「愛してる、そばにいて」
第5章 罰①

愛してる、そばにいて0342

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 ドンッ!
 一応はおざなりにつくしの部屋のドアを一叩き、ノックをして無造作に開け放つ。
 返事はなかったが、いつもならそのノックさえしないのがほとんどのことなのだ。
 「おい、何やってんだよ?もう車出すぞ?まだ仕度できてねぇのかよ?」
 内心の気後れなどまったく表に出さず、司はズカズカと寝室にまで進んだ。
 しかし、いつもは決まった時間に身支度を整え、この時間帯には通学の準備を完了しているはずのつくしが、まだ寝巻き姿のままベッドの上にボウっと座り込んで、ぼんやりと窓の外を見ているのに司の足が止まる。
 ベッド脇を見れば、不安そうにつくしを見ていた彼女つきのメイドが、司の視線に気がつき慌てて会釈を返した。
 「…なに、こいつ飯もまだ食ってねぇの?」
 ベッドサイドのサイドテーブルには、いまだ手つかずのままの食事が乗ったトレイが。
 よほどのことがないかぎり、司は毎朝つくしの通学に合わせて起きて、食事に付き合わせている。
 それどころか、彼女のベッドで一緒に過ごすことも少なくなかったから、そうした朝はつくしの意志は別にして、寝室に食事を運ばせることもなくはなかった。
 だが、今日の場合は、司的にもさすがに気まずく自室で休んでいたし、また昨夜の深酒が祟って朝食をスキップしていたのだ。
 「まさか、こいつ寝ぼけてんわけ?」
 「それが、どうやら昨夜はあまり寝てらっしゃらなかったようなんです。それでも、準夜勤担当の小川の時には逆にウツラウツラとしてらして、夕食も召し上がらなかったと聞いているんですが…」
 「夕飯もかよ」
 司が眉根を寄せる。
 「はい。私が朝交代して、起きてらっしゃるのに気がついた時には、牧野様はすでにこの御様子で」
 あきらかに困惑していて、また心配しているらしいのが見て取れる。
 不快な何かがモヤモヤと胸に湧き上がって、奇妙な不安に急かされるようにして、司はつくしのそばへと足を進めた。
 「おいっ、いいのか?遅刻すっぞ?」
 先程までの気まずさや躊躇を振り払い、振り向こうとしないつくしの肩に手をかけ、強引に振り向かせる。
 さぞや憎しみに満ちた視線を向けられることだろうと思っていた。
 あるいは、拒絶の言葉を吐きかけられるに違いないと予想していたのに、つくしの反応はそのどれでもなかった。
 「お…い?」
 虚ろな目が無感動に司を見上げて、そのままスッと反らされる。
 無視をした…というより、無関心というのが一番近いか。
 ゾッと背筋を這い上った恐れに突き動かされ、司が手に力を込め、痩せ細って頼りない華奢な肩をガシガシと乱暴に揺すぶる。
 「ぼ、坊ちゃんっ」
 「聞いてんのかよ!行かねぇなら、行かねぇでなんとか言えっ!!」
 さすがにそれでつくしも我に返ったらしい。
 2度3度と目を瞬かせて、ハッと司を見返した。
 光の失せて虚のようだった瞳に光が蘇り、焦点が結ばれる。
 「いたっ」
 「…チッ」
 上がった悲鳴に、舌打ちを打って手を離す。
 それでも人形じみていたつくしの顔にも表情が戻っていることに、司は内心で安堵していた。
 「たく、ボウッとしやがって、さっさと返事をしねぇからだろ」
 「……………」
 「もう8時すぎだぜ?お前、いつもこの時間にガッコ行くだろ?」
 無造作に頭に触れ髪を撫でれば、ビクッと震えて、つくしは顔をうつ伏せ、予想通りに彼を言外に拒絶する。
 それが腹立たしくないわけではなかったが、その横顔の涙の痕や泣き過ぎたせいだろう浮腫んで腫れた頬や瞼が…昨日の苦痛に満ちた泣き声が、司の感情をセーブさせ努めて穏やかな声を出させた。
 「…行かねぇの?」
 「行かない」 
 …マジかよ。
 聞いてはみたものの、意外すぎる答えに念を押してしまう。
 「マジ?」
 「………」
 今度はおざなりに頷くのみで、返答が返らない。
 それでもそれでどうやら本気らしいと司にもわかって、思わずマジマジとその横顔に見入ってしまう。
 しばらくそのまま、つくしを眺めていたが、それ以上彼女が自己主張するつもりがないらしいのに諦め、小さく息をつき司も頷いた。
 「そうか。まあ、いいけどよ。…メシくらいは食えよ」
 「……………」
 「そんなら俺ももう一眠りすっけど、もし気が変わってガッコに行くつもりなら、車使えよ?間違っても、歩きとか一人で行こうとすんなよ?」
 もう少しなにかしらのリアクションが欲しかったが、つくしは聞いているのかいないのか、ぼんやりと俯き返事を返さない。
 反抗しているだとか、わざとそう装っている風情でないのが妙に寒々しく、何であろうと無理強いしあぐね、司もまたメイドと同じく困惑していた。
 「…飯くらい食え」
 仕方なくそれだけを言い置いて、司はつくしの返事を待つことなく彼女の部屋を退出した。




*****




 それから一週間―――つくしが学校へ登校することはなかった。
 最初は好きにすればいい、どうせそのうちまた通い出すだろう。
 少しづつ澱のように溜まってゆく不安を見て見ぬふりで、むしろつくしに付き合って朝早く起きなくてもいいじゃねぇかとうそぶいていた司だった。
 …別に無理して学校になんか通わねぇでも、勉強したいなら家庭教師雇えば済むことだし?
 しかし、その状態が一週間も続くとさすがの彼にしても、つくしの異常を無視しきれず認めざる得ない。
 「…また、メシ食ってねぇのかよ」
 「坊ちゃんが勧めてくだされば、なんとか多少は食べてくださるのですが」
 勧める、というよりは命令だったが、たしかに司が叱咤すれば幾分か口にしているようだが、それでも以前の食欲旺盛だった彼女とはまるで様変わりしていた。
 当然、痩せ過ぎているくらいにガリガリだった体もますますやせ細って、華奢な魅力よりも不健康さが目立ち、瑞々しくスベスベだった肌もカサつきが目立ち始めている。
 様子がおかしいとは言っても、司が―――というか、誰かしらが強く呼びかければ一時的には我に返るし、ブツブツと何かを言うとか徘徊するとかいうわけでもない。
 だがどうやら不眠にも陥っているらしく、一日の大半を無気力にボウッと過ごし、すっかり表情が乏しくなってしまっていた。
 もちろん笑うどころか、怒ることさえもない。
 そうかと思えば、突然無表情のままハラハラと涙を流し出し、そんな自分につくし自身が驚くということがたびたびあって、さすがの司にも彼女の異常さを深刻に捉えないわけにはいかなくさせていた。
 …医者に診察させるか。
 「―――坊ちゃん」
 いつの間にか司は物思いに耽ってしまっていたようで、声をかけられるまで執事が部屋に入ってきていることに気がつかなかった。
 「申し訳ございません、何度かお声をかけたのですが…」
 「…なんだよ?」
 普段だったら許可を得ることなく、使用人が勝手に入ってくることなど朝の時間帯を除けばまずないことなのだが、よほど緊急のことなのだろうかと怪訝に問う。
 「いえ、それが、牧野様のご実家からお電話が入っておりまして」
 「…牧野の?」
 「はい、ぜひ坊ちゃんにご相談したいことがあるとかで、お母様からです」
 



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