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「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0363

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 お菓子の家に関しては、司の最後の余計な一言のせいで、結局はつくしの機嫌を損ねてしまったが、それでもやはり彼女には高価な装飾品や物よりも、食べ物が正解で、彼女を喜ばせようと思ったら菓子や美味い食事が一番であることがよくわかった。
 つわりらしい症状が出始める以前、かなり精神的なダメージを受ける出来事があったにしても、つくしは食べるものを食べる時だけは、本当に嬉しそう食べていたことを思い出す。
 いや、もちろんその食事さえ、口にできない時もあったのだろうけれど。
 たとえ踏みしだかれて、打ちしがれるようなことがあっても、常に彼女は立ち上がって、その名のとおりまるで雑草のように強く逞しく、こうべを上げ、前へと足を踏み出し続けた。
 だからこそ、最悪な仕打ちをして苦悩させ、今も苦しめ続けている彼を相手に、曲りなりにとも会話を交わして‘日常’をこなすことができているのだろう。
 …ふっ、図太いんだが、単にマヌケなんだかな。
 辛辣に思う。
 しかし、それでも彼女は、けっして鋼鉄の心を持っているわけではないのだ。
 倒れまいと歯を食いしばって、立ち上がり続ける彼女にもやがては限界が来るに違いない。
 ―――崩壊する時が来る。
 そして、その崩壊を避け、元の彼女を取り戻す為には、司から離れるのが一番なのだろう。
 けれど…、
 …ダメだ。あいつを手放したくない。
 司にとって、たとえ彼女の為なのだとしても、自らのエゴを捨て、他人を優先するなど考えもつかないことだったのだ。
 それに今はつくしが孕んだ彼の子供の存在がある。
 その子供の存在が、彼女を所有するのに初めて、司なりの正当と思われる理由を与えてしまった。
 …あいつを一人で放り出すわけにはいかねぇ。
 たとえつくし自身が望んではいなくても、彼女の胎内に彼の子供がいることはおそらく間違いないことなのだから。
 問題は、それを彼女に知らせる時期だ。
 早急に検査と健診を受けさせる必要があることは彼にもわかっていたが、そのためにはつくしに妊娠を知らせなければならない。
 かつての彼女が、いくらそうした事情に疎く縁遠い純朴な少女だったのだとしても、さすがに高校生にもなって、産婦人科を受診させて検査を受けさせれば、不審に思わないはずがなかった。
 せめてクリスマスまでは…特に理由にもならない理由を作っては、そんな風につい問題を先送りにしてしまっている。
 けれど、たとえクリスマスを過ぎたとて、状況は変わらない。
 いや、それどころかますます事態は切迫し、急を要するものになりかねないのだ。
 …どうする。
 さすがに当初彼が目論んだ、堕胎が不可能な時期まで産婦人科を受診させないというわけにはいかないだろう。
 しかし、今の司は、つくしの狂乱が怖かった。
 虚ろな目をして一日中蹲って、何も見ない、ロクに会話にも応じず、自発的に食事をとろうともしない痩せ衰えてゆくばかりの彼女の姿を、もう一度見たくなかったのだ。
 「……いらないって言ってるのに」
 ため息混じりに困惑した顔で、ボヤくつくしの肩を抱き、優しく頭を撫でてやる。
 「そんなこと言って、最近は、お前もけっこう内心ではきゃあきゃあ喜んでんじゃね?」
 喜ぶ…というほどではないが、それでもそうこうしているうちに、ついには司も食べ物以外のプレゼントで、つくしの興味や関心を惹く物を贈ることに成功していた。
 クリスマスプレゼントは、ヘクセンハウスだけではなく、司は迷惑顔の彼女をよそに、毎朝一つづつツリーの下や枕元に用意して贈り続けている。
 お菓子の家の次は、定番のドレスと靴など司に同伴するクリスマスパーティで着るためのもの。
 案の定嬉しそうではなかったが、司自身は自分が選んだドレスの出来栄えに満足し、それをつくしに試着させ、彼女の似合って愛らしい姿に悦に入って喜んだ。
 そして、さらに次の日に贈った貴金属は、やはり予想通り不発に終わって、大してつくしが喜ばなかった為に、司がムッと一人ふて腐れるハメに。
 …そりゃあ、わかってたけどよ。
 しかし、つくしの迷惑顔は、いつの間にか困惑顔に変わっていた。
 「なんで毎日、プレゼントがあるわけ?」
 「いいだろ?素直に嬉しがれよ」
 嬉しがっていないことを承知で言う。
 そんな司につくしの方も慣れて、溜息一つで諦めることが常になってしまっている。
 振り返ったベッドサイドのサイドテーブルに置かれた、クリスマスローズを模した美しいルームライトを振り返る。
 「…あれはたしかに綺麗だったけど」
 「だろ?」
 そして、今日司が渡したばかりの、手のひらにかろうじて収まるサイズの小箱に見入る。
 「開けろよ?」
 いつものセリフにつくしも諦め、司に言われるままにリボンを解き、包装を解いた。
 中から現れたのは、精緻な装飾を施された白と金の宝石ボックス。
 可愛いーーー声にはなっていなかったけれど、それでも動いた口の動きに、司の口元がニヤニヤと緩む。
 「それ、オルゴールなんだぜ」
 「…へぇ?」
 「後でゼンマイ巻いてみろよ」
 「うん」
 素直に頷くつくしの顔は、食べ物以外では滅多にない煌めきを宿していて、その手の中の物への関心が珍しく覗いていた。
 「中、開けて?」
 司に言われたとおりに、つくしがパカリと蓋を開け、臙脂色のベルベッド布地の上に、チョコンと置かれた小さなガラス細工を見つけ、驚きに目を瞠る。
 「……え?これってまさかガラスの靴なの?」
 「ああ。お前ってガサツなくせに、案外乙女チックっつーか、そういうの好きじゃね?」
 司の暴言にもムッとするどころか、いかにも意外そうな顔で見上げてくるつくしに、司が機嫌良く笑った。
 おそらくつくしは、傲慢な彼が、他人の機微や好みになど頓着するとは思っていなかったのだろう。
 …お前だからだ。
 つくしのことだから、どんな些細なことにも気がつかずにはいられなかったのだ。
 びっくりしているつくしへと、悪戯っぽく笑う。
 「どうだ、あたっただろ?」
 「………………」
 返事は返らなかったが、彼女の表情からあきらかに心を動かされていることは、司にも伝わっていた。
 そして、
 「……ありがと」
 「おう」
 催促したわけでもないのに、かけられたつくしからのお礼の言葉。
 司の胸に嬉しさがこみ上げた。
 そんな些細なことが嬉しいだなんて、彼女と出会うことがなければ、きっと知らないままだっただろうささやかな喜び。
 ささやかなのに、得難くて、この上なく貴重な想い。
 「でも、こんなものとかたくさんもらっても、あたしにはあんたに返せるものは何もないよ」
 「……………」 
 彼女が司に返せるもの―――いや、つくしだけが彼に贈ることができて、この世のどんなものをもらうよりも彼を喜ばせ幸せにできるものがあるのだと、果たして彼女は知っているだろうか。
 …わかんねぇだろうな。
 司自身さえ、これまで長く気づけずにいたのだから。
 彼女の感謝、微笑み、彼にだけかけてくれる彼女の言葉。
 けれど、人間はどこまでも欲張りな生き物だから、1つ得ればまた1つと望みが増えてしまう。
 ーーー少しでも彼女に好かれたい。
 そして、いつの日か愛されたいと無意識に願い、その無意識の願いが欲望に変わって、彼女を手放せなくさせてしまった。
 …お前が欲しい。
 本当の意味で、体だけではなく彼女のすべて、心も手に入れることができたなら。
 …俺は他には何もいらねぇ。お前だけ。
 今の彼が欲しいものは真実、つくしだけだった。
 「別に期待してねぇし」
 「…………道明寺」
 「それより体調が悪くねぇようなら、夕食の前に少し庭先のあたりを散歩しようぜ」




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