親は何も言わなかったから、これまでの彼にとってのそれらは、自由気儘に親からの干渉を避けるための必要であり、惰性だった。
 そうした事情もあり、司としてはいつまでもずっとここでジッとして、燻っているわけにはいかないのだが。
 とりあえずは…と、ドカッとつくしの横に腰を下ろして、料理を食べろと促す。
 「食えよ。そんなにまだ腹減ってねぇかもしれねぇけど、吐き気だなんだとまとめて食えねぇ分、小出しに食っておかないと、お前、かえって具合が悪くなるだろ?」
 「……う…ん」
 ここのところのつくしの体調不良は、おそらくつわりの一種なのだろうが、拒食と過食を繰り返していた。
 もっとも過食とはいっても、元々の食べる量が少ないのだ。
 以前のもりもりと、小柄な体に似合わぬ量を楽しそうに食べていた彼女の面影も今はない。
 「あの………」
 司が無言で見返せば、怖じけたように小さく仰け反って、それでも珍しく自分で話しかけてきただけあって、つくしにはよほど言いたいことがあったらしい。
 いや、言いたいことではなく、聞きたいことか。
 「…あの、さっきの人。高浜さん?」
 「ああ」
 「さっきの人に、あたしのことを婚約者って…」
 「ああ、本気だ。お前の親にも話しただろ?」 
 予想はしていただろう。
 しかし、覚悟はできていなかったのか。
 つくしは息を飲み、二の句を継げない様子で、次の言葉を探して視線を彷徨わせた。
 だが、結局はいつものように俯き、ボソボソと小さな声で言葉を継いだ。
 「………婚約、だなんて、そんな…どうして」
 「どうして?お前まだわかんねぇのかよ?!」
 いまさらそんな問を言い出す、つくしがもどかしく腹立たしい。
 …好きだって、言ったじゃねぇか。
 たとえつくしにとっては、どんなに過酷な状況下であったにしろ、司の主張は一度たりともブレたことがない。
 ただお前が欲しい。
 お前は俺のものだと嘯いて、そのためならなんでもしてやると何度伝えても、どうしてこの女はそれを理解しようとしないのか。
 「お前は絶対に、俺から逃げられねぇってことだ」
 「……………」
 「お前を俺から逃がさねぇためなら、婚約だって結婚だってなんだってしてやる。それにお前の腹…」
 「お、司じゃねぇか。今日、来るって言ってたから、どこにいるのかと探してたら、こんな隅っこにいたのかよ」




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