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「愛してる、そばにいて」
第5章 罰①

愛してる、そばにいて0334

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 激情のまま、司がつくしのワンピースの胸元をわし掴んで吊り上げる。
 軽い体は簡単に浮き上がって、つくしはさっきまでの激しい罵倒とは裏腹に、抵抗らしい抵抗をすることもなく引きずり寄せられるまま、ダラリと体の力を抜いて司に身を任せ、まるで観念したとでもいうように目を瞑ってただ涙を流し続けていた。
 そのあまりに絶望しきって憔悴した顔に、沸騰していた司の頭もスッと冷えて、むしろ逆に何とも言えない胸の悪さと痛み、やるせなさに顔を背ける。
 …なんで。
 なんで、どうして、まさに今の彼の思いはそれだけだ。
 けっしてつくしを苛みたいわけでも泣かしたいわけでもないのに、気が付けば抑えきれない感情に振り回され、彼女を傷つけ、結果的に彼女の好意を得るどころか更に彼女に嫌われ憎まれるという悪循環に陥ってしまっていた。
 それでもここまで関係がこじれてしまう以前―――彼女をこの屋敷に連れて来る前までは、たとえ嫌われているにしろ、まだしも今よりは彼女との関係は友好的なものであったように思う。
 …今はこんな顔しかしないこいつだって、俺に笑いかけた時もあるんだ。
 たとえ類に向ける笑顔とはまるで違うものであったとしても、からかう彼に怒る顔さえ、今よりもずっと明るく溌剌としていた。
 それなのに…。
 青白い顔で力なく泣き続けるだけの非力な女を、締め上げていた手をゆっくりと下ろして解放する。
 トサッ。
 「………勝手にしろ」
 わずかに震えを帯びた弱々しい声音が自分の口から出たことに、司はすぐには気が付けなかった。
 虐げられ、弱者の悲哀を噛み締めているだろうつくしよりも、頼りない気さえする自分の声に笑えてしまう。
 「お願いよ、道明寺。…もう、あたしのことを解放して」
 「まき…の」
 「あたしは、絶対にあんたのことを好きになんてなれやしない。あんただって、あたしのことが好きなんじゃない。ただ意地になってるだけ…もう十分でしょ?もうあたしも十分思い知った…よ。だから」
 「……………」
 彼女はなにを思い知ったというのか。
 彼が好きだという言葉を完全否定して、信じようともしない女の嘆きが、刃となって彼の心に突き刺さる。
 「だからお願い…苦しいの。苦しくて、悲しくて…すごく辛いよぉ」
 つくしの哀しみが、彼女の感じている苦痛が痛みとなって、司にも感じられる気がした。
 けれど、それならば…。
 …なら、俺は。
 「なにをやれば、お前は俺のものになるんだよ?」
 「なにもいらない。…あんたから欲しいものはなにもないの。だから、ふっ…う……うっ、…お願い、お願い!もう、あたしをこの屋敷から出して」
 …あんたから逃げさせて。
 無言のまま、司はベッドから立ち上がる。
 咽び泣く女の悲痛な泣き声を背に、振り向くことができないままに。
 彼からは何も欲しくない、望みはただ彼から逃げたいだけなのだと、それだけを願う女の懇願に引き裂かれるような胸の痛みを堪えながら、司はつくしの部屋を後にした。
 キィ、バタン。
 いつまでも、つくしの悲痛な泣き声が追いかけて、司の胸を昏く塞いだ。




*****




 「お、司、珍しいな」
 ここしばらく顔を合わせていなかった総二郎が、クラブに顔を出した司に気がつき片手を挙げ合図してくる。
 促されるまま、彼の横の席にドカッと腰を下ろし、総二郎の両サイドの女たちの興味津々な視線を嫌って、司は不機嫌に顔を顰めた。
 「…なんだよ、久しぶりに顔を合わせたと思ったら、またずいぶんご機嫌ナナメじゃんか」
 「そいつら追っ払えよ」
 低い声音の威嚇に、やれやれと彼の性格を熟知している総二郎が、司のご要望どおりに女たちを追い払う。
 「ごめんねぇ~君たちぃ。悪いけど、これから男同士で内緒話するから席外してくれる?また今度連絡するからさ」
 「ええっ~~」
 「そんなぁ、あたしたちも一緒に混ぜてよぉ」
 甘ったるい声音で司へもおもねろうと愛想笑いを向ける女を、司がギロッと睨んで威圧する。
 その視線だけで怖じけついて、ごねていた女たちもあっさりと席を立った。
 「じゃ、じゃあ、西門くん、またね」
 「また、連絡してね」
 「おう」
 如才なく手を振り女たちを見送って、総二郎が司へと向き直った。
 「で?なにをそんなにカリカリしてんだ?この前はこの前で、久しぶりに類もガッコに顔を見せたから、F4揃って飲みに行こうぜって話だったのに、いきなり黙ってフケやがっただろ?」
 「……………」
 「類を呼びに戻ったはずの肝心のお前の方がいなくなるって、いったいどういうことだよ?その後も、全然こっちからの電話に出やしねぇし、お前から連絡してきもしねぇ」
 詰る総二郎の言葉にもだんまりだ。
 「…まったく、一時期異様にご機嫌だったと思えばハァ」
 総二郎はいつものことだとさっさと諦めて、通りかかったバーテンダーに酒の追加を頼んで、司へも振ってくる。
 「お前は?」
 「…ウォッカ」
 「ウォッカぁっ!?平日の夜からそれかよぉ」
 「別に平日だろうが、休日だろうが、俺らには関係ないだろうよ」
 司の言い草に総二郎も肩を竦めて、それでも要望通りに酒とつまみを注文してやる。
 「まあ、そりゃそうだろうけどよ。一応、一般人?の皆さんに合わせて常識的にってやつ?」
 
 「………ふん」
 すぐに配膳されたショットグラスに酒を注ぎ、ぐっと飲み干す。
 キンキンに冷やされたストレートの強い酒のとろっとした旨味が広がって、瞬間カッと喉を焼いて臓腑に染み入った。
 「総二郎」
 「ん?」
 「女はなにをしてやれば、喜ぶんだよ?」
 「…………は?」




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