「愛してる、そばにいて」
第5章 罰①

愛してる、そばにいて0337

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 癇症に眉間のシワを寄せ不貞腐れたような司の顔の表情が、けっして彼にしても初耳ではないことをあきらかにしていたが、さりとてすべて承知のことではないことがその様子で二人にも知れる。
 「…まったくのガセってわけでねぇようだな」
 総二郎に言い当てられ、司の顔がますます不機嫌に歪んだ。
 「怖ぇえ…司、お前、その顔マジでやめろ。凶悪すぎ」
 「……ふざけろ、総二郎」
 あきらが司へと携帯電話を滑らせ、先ほど検索した記事を指し示す。
 「T●M●には、お前らが未成年つーことで顔写真やプロフィールは載ってねぇが、ネットには相手の女の情報もそれなりに載ってる」
 「ふぅん、画像、あんまり良くねえけど、けっこうイイ女ぽいじゃん。深窓のお嬢ってイメージじゃねぇが、大河原と道明寺ならお似合いなんじゃねぇの?」
 お似合い…と称しても、人物ではなくあくまでも家と家の釣り合い。
 携帯電話を覗き込む総二郎とは真逆に、当人の司の方はチラリとも関心を示さない。
 「お前、知ってたんだろ?」
 「…昨日、ババアから聞いた」
 「昨日っ!?」
 「…お袋さん、日本に帰国してたのか」
 それぞれ総二郎とあきらが違うところで驚き、司を見やる。
 「さすが、鉄の女。やることが早ぇな。昨日の今日でもう雑誌に掲載かよ」
 「つーか、司に知らされたのが昨日ってだけで、話自体は、もうとっくの昔についてたんじゃねぇの?」
 フンと鼻を鳴らすだけだが、司も同意なのだろう。
 自分のことだというのに、それでも彼があくまでも他人事なのは、それがいつものことだったからだ。
 彼の人生は常に家の都合で左右されていて、そうではない時はほとんど放任という名の放置をされているのに等しかった。
 「あれだろ?大河原家って言ったら、アメリカの石油王と提携組んだ日本で一二を争う同族企業だったよな」
 「さすが道明寺家。選ぶ相手が違うが…婚約どうこうはともかくとして、司、お前も一応はこのお嬢と会ってるんだろ?どうだったんだよ?」
 「…いや」
 「え?会ってねぇの?」
 「ないな」
 さすがに驚いて、総二郎とあきらが顔を見合わせる。
 「うちの財閥は唯一石油が足らねぇからな。あのやり手ババアが考えそうなことだけどよ」
 「このお嬢って、たしか海外にいるとかじゃなくって、日本だよな?」
 総二郎があきらから渡された携帯電話のページをくって、ざっと目を通す。
 しかし、あきらもある程度前情報は仕入れていたのだろう。
 「永林らしいぜ。俺らとタメだ」
 「へぇ?」
 「…どちらにせよ、俺には関係ない話だな」
 「……………」
 「……………」
 司の態度はまるっきり無感動、無関心。
 自分の将来を自分の知らないところで勝手に決められていたというのに、あくまでも淡々としていて、まるで他人事だった。
 しかし、実際には彼が言うほど簡単なことではないことは、総二郎やあきらばかりではなく司自身が一番よくわかっていることだろう。
 そんな自分の宿命に反抗して、荒れ荒んできたのだ。
 「それにしてもずいぶん乱暴な話だな。相手もあることだろ。向こうだって大事な一人娘を嫁がせようって言うんだ。それなりに思うところあるだろうしよ。カタチだけにしたって、普通一応は本人たちを引き合わせた上でっつーのが筋じゃねぇの?」 
 あきらの問いかけに、司はそっぽを向いたまま答えない。
 特に司の家は特殊だったから、引き合わせられた=結婚が本決まりでもおかしくはないのはたしかではある。
 似たような環境に生まれた総二郎やあきら、そして類の未来も、やはりある程度決められた規定ラインの結婚を課せられるのは間違いなかったが、それにしてもどうしても合わない相手というのはあるし、それでも彼らにはある程度の選択肢は残されていた。
 そこでふとあきらが気が付く。
 「あれ?この令嬢って大河原の一人娘だよな?司、お前が婿入るのか?」
 「そりゃねぇだろ。いくら上に姉ちゃんがいるにしても、司は一人息子だし、姉ちゃんもとっくに嫁いじまってるんだぜ?そこんとこなんか聞いてねぇの?」
 「……ババアの心づもりなんて知るか。どうせ、ロクでもねぇ皮残業してんだろうが、そんなことわざわざ俺に言うような女じゃねぇからな」
 本人のこと、しかも‘結婚’だというのに。
 総二郎とあきらもさすがに同情する。
 とりあえずはと、「皮残業じゃなく、皮算用な」と小さく口の中で呟き、あきらが気を取り直して先ほど思い浮かんだ推測を口にした。
 「それはともかくとして…だ。この急展開は思うに、牧野のことがお袋さんたちの耳に入ったんじゃないか?」
 「ああ、牧野か。カタチだけでも交際だなんだの途中経過すっ飛ばしての婚約発表だもんな………そりゃ」
 二人が視線を流した先、フンと鼻を鳴らして薄笑いを浮かべるばかりの司は肯定も否定もしなかったが、それでも黙々とグラスに酒を注いで飲み干すその態度が肯定している
 「もしかしてもうすでに、なんかあったんじゃないか?」
 「司、言えよ」
 総二郎に急かされ、しかたなく司も重い口を開く。
 「…昨日、釘を刺された」
 「釘って」
 「いいかげんお遊びはやめにして、節度ある生活をしろ。…屋敷に連れ込んだ野良猫は処分しろとよ」
 「野良猫ってお前」
 「それって…」
 「野良猫にはやるものやって、元の場所に戻してこいっつーてたな」
 痛烈な侮辱の言葉に、さすがの総二郎やあきらも顔を顰め「「きっつ~」」とハモった。
 しかし楓が言ったセリフ自体にはさもありなんと大いに頷く。
 「言いそう、お前のお袋さんなら」
 「俺らにも、こんなヤツらといつまでもツるんでいたら、脳ミソ腐る的なこと言ってたもんな」
 「屋敷の使用人から報告いったか…」
 これまで大抵の司の無軌道は許されてきた。
 以前、学園内で同級生を半殺しにして、内臓破裂させたことでさえ大した咎めだてがなかったことは、今の司を見てもあきらかだ。
 一応はそれなりに司も親から注意をされたらしいが、だからといって司が懲りるようなものではなかった程度のことで、相手方の親は圧力と金のチカラで黙らせ、世間的にも闇に葬られたという過去もある。
 「どうだかな…親父にしてもババアにしても、滅多に日本に寄り付きもしねぇし、たまに帰ってもほとんど屋敷をスルーしてトンボ帰りだ。屋敷の連中もバカじゃねぇから、一々ババアに俺のことを報告して、俺の怒りを買うようなマネするヤツもいねぇ。逆にババアに無能のレッテル貼られて、監督不行届を咎められかねねぇしな」
 道明寺家の使用人にしても辛いところだろう。
 たとえ司の管理を任されたところで、司の気性からしてそうそう管理しきれるものではない。
 道明寺家の給金や待遇については、他の富裕の家に比べても破格であることは知られていたが、その分厳格さでも知られていたし、実際に、道明寺家のシェフやスタイリストなどどんなにその世界で名を馳せた人間でも、楓や司の一言で首を切られ、その世界で二度と浮かび上がれなかった話など、そうした話には枚挙がなかった。
 そして幼馴染みのあきらや総二郎もそうした出来事を実際に見聞きしていて、いくら親友とはいえ司にはある一定の遠慮もある。
 「じゃあ?」
 「わざわざ聞かれもしねぇことをご注進しやしねぇだろうけど、あるいは、今回、大河原ん家とそういう話が持ち上がったから、あらためて俺の身辺探らせたのかもな」
 親子でありながら、相変わらずの冷え冷えとした親子の間柄に、総二郎もあきらも何も言うことができない。
 「…大河原家にもなんかあんのかもな」
 「司みたいに娘が道ならぬ恋でもしてるってか?」
 「あるいは娘が司に一目惚れとかあるかもよ?」
 場の重くなってしまった空気を軽くしようとか、総二郎とあきらが軽口を叩くがまったく功を奏さず、結局一同沈鬱な表情のまま黙り込む。
 あきらがわずかに視線を泳がせ、何事かを躊躇しているように二度三度と口篭っては口を開くことを繰り返し、やがて逡巡を振り切ってあらためて口火を切った。
 「お前、結局、牧野のことはどうするつもりなんだ?屋敷に住まわせてるんだろ?…こんなことにならなくても、いずれお袋さんたちの耳に入れば、そのままでいられたわけがないことはお前だってわかってんよな?」




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