「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0365

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 「この辺を散歩すんのも今日が最後かもな」
 「…え?」
 「朝はともかく、やっぱり明日からも数日雨みたいだし、どのみちパーティがあるから、その仕度でそれどころじゃねぇよ。クリスマスが終わった後は本館に戻るつもりだしな。そうしたらもう一々このへんまで来て散歩することもねぇんじゃね?」
 「………そう」
 大した距離ではなかったが、それでもあっちへウロウロこっちへウロウロ、あてどもなく花や木を見て、ポツリポツリと会話をして、それでも少しは気分転換になっていたらしい。
 本館へ戻ることを聞いて、つくしの顔がわずかに曇ったように見える。
 最低限の人間しか入れていない別館での生活は、大勢の人間に傅かれ、手足の上げ下ろしさえも使用人達がやってくれる環境下で生まれ育った司には不便に思える。
 まさに気分転換程度ならばともかく、長期間というのは考慮の外だった。
 しかしどうやらつくしは違うらしい。
 たとえ毛嫌いしている男と、ほとんど二人っきりの生活でも、大勢の衆目に晒され、プライバシーの皆無な生活よりもマシなのだ。
 …別にもう少しくらいここにいてやってもいいけど。
 だが、そろそろNYの両親から司の渡米の話もチラホラ出ている。
 先日の大河原財閥令嬢との婚約話は突っぱねたものの、その程度のことであの母親が諦めるとも思えず、間を置かぬ婚約発表記事といい、司の意を無視してさっさと周囲を固めようという意図が丸見えだった。
 …それならそれで、こっちも勝手にやらせてもらう。
 来月の司自身の誕生パーティ、これには多忙な両親や姉の椿も揃って帰国し、一族の威容を見せつける一大行事となっている。
 いきなりつくしを登場させて度肝を抜いてやるのも一興だが、彼女がいま妊娠中なのを考慮すれば、いきなりハードな展開が予想できる場へと引き出すのも考えようだったし、ネットで検索したところによるとさまざまな事情での体調変化やトラブルも鑑みられる。
 それならば、あらかじめいくつか大規模なパーティにつくしをパートナーとして同伴させて、鬼の居ぬ間ではないが、うるさ方の母親が日本にいないうちに地固めを兼ねて、自分の意思を周辺に知らしめようという意図だった。
 道明寺家の御曹司が選んだ女として、つくしを披露して、おしゃべり雀たちの脳裏に焼き付け、広めさせ、周知するのだ。
 そして、パーティでの司の本来の役目、将来の後継者として顔繋ぐだけではなく、政敵を見定め牽制する役目を逆手に取り、楓に侮られて彼がマークされていないうちにそうした連中と接触を持つ必要があった。
 …俺はババアどものいいなりになんかならねぇ。
 これまで無意味に反発するばかりで、明確な意志を持って抗おとしてこなかった運命に、初めて立ち向かおうという意思が沸き立つ。
 多少は気を取り直したようにも見えるつくしの横顔を横目に見ながら、司はそろそろ暮れだした空を眺め、つくしの手を引き注意を向けさせる。
 「……綺麗」
 空に広がった茜色のグラデーションにほぉっと感嘆の吐息をつくつくしの横顔を眺め、心の中で同意する。
 …そうだな。
 本当に彼女は美しい。
 どんなに虐げられ、苦しんで、やせ細ろうとも……その心が。
 伸びやかな葦が天を目指す様に、常に前進しようと足掻くその懸命な強さに惹かれずにはいられない。
 もう、虚ろになってゆく彼女を見たくない、壊したくない、本当にそう思うのに、彼女を離してやれない己の業の深さを自嘲する。
 道明寺邸の森のようになっている深く高い木々の向こうへと、陽の光のほとんどが消えて…急に寒さを感じたのか、つくしがブルリと体を震わせた。
 雲の切れ間に覗いていた夜空も、やはり明日は雨なのか、わずかに昇りだした月や星も流れの早い陰鬱な雲に覆い隠され始めている。
 「もう帰る?」
 「ああ、そうだな。さすが寒ぃし…この辺には、ほとんど外灯なんて置いてねぇから、完全に日が落ちちまったら真っ暗闇だ。それこそ自分んちで遭難とかシャレになんねぇだろ?」
 まさに道明寺邸の敷地の広大さからして、それもまんざら冗談ではなさそうな話だった。
 つくしもここ数ヶ月、この屋敷に滞在して、自分の部屋と玄関までのルート、玄関から車で毎日登校していた道筋くらいならなんとかわかるが、その他の場所では容易に迷子になれそうだ。
 「本館の周辺ならともかく、ガキの頃からここに住んでる俺でさえ、闇夜にウロついて妙なところに迷い込んじまったら自力で帰り着く自信ねぇしな」
 「…………」
 返事を待つことなく、クルリと彼女に背を向ける。
 「行くぞ」
 名残惜しく夜空を眺めていたつくしも、ふうと小さく息をついて、素直に司の背に従う。
 そんな彼女が追いつくのを待って、司があたりまえのように片手を差し出してやると、わずかに躊躇したようだが、それでもたとえそこで自分が彼の手を拒んだとしても、結局は無理矢理にでも意に従わされるのに思い当たったのだろう。
 おずおずとつくしが手を伸ばしかける。
 パキッ!
 「きゃっ」
 小さな悲鳴をあげ、フラついたつくしの腕を、司が咄嗟に掴まえて支えた。
 「…っぶねぇな」
 「いた…」
 片腕を司に掴まれたまま、つくしが片手を伸ばして、足首を押さえて蹲りかけている。
 そっと掴んでいた腕を下ろしてやると、つくしは足首を掴んでしゃがみこんでしまう。
 「怪我したのか?」
 「………ちょっとだけ」
 司もその場にしゃがみ、呻いているつくしの手をどかせて彼女の怪我の様子を伺う。
 「…暗くてよく見えねぇな。骨までやってそうか?」
 逆に‘骨まで’と司に言われてしまったことにつくしがギョッとする。
 しかし、自分で揉んでみたり、摩ってみたりした感触から大丈夫だと判断したのだろう。
 フルフルと首を横に振るのみで、なんとか立ち上がりはしたが、片足立ちに重心を寄せてしまっていた。
 骨折まではしていないまでも、かなり痛みを感じているに違いない。
 周辺に折れて転がってる大ぶりの枯れ枝からして、おそらくそれをつくしがうっかり踏んでしまい、驚いて飛び退いたか何かしたところで、足を滑らせでもしたのだろう。
 …たく。
 「無理すんな」
 大きく息を吐き出し、司がつくしに背を向けたまましゃがみこんだ。
 「乗れよ」
 「………え?」




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