「愛してる、そばにいて」
第5章 罰①

愛してる、そばにいて0355

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 欲求不満解消と性欲発散を目的に、ここのところ司の毎朝毎夕の日課となっているプールからの帰り道、屋敷の母屋との渡り廊下から覗く景色に閃く。
 …気分転換させてやった方がいいっつーってたよな。
 つくしには好きなところに連れて行ってやると提案してみたものの、拒絶しはしないが、かといって喜々として応じるでもなくほとんど反応がなかった。
 もちろん予想の範囲だったが、無理強いするには、体調の心配もあって連れ出しあぐねてもいる。
 …どっちみち、近いうちに確定検査や健診は受けさせなきゃまじいけど。
 たとえ妊娠していないのだとしても、屋敷に篭もりっきりでいさせることが良いことのはずがなかった。
 しかし、つくしに何をしてやれば喜ぶのか、司には皆目見当がつかない。
 総二郎のアドバイス―――高価な服や装飾品、ロマンチックなデートコースが、見当ハズレであることはすでに経験からわかっている。
 そうなると他人の知恵を借りるより、これまでのつくしの様子から推察するしかないのだが。
 …たしか、あいつ夜景や花はけっこう反応悪くなかったよな?
 あれは初めてのデートでのこと。
 つくしはまるで乗り気ではなかったが、ブリッジの上から眺めたビル灯りやホテルの部屋から覗いた夜景には、目を瞠って見入ってはいなかったか。
 花にしても、戸惑っていただけで迷惑そうではなかったように思う。
 しかし、あの日を繰り返すようでは、これまでの二の舞…彼が一方的に何かを押し付けるだけで、彼女の心にはきっと響かない。
 いや、たとえ今は何をしてやったとしても、彼への心象は変わらないのかもしれない。
 それでもせめて、少しでも彼女に気晴らしをさせてやりたい。
 昏く虚ろに陰ってしまった顔に、ホンのわずかでも再び笑顔を取り戻せれば。
 ちょうど通りかかって頭を下げるメイドを司が呼び止める。
 「おい、庭師連中に言って、庭のどっかからモミの木を一本引き抜かせろ。んで、南館側にある離れの玄関んとこに置いとかせとけ」
 「南館側の離れ…というと、蒼鷹邸のことですか?」
 「イヤ、ちっちぇ方」
 「星月館ですか?」
 呆気にとられてる古参のメイドに頷く。
 「ああ、俺がガキの頃…小等部あたりまでは、本館の玄関にツリー飾ってたろ?まあ、そこまででけぇのは入んねぇだろうけど、な」
 「かしこまりました。では、飾り付けするのにも半日程度いただきたいのですが」
 「いや、飾りつけはいい。そっちは外部の専門業者にやらせるから。それより俺らもついでに夜はあっちに泊まるから、昼頃までには頼む」
 「はい」
 承諾するメイドをあとは振り返ることもなく、司は懐から取り出した携帯電話のボタンをプッシュした。




*****




 季節は真冬の最中。
 完璧に温度調節され、常に快適に保たれている屋敷内はともかくとして、一歩建物を出れば厳しい寒風が吹き荒ぶ。
 ホンの庭先を歩く程度だというのに、司はメイド達に仕度をさせて、つくしにはかなり厚着をさせていた。
 袖口と首元に、ふんわりとして温かなフォックスファーをあしらったファーフード付きの膝丈ダッフルコート。
 さらには手袋とムートンブーツという重装備。
 コートの中は、ゆったりとしたジャンバースカートだったが、下にもスパッツを履かせる念の入れようだ。
 それでもまだ寒々しい気がして、司は自分が巻いていたマフラーをとって、つくしの被っているフードの中の襟首にぐるぐると巻きつけ団子状態に。
 「……さすがに暑いんですけど」
 「真冬は暑いくらいがいいんだ!東京の寒さをお前は舐めているっ!」
 「いや…あたし、バリバリの東京育ちだし」
 いつもはロクに会話に応じないつくしも、仕方なくだろうが呆れたように抗議する。
 「とにかく、お前、ここ半月ほど屋敷に篭もりっぱなしでロクに外出もしてねぇんだから、急に寒空の下に出てきたら風邪引くだろ?」
 ―――だったら、連れ出さなきゃいいのに、とかなんとかつくしがブツブツ言っているのに、司はつくしに気がつかれないように小さく笑う。
 口を尖らせて、いかにも不満そうに言う顔が妙に子供じみて微笑ましかったのだ。
 「とりあえず、今日は離れの方に泊まることにしたから、多少歩くから頑張れよ?」
 「…………」
 司を上目遣いで見上げてくる目は、あきらかに何か言いたそうで胡乱だったが、言っても無駄だと思ったのか、それ以上は抵抗しない。
 一方司の方はといえば、黒目がちの大きな目の上目遣いの威力に半ば悩殺され、言葉を失ってしまっていた。 
 照れ臭さを悟られないように、ことさらぶっきらぼうにつくしの手を握り、自分の手ごとブルゾンの中へと突っ込む。
 つくしの意志に頓着しない相変わらずの横柄さだったが、それでも歩く速度はつくしに合わせて、けっして引きずらないよう、細心の気遣いで彼女の手を引いて歩く。
 歩くから頑張れよ、と言った司を馬鹿にしたように見返していたつくしだったが、やはりかなり体力が落ちていたのだろう。
 歩き出してそれほど経たないうちに、すぐにつくしの息が切れ出した。
 本人はやせ我慢をしようとしていたようだが、当然それに気がつかない司ではない。
 しかし、それをあえて指摘することなく、揶揄することもせずに庭のところどころ、通りに面して設置されているベンチへと誘導してやる。
 「ここ、座れ」
 つくしは首を横に振って強情を張っていたが、小さな体をベンチに押しやり強引に座らせてしまう。
 「いいから。ただでさえ足がおせぇのに、引きずって歩くのが億劫なんだよ」
 「……自分が無理に連れ出したくせに」
 「なんだって?」
 「………………」
 わざと聞き返してやっても、今度は返事も返さず、ぷっくりと頬を膨らめてムクれてしまった。
 その子供っぽい素直な仕草に、またも司の唇に小さな笑みが浮んだ。
 …可愛いな。
 素直な気持ち。
 しかし、つくしの方は馬鹿にされたとでも思ったのだろう。
 不機嫌な顔がますます険悪になって、ぷいっとそっぽを向いてしまい、司の笑みがホンの少しだけ陰ってホロ苦いものに変わった。
 「別に特に目的があるわけでもないし、急いでるわけじゃないんだから、休み休みでいいじゃん?お前、歩くの嫌いじゃなかっただろ?」
 「……………」
 無視をして、答えようとしないつくしを咎めず、司もその横に腰を下ろして長い手足を投げ出す。
 …空が妙に高ぇな。
 今まで気がつかなかったこと。
 そんなことを思って、言葉もなくつくしと二人並んで、青く澄んだ空をボウッと眺める。
 「……寒くないの?」




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