「愛してる、そばにいて」
第5章 罰①

愛してる、そばにいて0354

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 バスローブを身に纏い、バスタオルで髪を拭きながら司が居間に戻ると、一足先にシャワーを浴びたはずのつくしが、髪も乾かさないままにソファに体育座りで蹲って、ぼんやりとテレビを見ていた。
 しかし彼女がテレビの内容など観ていないのはあきらかで、画面の向こうはすでに放送時間を終え真っ黒になっている。
 無言で彼女のそばへと歩み寄り、コーヒーテーブルに投げ出されていたリモコンへと無造作に手を伸ばして、パチリと電源をオフにしてしまう。
 さすがにそれでつくしも我に返ったらしい。
 ハッと顔を上げ、自分を見下ろす司の顔に出くわしてすぐに視線を反らす。
 そんなことで今更傷つくほど司はヤワではないし、今ではもう憤ることもなかった。
 先ほど彼が置いた状態のままソファに投げ出されているドライヤーを手にとって、司は小さく息を付き、つくしの背中側へと回り込む。
 そして、ソファのサイドに設置されているサイドテーブルのコンセントにドライヤーのプラグを差し込むと、さっさとつくしの髪を乾かし出す。
 従順…というよりは、投げやりな無関心さで、つくしも特に逆らうことなく、司の好きにさせている。
 他人の手を嫌って、司はわりに自分のことは自分でやるタチではあったが、もちろん他人の世話をしたことなどこれまでなかった。
 それがつくしに関することでは、まるで真逆な自分を発見する。
 できるだけ彼女に触れていたくて、彼女をかまいたくて、こうして世話をすることすら嫌いではなかった。
 いや…。
 …けっこう楽しいっつーか、面白いかもな。
 動物嫌いだったからペットなど飼った経験はなかったけれど、もしかしたらこんな感じなのかもしれないと、本人が知ったら怒るだろうことを想像して、クスリと笑う。
 …こいつがあの犬をかまってたのも、こんな感じか。
 シャッツのことが脳裏を過り、司は顔を顰めた。
 いやな気分まで蘇らせたくなくって、思考を戻す。
 しかし、それにしても自分は彼女と一緒にいるようになって、本当によく笑うようになったとしみじみ思う。
 笑顔を失った彼女のかわりに…とで言うように、以前はまるで心が動かなかった些細なことにも、自然に笑みが浮んだ。
 その中には苦笑や、自嘲のほろ苦いものも含まれていたけれど。
 そして、そんな彼とは真逆につくしはドンドン笑顔を失っていった。
 「よし、いいぞ」
 声をかけられ、つくしが自分の長い髪に手櫛を入れ、ささっと整え出す。
 もうそれだけで艶やかな黒髪は、さらりと背に広がって、癖一つない真っ直ぐさを取り戻してしまう。
 見るともなくその流線を見守り、
 「お前の髪って、全然クセないよな」
 「…そうだね。あんたのはすごいクルクル」
 浮かんだ司の笑みは、今度は苦笑ではなかった。
 まだ髪を弄っているつくしの手に手を重ねるようにして、司も彼女の髪に触れて手慰んで、頭のてっぺんにチュッと小さな音を立ててキスを落とす。
 そして、そのまま横抱きにつくしの軽い体を抱き抱えて寝室へと運んで横たわらせ、小さな彼女を押し潰してしまわないように重なる。
 「…牧野」
 名前を呼んで、顔を見つめても返ってくるのは無関心な眼差しと冷たい表情。
 それでも無性に愛おしい想いと恋慕が募って、彼女からも愛されたいと心の奥底で叫ぶ。
 その想いに突き動かされ、司はゆっくりとつくしに口づけ、舌先で柔らかく彼女の唇のカタチをなぞっては優しく挟みこんでつくしを呻かせた。
 つくしが諦めにでも、彼を受け入れてくれるまで熱く切なく求愛を繰り返す。
 やがては頑固に固く結んでいた彼女の唇も、柔らかく綻んで甘く小さな吐息を零し出した。
 潜りこませた舌先でさえ、もうつくしは拒むことなくしっとりと受け止め許容する。
 「…ん…ハァ……ぅ…んん」
 何度も何度も彼女の腔内を味わい、ぬめって熱い舌を絡め合って甘い唾液を啜り送り込んで快楽を貪りあう。       
 司は名残惜しく彼女の唇を離す。
 潤んだ目の誘惑を振り切って、ベッドから退くのは至難の技だった。
 …こいつが欲しい。
 しかし、司はそんな自身の欲望を堪えて、バスローブを脱ぎ捨てると、いつもはめったに身につけずに枕元に置きっぱなしにしてある下着やパジャマのズボンだけを履いて、再びつくしの横へと滑り込む。
 されるがままに抱き込まれて、司の胸に頬を押しつけ身を固くしていたつくしが、怪訝そうに司の顔を見上げる。
 その目や瞼、鼻先にもキスをして、司は先ほど貪ったばかりの濡れて赤く色づいた唇へも軽いキスを落すだけで、それ以上何もせず目を瞑った。
 「寝んぞ」
 司の一言に、彼の顔をジッと見つめていたらしいつくしも、司が本当に寝てしまうつもりなのだと納得したのだろう。
 ゴソゴソと寝やすい位置へと体の向きを変え、寝る体勢へ。
 それでも、つくしの体を離してやることはしない。
 まもなく、いつものようにつくしから小さな寝息が聞こえ出す。
 真夜中になるとたびたび目を覚ましてしまうこともあるようだが、それでもここのところのつくしは概ねそれなりに寝れているようで、一晩中起きているということは今はもうなかった。
 それは多分に司によって抱き潰されて疲労の極地で寝入ってしまっているからだろうが、青ざめて顔色の悪かった顔もわずかに色味を取り戻してきている。
 …ゆっくり眠れ。
 司はそんな思いを込めて、つくしの体を抱く腕の力を優しくゆっくりと強めた。




*****




 …眠れねぇ。
 不眠とはまた別の、下半身が訴えてくる疼きに司は大きく息を吐いて起き上がる。
 それでもウツラウツラとはしていたようで、胸に抱いていたはずのつくしは彼の手を離れ、広いベッドの端へと移動してしまっていた。
 そんな彼女へとそっと手を伸ばし、彼女が目を覚まさないようにと司は慎重に柔らかく抱き寄せ、再び胸の中へと引き戻す。
 抱きしめて鼻面を埋めた黒髪の甘い匂いにホッと和まされ…同時に強い欲情にぐっと顎を引き荒れ狂う欲望を逃した。
 今からこれでは先が思いやられるが、少なくてもあと1,2ヶ月…完全に安定期に入るまではこの衝動を抑え込んでつきあわなければならない。
 司の予測通り…あの初めての日、あるいは夜景を見る為に外泊したあたりに妊娠したのであれば、おそらくつくしはそろそろ安定期に入るのではないかと思われるが、産婦人科を受診して確定検査も受けていないので確かではなかった。
 それに母体であるつくし自身が、精神的にも肉体的にも衰弱している状態だ。
 たぶん安定期になったとしても、出産まで無理をさせるわけにはいかないだろう。
 …マジ、ヤバかったな。
 もっとも流産の可能性の高い時期に、知らずさせてしまっていた無茶を悔いる。
 抱きしめた彼女から立ち上る香りが、彼の神経を和ませ癒すと同時に欲望をかきたて、司に苦しい夜を迎えさせていた。
 『…中絶されるなら、母体保護の観点からも22週までに施術を行なわなければなりません。それ以降の中絶は法律で禁止されています。ただし、それ以前でさえ母体への負担が大きく、できるだけ早期の処置が望ましい』
 医者の言葉が脳裏に蘇る。
 堕胎させるなどありえない話だが、逆に22週をさえ乗り越えてしまえば、つくし自身や楓がどう足掻こうと二人の子供の誕生を阻むことは誰にもできないのだ。
 しかし、当座の問題はその妊娠を確定させ、胎児の状態をを確認するための検査と健診。
 主治医は一日も早い産婦人科医の診察をを勧めていたが、果たしてあれほど妊娠を恐れ厭っていたつくしが、本当に妊娠だったとしてそれを受け入れるだろうか。
 …俺が守ってやる。
 手のひらをつくしの下腹部にあて、そっと撫でる。
 今はまだほとんど変化の感じられないその腹も、きっと後数週間もすればソレとわかるようになってしまうだろう。
 いつまで隠し遂せるものか彼にもかわからない。
 そして、その事実をどうつくしに打ち明けるべきか。
 この腹の中の子は自分とつくしと繋ぐ唯一の絆であり、この悪循環から抜け出るための楔なのだと、司は心の底からその誕生を強く願った。




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