「愛してる、そばにいて」
第5章 罰①

愛してる、そばにいて0333

 ←愛してる、そばにいて0332 →愛してる、そばにいて0334
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 ドアをノックしようと手を伸ばし、だが叩くのを躊躇してはその手を止める。
 何度となく繰り返した手順を再び繰り返しても、中々思い切りがつかない。
 煮え切らないそんな自分の怯懦に、司はイラついていた。
 …チッ。
 司は、今日何度目かの舌打ちを内心で溢し、結局はノックを省いて、いつもどおりにドアを開け放つ。
 ガチャ、バン。
 「………」
 見回した居間には、やはりつくしの姿はなかった。
 予想通りだったが、それはそれで一度は乗り越えたハードルが再び立ち塞がった気がする。
 しかし、さすがの司もいつまでもウジウジと思い悩むのにもいいかげん飽きて、その勢いのままさっさと寝室へと向かう。
 ガチャッ、バァンッ!
 意気込みすぎてつけすぎた勢いに、ドアが大きな音を立てて閉じる。
  「おいっ」
 寝室に踏み入るのとほとんど同時、まるで怒鳴りつけるようにして声をかけた司の視線の先、こんもりと膨らんだベットの布団の丸みが見える。
 …いた。
 しかし、つくしは寝てしまっているのか、ドアを背にベッドに横たわったまま、賑やかな音を立て入室した司の気配にもピクリとも動かない。
 司は別に不機嫌だったわけではなかった。
 しかし、憮然としたフリでもしていなければ、昨日の今日でバツが悪く、なにをどう彼女にアプローチすればいいのかわからなったのだ。
 ドカドカと足音荒くベッドの脇へと歩み寄り、うんでもすんでもないつくしを傲然と見下ろす。
 つくしはやはり寝てなどいなかった。
 透けるように青白い頬に涙の筋をつけたまま、ボンヤリと窓の外を見ていた視線を、チロリと一瞬だけ無感動に司へと流して、再び窓の外へと戻してしまう。
 全身で彼の存在を拒絶しているのは明らかで、どれくらいそうしていたのか、つくしはまるで壊れた人形のようにどこか危うくアンバランスだった。
 「…なんだよ、寝てねぇんじゃん」
 普段は自分の言動に迷うことなどないはずの司が、たったそれだけのその一言を口にするのをひどく躊躇した。
 それを彼女に悟られるのがイヤで、殊更傲慢さを装い、まるで昨夜のことなど微塵も気に病んでいないかのような何食わぬ口調で続ける。
 「倒れたっつーから、どんだけ重病かと思ったじゃねぇか。見たところ別にどっか悪いって感じでもねぇし貧血かよ?」
 「……………」
 居た堪れない。
 落ち着かない気持ちに、キョトキョトと自分でも挙動不審にあっちを見たり、こっちを見たりを繰り返し、…結局、そうして立っていることが一番落ち着かず、司はつくしの寝ているベッドの脇へと腰を下ろした。
 「その…なんだ。昨日は…えっと…まぁ、俺が…やりすぎたよ、な」
 なにを言ったらいいのかと空転する思考に、自分でも意外なセリフが飛び出して、ギョッと驚いてしまう。
 が、そんなまるで阿るような自分のセリフに、どれだけプライドが傷つけられるかと思っていたのに、不思議にいざ口にしてみれば、むしろ言い切った奇妙な達成感と安堵に変な緊張が解れて、思わぬほどサラリと自分の非を認める言葉が出た。
 「………悪かったよ」
 ピクリと動いた肩の震えで、彼女が司の話を聞いていないわけではないことがわかった。
 それに勢いを得る。
 「マジ、あそこまでやるつもりじゃなかった。…言い訳するわけじゃねぇけどよ、酔ってたし…お前がババア、俺の母親に俺とのことで何か言いつけて、逃げようとしてるとか思ったら、ついカッとしちまってわけわからなくなったんだよ」
 ドキドキと鳴る心臓の音は、とても自分のものとは思えない。
 司にとって自分の非を認めて他人に告げるのも初めてなら、それを言うのに緊張するのも初めての経験なのだ。
 意味もなく何度もゴクリと唾を飲み込んでは唇を舐め、向こうを向いてしまっているつくしの顔を見ては反らすことを繰り返してしまう。
 打ちしがれて涙に暮れる彼女の横顔はひどく弱々しく儚げで、可哀想で…慈悲や優しさの持ち合わせなどロクに持ち合わせていないはずの司の胸までもが痛んだ。
 彼女を泣かせているのが、誰よりも自分なのだとわかっていたけれど。
 …泣かせたくない。
 泣いている彼女を慰めて、少しでも笑わせてやりたいと、そんなことを思う。
 「…大丈夫か?」
 ゴクリ。
 今度唾を飲み込んだのは、つくしの方だった。
 「聞いたぜ。…シャッツの死体を見て、倒れたんだってな?あいつのことは…その…可哀想だったけど、よ」
 ジッとつくしの横顔を眺める司の眼前、じんわりとつくしの目尻に涙が湧き出して、ポロリポロリと透明な雫となって、ここ数ヶ月で窶れてしまった丸みのない頬を伝い落ちる。 
 スンスンと鼻を啜り、小さく啜り泣く彼女の姿に堪らなくなった。
 つくしは勝気な少女だった。
 どんなに集団でいじめられても、勇敢に頭を上げ、けっして誰にも屈せず、強い眼差しと明るい笑顔で輝いていたというのに。
 「泣くな」
 司はせめて少しでも慰めてやろうと、涙を拭う為につくしの頬へと手を伸ばす。
 「あんまり…気を落とすなよな。その…なんだ、お前が寂しいなら、また新しい犬、買ってやるし?」
 「……っ!!」
 彼女の肌に指先が触れる寸前―――。
 パシッ。
 「………っ」
 手を弾かれた。
 何が起こったのか、司は一瞬理解しかねて、そんな彼女を呆然と見つめた。
 今や横たえていた体を起こして、司を睨み据えるつくしの涙に濡れた目は、彼への怒りと憎悪でギラギラと燃えていた。
 「触らないでっ!」
 「!」 
 「触らないで、このケダモノっ!!その汚らしい手であたしに触れないでっ!!」
 目を見開き、驚きに言葉を詰まらせていた司だったが、しかし、つくしの自分を拒絶する辛辣な悪態に、彼女への憐れみに凪いでいたはずの頭にカッと血が上った。
 「なにぃっ!もう一度言ってみろっ」
 「何度でも言ってやるわ。人でなし、この化物っ。あんたに触られると虫唾が走ると何度も言ったでしょ!?」
 「てめっ、この俺にそんな口をきいてただで済むと思ってんのかっ」
 司の口も止まらない。
 「なに?シャッツの次はあたしを殺しでもする?殴って言うこと聞かせて、レイプして、何があたしのことが好きよ?なに面白くもない冗談言ってんの、どんな遊びだっつーの!?ふざけんじゃないわよっ!!」
 自分の告白を逆手に取られ、嘲られた屈辱に司の怒りが爆発した。
 「てめぇって女はっ、バカ犬が死んだくらいじゃ、まだ懲りねぇみたいだなっ。そんなに仕置されてぇなら、お望みどおりにしてやるよ!」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0332】へ
  • 【愛してる、そばにいて0334】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0332】へ
  • 【愛してる、そばにいて0334】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘