「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0362

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 「道明寺」
 苦しげなつくしの顔に、司がサラリと話を変える。
 「そんなことは今はとりあえず置いておいて、それよりお前、その箱開けろよ」
 「え?」
 その箱、でつくしの背後、ツリーの根元に置いてある箱を指し示す。
 「欧米だと、プレゼントやカードをツリーの下に飾って、クリスマスの日を待つっつー習慣があんだけど、別に俺はキリスト教徒なわけじゃねぇし、お前も違うだろ?」
 
 「………まあ」
 面食らっているつくしを半ば無理矢理に押し出し、箱へと向かわせる。
 しかし、つくしの方はと言えば、完全に気分を切り替えた司とは違って、どこかまだ先ほどの気まずい余韻を引きずっているようで、戸惑って複雑な顔のままだ。
 「ほれ、早くしろ」
 「いや、あんたが開けなよ」
 「お前へのプレゼントを俺が開けてどうすんだよ」
 つくしが驚いて首を傾げ、大きな箱への視線を戻した。
 「は?…じゃ、これって」
 「お前への俺からのクリスマスプレゼント」
 困惑しているだけだったつくしの顔が、途端、司もよく見慣れたげんなりしたものに変わってしまう。
 …そんな顔が見たいんじゃねぇよ。
 そんなことを心の中で思った。
 「俺がお前に用意したんじゃなければ、誰からだっつーの」
 「あたし、プレゼントとかいらない」
 「やるっていうものは断るな」
 つくしもさすがに、司が一度言い出したら聞かないのをわかっている。
 つくしはいかにも仕方なさそうにため息をついて、絨毯の上に敷かれたラグの上に膝をつき、箱の前に向かい合い座り込んだ。
 大きさにしてA3用紙くらいか。
 つくしが両腕で抱え込めば、かろうじて持ち上げられるくらいのサイズの箱だが、問題は重さだった。
 移動させるのは一人では厳しそうだ。
 「なにこれ。なんか甘い匂いがする?」
 「あんま、乱暴に開けんなよ」
 司も傍らに片膝をついて、つくしの作業を見守る。
 金地にカエデやツリーの透かしが入った、包装紙や金のレースのりリボンを丁寧に剥がすと、真っ白な箱が現れた。
 「よいしょ」
 四角いドーム型のカバーを、つくしがソロソロと慎重な手つきで持ち上げて外した。 
 「わっ、なにこれっ」
 箱を持ち上げ、口をポッカリと開けて驚いているつくしの顔がおかしい。
 してやったりと含み笑った司が、軽々とその箱の蓋を上から取り上げてやる。
 「ヘクセンハウス…いわゆる‘お菓子の家’ってやつだな」
 「お菓子の家!凄いっ」
 素っ頓狂な声を上げて、マジマジと見入ってる。
 箱より一回り小さな家は、まるで模型のように精巧な洋館で、よくよく見てみれば、今つくしと司が宿泊しているこの別館‘星月館’のミニチュア。
 うわぁとか、ひぃ~とか、妙な悲鳴をあげるつくしの目は、ほとんど初めて司が見るもので、好奇心に煌めき明るく輝いていた。
 お菓子の家よりも、つくしの嬉しそうな顔の方がよほど可愛いくて、価値がある。
 司が見たかったもの。
 彼女のこんな顔が見たくて、ずっと空回りしてしまっていた。
 「これ、まさか本当に食べれるの?」
 「んなの当たり前だろ。実際にはまだ雪は降ってねぇけど、屋根に積もった雪は砂糖で、屋根はジンジャークッキー、壁はレープクーヘンだな」
 「レープクーヘン?」
 「ドイツを中心に作られてるケーキの一種だよ。柑橘類の皮やナッツが入ってる」
 「へぇ?」
 声までもがここのところ聞かなかったような明るい声音。
 「だから、あっちでは別名レープクーヘンハウスとも言うんだが、ヘクセンハウスの直訳が‘魔女の家’だから、もしかしたらそっちの方が正式名なのかもな」 
 「そうなんだぁ」
 本気で感心しているらしく、つくしにうんうんと素直に頷かれて、司はなおさら嬉しい気持ちになった。
 つくしは基本意地っ張りで、頑固な少女だったけれど、妙に素直なところもある。
 食事が美味しければ美味しいといい、自分がいいと思えば言う。
 それだけに、悪を悪と糾弾してしまう要領の悪い率直さを発揮して、彼の勘気を被り関心を惹いてしまったのだから、その皮肉を思って司は苦笑した。
 「こんな大きな家がまるごとお菓子だなんて、なんて贅沢なの!?凄いよ」
 目を輝かせて釘付けに見入ったまま、シミジミと呟いている。
 「ホントは、俺らが入れるくらいのもっとでけぇのを作らせるつもりだったんだけど、急な注文過ぎてさすがに間に合わなくって、この程度の大きさになっちまった」
 「ええ?十分っていうか、これだって大きすぎるくらいでしょ。そんなすごい大きいのなんて、とても食べきれないよ。第一、これでさえ、お屋敷の皆さんに協力してもらって食べないと、食べきるのは無理なんじゃないの?」
 「なんでお前にやったものを、使用人に食わせなきゃなんねぇんだよ」
 聞き捨てならないセリフがつくしから聞こえて、ご機嫌だった司の顔がムッと歪む。
 「…って、これあたしとあんたで食べるってこと?」
 つくしが驚いて、司を振り向く。
 「こんな甘ぇもの、俺が食うわけねぇだろ」
 「え?まさか、あたし一人で食べろって言ってる?」
 当然だと頷く。
 「ええっ、ありえないでしょ。絶対!食べきれるはずないわよっ」
 「別に全部食わなくても食いたいだけでいいし、けっこう保つはずだから毎日少しづつ食えばいいじゃん」
 「…だって、ツリーのお菓子もあるのに」
 「どっちもお前が食えねぇなら、後は捨てるだけだ。そこらへんは適当にしろよ」
 捨てる、の一言に反応して、つくしが首を横に振って抗議する。
 「そんなのもったいないから、捨てるだなんてあたしには無理」
 司はそんな彼女が不思議だった。
 いくらでも欲しいものは買ってやる、手に入れてやると言っているのに、つくしは少しも変わらない。まさしく、どんなものでも手に入る場所を手に入れたというのに、相変わらず何も欲しがろうとはしない。
 ムダを嫌い、ものを大切にせよと、言い、それを実際に実践する。
 …この俺にまで、そんなこと言うなんてな。
 笑ってしまう。
 「ただでさえ、あたしはあんまり食欲ないし…もう幾日もしないうちにクリスマスなんだもん。それまでは飾っておいて、あとは取り分けて皆さんにもおすそ分けしてもいいでしょ?」
 …妙な女。
 本当にそう思うのに、不思議に嘲る気にはなれない。
 「ま、お前がそうしたいならいいけど。お前も頑張って食えよ?」
 「…う…ん」
 曖昧な返事は自信がないからだろうが、他の誰の為でもなく、つくしの為に用意させたものなのだ。
 少しでも彼女に食べさせたかった。
 「お前、ガリで抱き心地悪ぃんだから、少しでも食ってもっと太れよ」




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