「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0364

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 「そこ、段差あるから足引っ掛けて、すっ転ぶなよ」
 「きゃっ」
 言われるそばから足を滑らせかけているつくしの腰を支えて、司が引っ張り上げてやれば、とうのつくしは顔を憮然とさせている。
 「助けてやったのに、なにブーたれた顔してんだよ」
 「…だからぁ、こんな雨が降った後にまで散歩なんかしたくないって言ったの!いくら雲が切れたからと言ったって、ぬかるんでて危ないじゃない」
 「だからサポートしてやってんだろ?この俺様がついていて、お前を転ばせるわけねぇだろ」
 「……………」
 結局司に言い負かされて、投げたつくしが黙り込むといういつものパターン。
 しかし、そういうつくしも、一応毎回ぶぅぶぅとは言うものの、今やここ数日の日課となってるこの散歩をそれなりに楽しんでいるらしく、彼が出かけようと誘わなければ、それはそれでどこか物足りない顔をしているようにも思う。
 別に閉じ込めているわけではないのだから、彼女一人で散歩してはいけないというわけではなかったし、もしそうしようとしたにしても、結局は司もつくしに付き合うのだから同じことではあるのだ。
 だが、もう彼女はそうしようとはしなくなっていた。
 自分の意思で何かをすること―――望むこと。
 何かを望もうとすれば、まるでまた新たな不幸や哀しみが降りかかるのだとばかりにすべてを恐れて、雑草女の強靭さとは裏腹の脆い女の弱さを、傷もあらわに見せていた。
 「昼間、雨だった分、むしろこの時間帯でも暖かいな」
 すでに身を切るような寒さの12月のこの時期だったが、風があまりないこともあってか、そう寒さを感じない。
 「…雨の日って、なんで暖かったりするんだろう」
 ポツリと呟いた問いは、別に司への問いかけというわけではなく、単なる独り言だったのかもしれなかったけれど。
 「湿度が高いせいだろ。あとは放射冷却だな。そっちの方は晴れ間が出だしてるから、逆に明日の朝は寒くなりそうだけどよく晴れるんじゃね?」
 「ふぅん」
 「なんだよ?」
 チラッと見上げてきた目は感嘆しているように見えて、司は大得意になるが、しかし、つくしの口から出た言葉は褒めているのか貶してるのか、あまりにも微妙なもので。
 「あんたって、日本語弱いし馬鹿っぽいのに、意外に博学っていうかさ。ドイツ語の時もそうだったけど、けっこう物知りなんだなって思っただけ」
 「………どういう意味だよ、そりゃ」
 とても褒められている気がしないのは、気のせいではないだろう。
 ヒクつく司を放置し、つくしがさっさと足を速めて、先を歩き出したのを司が咎めて手首を掴む。
 「おいっ、あんまり早足すんな!」
 「………どうして?」
 「どうして…って」
 怪訝に突っ込まれて、今度は司の方が言葉を詰まらせてしまう。
 「お前みたいなドン臭い女、一人でさっさか先にいっちまったら、また足を滑らせるかなんかして、すぐにすっ転びそうだからに決まってんだろ?」
 「ドン臭いってよけいなお世話なんですけど?崖でもあるまいに、転ぶくらいなんてことないじゃない。いくらあんだが、あたしのことを所有物みたいに思ってるからって、あれこれ一々口うるさく指図しないでよ」
 いいかげん天邪鬼の司の憎まれ口にも慣れているつくしだったけれど、それでもやはりドン臭い呼ばわりにはムッとしたようで、口がすっかりへの字に曲がってしまっていた。
 「……ハァ、いや、別に所有物だとか、そういうつもりじゃねぇんだけどさ」
 上手く自分の気持ちが伝わらないもどかしさと落胆に、司は項垂れてつくしの少し後ろを黙って歩く。
 しかし、腹を立てたように見えた彼女も、いつものようにあっさりと水に流して、こだわることなくすぐに気楽にそぞろ歩きを楽しみ出していた。
 「わぁ、なにこれ、可愛い~」
 小さく歓声をあげたつくしが、足元にしゃがみこむ。
 「…ああ、クリスマスローズだな」
 「クリマスローズ?」
 見上げてくるつくしにひとつ頷いて、司もつくしの頭上から覆い被さるようにして覗き込んだ。
 雪こそ降ってはいないが、この寒さの厳しい季節にあって、ひっそりと花開かせたその紫の花は、ひどく美しくけなげに見える。
 「あんたが昨日くれた、硝子細工のテーブルランプのモチーフの花だよね?本当にこんな寒い季節にも咲いてるものなんだ」
 「みたいだな。うちの庭には、庭師連中がけっこういろんな種類の花を埋めてっけど、昨日からあちらこちらで見かけたぜ」
 これまでの司は、庭の木や花になどロクに興味を示したことはなかったが、ここ数日の散策でそれを知った。
 つくしと一緒にいると、こんなごくささやかな日常の一コマでも新しい発見がある。
 「へぇ…こんな花なんだ。あたし、本物は見たことなかったなぁ。雑草じゃないとは思ったけど、でも見た目によらずずいぶん丈夫なんだねぇ」
 あまりに嬉しそうに眺めているので、ブツっとそのうちの一本を手折って、つくしのダッフルコートのボタン穴に差し込んでやる。
 「ちょっ、可哀想じゃない、折っちゃうなんて!」
 「たくさんあるんだから、別にいいじゃん」
 「そういう問題じゃないでしょ」
 キーキー言うつくしに肩を竦めて、腰を伸ばして今度は司の方が先を歩き出して、つくしもすぐに真横に並んだ。
 そして、
 「……あの、ありがと」
 「あ?」
 面食らって首を傾げる司の顔から顔を反らして俯け、つくしが胸元の花を弄りながらもう一度礼を言う。
 「お花、凄く可愛い。ちょっと…嬉しかったから、ありがとう。お部屋に帰ったら、枯れないようにお水につけておくね」 
 「お、おう」
 …笑った。
 高価な花の花束を大して喜ばなかった女が、そこらで気まぐれに摘んだ雑草みたいな花に、顔を綻ばせて喜んでいる。
 自分の胸に挿された一輪挿しを眺めて、嬉しそうに微笑んでくれる彼女の顔を見ているのがなぜか妙に気恥ずかしくて、くすぐったいのにずっと見ていていような気持ちに、司は赤く赤面してるだろう自分の顔を一撫でして視線を反らす。
 けれど、やはりすぐにまた彼女の顔をのぞき見せずにはいられなくって、何度となく見つめかけては、彼の視線に気がついたつくしの目と合いそうになって、反らすことを繰り返す。
 不思議に穏やかで和やかな空気。
 このまま時間が止まればいい、そんな乙女チックなことを思う自分の女々しさが情けなくもおかしい。
 キスやセックスをするような鮮烈な快楽とはまるで違う愛しさと温もり、そしてときめきを感じることのできるこうした時間が楽しかった。
 …こいつを抱いてる方が俺はいいけど。
 しかし、柔らかな顔をして礼を言う彼女を見られるのはそう悪くない。




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