「愛してる、そばにいて」
第5章 罰②

愛してる、そばにいて0360

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 ジッと見上げてくる大きな目の魅力に、照れて司は視線を反らす。
 「なんだよ、唐突に。…それとも、お前したいわけ?」
 ムッと寄った眉間のしわが、言外に否定している。
 その飾らないあからさまな態度や珍妙な表情がおかしくて、指先でそのしわを伸ばすように触れてからかう。
 「すげぇ不細工なツラ。そんな顔してっと、シワがとれなくなってすぐにババアになっちまうぞ」 
 「…………」
 話にならないと無言で背中を向けるつくしを抱き抱え直して、司は長い黒髪の合間から覗いたうなじにチュッとキスを落とした。
 自分が抱かないのかと聞いたくせに、それだけでつくしはビクリと肩を震わせ、体を固くしてしまう。
 「…毎日しなきゃいられねぇってもんでもねぇし」
 我ながら空々しい言い草。
 つくしの妊娠が発覚するまでは、ほとんど毎日のように交渉を持っていたのだ。
 自分が苦しめて、彼女を衰弱させているのをわかっているのに、抱かずにはいられなくて…彼女が自分のものであることを確かめずにはいられなくて、よけいに苦しめてきたくせにと内心で自嘲する。
 「お前がしたいなら、抱いてやるけど」 
 「したいわけがないじゃん」
 「なら、今日のところはいいよ。なんかお前、ここんとこますます痩せちまったし、食欲も戻ってないしよ。そりゃあ、どうしても抱きたくなって我慢できねぇでヤっちまう時もあるけど、お前も具合悪いなら悪いで言えよ」
 「じゃあ、いつも具合悪いから触らないで…あたしはもう、あんたに抱かれたくない」
 投げやりではあったが、つくしがほとんど初めてハッキリと口にした本音。
 攻撃的ではない切実な彼女の気持ちは、ズシンと思わぬほど重く司の胸に伸し掛る。
 好きだ、惚れてると懇願した女からの悲痛な拒絶。
 「……それは無理だな。俺はお前に触りたいし抱きてぇから」
 つくしもそんな司の返答を予想していたのだろう。
 ふっ、と皮肉に笑んで、
 「だったら、最初からやれないことを言わないで。出来もしないくせに口にしないでよ」
投げやりに吐き捨てた。




*****




 『……でよ。……のに、どうしてあたしは……ダメなのに』
 夢現に聞こえる女の悲痛な泣き声は、深い眠りにいる司の胸にも堪えて、慰めて笑わせてやりたい想いと、そうできない自分への焦燥と悔恨、ジレンマに身悶えさせる。
 『うぅっ……シャ…ツ…』
 …泣くな、泣くな、泣かないでくれ。
 結局、そんな風に心の中で呟くことしかできずに、せめてもと、腕に抱いた小さな女の温かな体をさらに抱き込んで、できるだけの柔らかさで髪や背を撫でた。
 好きな女が泣いているというのに、どうしてやることもできない自分の不甲斐なさ。
 「……牧野」
 溢れた声は現実で、しかし目を瞑ったままの司の意識はいまだ眠ったまま。
 その声に、シクシク泣いていたつくしの声がピタリと止んで息を潜める。
 しかし、フ―――ッと大きく一つ息を吐き出しただけで、すぐに司の寝息が聞こえて、つくしも安堵したのだろう。
 「道明寺?」
 密やかな声が確認してくる。
 彼女が話しかけてきたなら、答えてやりたいのに、意識のどこかで彼女を感じているのに、あまりに眠くて、司は答えることができない。
 「道明寺…あたしは絶対にあんたを赦さない。だから、あたしはあんたを好きになんてならない…なれないはずなのよ」
 …ああ、そうだな。
 ポッカリと空いた胸の奥の昏い穴の底から、冷たい風が吹き過ぎて、布団の中で温まっているはずの彼の体を冷たく冷やし、心さえも凍てつく気がした。




*****




 「ん~」
 巨大な窓から差し込む陽の光が顔にあたり、あまりの眩しさに、司は顔を手で隠して体を起こす。
 …チッ、ねみぃ。
 ショボつく瞼を無理矢理にこじ開けようとするが、眩しさと眠気に中々目が開かない。
 しかたなく片手で枕元を探って、昨夜外して置いた腕時計に手を伸ばす。
 「…なんだよ、まだ7時前かよ」
 あわわわわと大あくび一つ。
 やはりあまりに夜空が明るい部屋は、眺めるのには良くても、寝起きするにはあまりよろしくなかったようで、寝る時には妙に明るく寝づらいし、朝は朝で夜明けと共に朝日に叩き起こされてしまった。
 ある意味健康的に起きられたと言えなくもない。
 しかし、毎日だとかなり考えものだ。
 …やっぱ、一階で正解だよな。
 つくしの体調を考えての階下だったが、毎朝これでは堪らないと周囲を探って、その当の彼女がいないことにやっと気がつく。
 「あ?」
 …あいつ、どこ行った?
 元々つくしは、司より遥かに規則正しい生活習慣を実践していた女で、早寝早起きだ。
 だが、ここのところの体調変化と精神的な不安定さが元の不眠が原因で、その生活リズムが崩れてしまっている。
 最近では、以前の司の生活のように、午前中はベッドに伏せていることも少なくない。
 それなのに、司の隣、傍らのシーツはすでに冷たく冷えていたから、だいぶ前につくしはベットを抜け出していたのだろう。
 強い癖のおかげで、寝癖らしい寝癖もない髪を軽くかきあげながら、司もベッドを出て、彼女の姿を求めて居間や脱衣室、風呂、果てはトイレまでも探し回る。
 「いねぇ」
 まさか館内を探検しているということもあるまい。
 ふいに…なぜか、本当にふいに、つくしがこの屋敷のどこにもいない気がした。
 ひんやりと心に忍び寄る不安。
 被虐の限りを尽くして彼女を貪り、半ば痛めつけていた頃にさえ、そんなこと―――つくしが自分の元から脱走することなど思いもよらなかったのに、なぜか急にそんな心配がこみ上げる。
 …逃げたって、どこに逃げる?
 つくしの両親はすでに元の住まいではなく、司が用意した家へと越していて、一度は車で帰らせもしたが、正確な住所や場所もつくしは承知してはいまい。
 あるいは親に連絡して迎えを頼んだにしてもあの親の様子では、司に黙って連れ去ることなど考えられない。
 …ねぇよ。
 眠気に濁った頭をハッキリさせるために、ざっとシャワーを浴びて、司はラフな洋服に着替え、本格的につくしを探そうと足音荒く二階からの階段を駆け下りる。
 ダダダダダッ。
 「……おっ」 
 「あ………」
 一階を探し回ろうと玄関ホールに降りてすぐに、その探そうとしていた当のつくしが司に気がついて、腰を下ろしていた床から立ち上がる。
 「牧野…お前、こんなところで何してんの?」




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