「愛してる、そばにいて」
第5章 罰①

愛してる、そばにいて0343

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 『本当にありがとうございます。ホっとしました。もう、本当にここのところ毎日が不安で不安で、夜も眠れないくらいだったんですよ』
 「いえ」
 言葉少なく応対する司をよそに、あいかわらずつくしの母親は饒舌に捲し立て、さかんに司を褒め称えては娘が彼に見初められた幸運を感謝している。
 司にとっては、ごく当たり前の反応。
 『ああ…つくしは本当に、なんて幸せな子なんでしょう。道明寺様みたいなご立派な方に見染められたことだけでも、宝くじがあたったみたいに凄いことなのに。そんな方が家族のあたしたちのことまでこんなに良くしてくださるなんて…』
 一人盛り上がり、どうやら電話の向こうで感涙に噎せているようだ。
 チラッと部屋隅の置時計に視線を向ければ、時間帯は夕刻時、夕食時にはまだ少し早いが、そろそろ巷の中高生が帰宅しようかという時間帯で、以前のつくしであればそろそろ送迎の車に乗っておやつでもつまんでいた頃だろう。
 当然のように、今日もつくしは学校に登校していなかった。
 そして、もちろん彼女がそんなあんばいであれば、司もバカ正直に毎日登校するはずもなく、それどころか以前は気まぐれにでも学校に通う日もあったというのに、いまや彼もほとんど外出すらせず屋敷に閉じこもるような生活に甘んじている。
 あえて篭もりたいわけではないが、さりとてつくしを残して一人で外出する気にもなれず、総二郎やあきらの誘いにさえ気が向かずに無視し続けていた。
 一方、さんざん不登校だった類の方はといえば、まるで人が変わったように、総二郎たちと出歩き放蕩を繰り返しているらしい。
 『あいつどうしちまったんだろうな。以前みたいに屋敷に篭って、周囲を拒絶しているよかよほどいいんだろうが、あれはあれで不安定っつーか、どうみてもヤケクソになってるとしか思えねぇよ』
 …ふっ、人の尻のハエを追えたガラでもねぇだろうよ。
 類の人が変わろうが、…静を吹っ切るために荒れていようが、これまでと同様いくら親友だとはいえ、互いに干渉する謂れもない。
 それは互いの暗黙のルールであって、一応は心配している風情の総二郎やあきらとて、そこらへんは互いに弁えて、せいぜい類の遊びに付き合う程度、彼の拒絶を無視してまで踏み込むことはしないだろう。
 それは司に対しても言えて、珍しくつくしのことを話題にして批判的なことを口にしていた総二郎だったが、その後だからといって、何かを言ってくるようなことはなかったし、それはあきらや類でさえ同様だった。
 …ま、言えねぇよな。
 すでにつくしの所有権を司が主張してしまっている。
 ましてや類など、元々他人に興味がなく、司たちが何をしようと黙っていたような男だ。
 それが珍しくつくしに対してだけは、庇うような言動をしていたのだが。
 司は、それが気に入らない。
 いや、違った。
 気に入らないのは、類がつくしを多少なりとも気にしていたことなどではなく、彼女が類に惚れていたからだ。
 類に惚れて、司をないがしろにすることが赦せない。
 …そうだ。
 そうでもなきゃ、あんなゴミみたいな雑草女に、この俺が…。
 好きだと言って、一度はエベレストに届くほどに高いプライドを捨ててまで自分を好きになってくれと懇願したというのに、拒絶され傷つけられたという想いが、司の気持ちを歪ませ再び鎧を纏わせ、自分の本当の望みからも目を背けさせていた。
 本当の望み―――それはおそらく誰でも抱くであろう、本当にごく普通であたりまえの望み。
 好きな女に好かれたい。
 優しく微笑み返され、自分だけを見つめて欲しい。
 そんな単純な想い。
 『……でしょうか?』
 「え?」
 物思いに耽るあまりに、つくしの母親の話を聞き逃していた。
 「すみません、聞き逃してしまいました」 
 悪びれることなく、率直に謝罪する。
 『あら、いえ、あたしこそすみません。お疲れのところを長々と長電話してしまって。お忙しいところを申し訳ありませんでした』
 「…いえ、新しい住まいの話でしたか?」
 あるいは夫の仕事の話か。
 つくしの父親は、勤めていた会社をリストラされ、それにつれて、牧野一家は社宅だった住まいを転居しなければならない事態に直面していた。
 しかし、そんな牧野一家の幸運はまさにつくしの母親が言うとおり、司に娘が見初められたことだったのだろう。
 つくしの両親は社交界にいる女狐や古狸ほどにはあからさまではなかったが、当然のごとくそうしたことを司に相談し、彼からの好意を喜々として受け入れていた。
 別に司にしてみればそうしたことは珍しい話ではないし、彼におもねり彼からより多くの物を引き出そうとする人間こそ普通の反応だったから、いまさら何を思うこともない。
 つくしだけが違ったのだ。
 ただ普通だったらそんな連中を視界に入れることすらなく、一顧だにすることもなかったが、つくしの両親であるというただその一点だけで、司はつくしの両親を無視することなく、唯々諾々と彼らの内心で求めていた支援にも応えた。
 暗黙の了解。
 おそらくつくしの両親には娘を司に売り渡したという自覚すらなかっただろう―――いや、もしかしたら無意識の自覚でわかっていたのか。
 年頃の娘を、同年代の男の家に同居させることに否やを言うどころか、疑問さえ感じずに受け入れていることこそ彼らの答えだったのかもしれなかった。
 …ま、それでうるせぇこと言われねぇなら、安いもんだし。
 そして、司の認識もまた、まるで自分がペットショップで気に入りのペットを購入してきたかのように、そうしたやりとりに疑問を覚えることなく、つくしがそれをどう思うかということを想像することすらしていなかった。
 「もし、お気に召さなかったようなら別の住まいをご用意することもできますし、仕事の方もいくらでも口利きできますから。なにかご不満なことや不自由なことがあれば、遠慮なくおっしゃってください」
 『いえいえ、とんでもない。そうではないんですよ。主人も私も道明寺様の過分なお心遣いに感謝することはあれ、不満だなんて。…その、そうではなくて、つくしのことなんです』
 「……つくしさんの?」
 『はい。もちろん、あたしどもは、あの子が道明寺様に可愛がっていただいていることをありがたいことだと思っていますから、感謝しこそすれなんの不満もありませんし、不安に思うようなこともありません。ですが、お屋敷にもう何ヶ月もお世話になりっぱなしですし、そのぉ…できれば、そろそろあの子の顔も見たいんです。最近ではロクに電話にも出てくれなくて、ちょっと心配というか、いえっ、とにかく元気な顔を見たいと思いまして』
 「…心配ですか」
 司は鸚鵡返しに返事を返しただけだが、そこに何か含みを勝手に感じたらしく、つくしの母親は焦ったように言い訳をする。
 『も、もちろん、道明寺様にお世話になって、何も心配するようなことはないのはわかっているんですがっ。ただ、そのっ、あたし共の近況もあの子に知らせて、安心させてあげたいんです。つくしにはここのところ心配させてばかりでしたし…何よりまだ高校生ですもの』
 「……………」
 司は無意識に口に含んでいた親指の爪先を噛んで顔を顰める。
 『その、少し里帰りと言いますかしら?冬休みの間だけでも、あの子をうちに帰らせたいんですけれど、ダメでしょうか?』




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