「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き①

夢で逢えたら142

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 周囲の取材陣たちを押しのけるように、一人の快活そうな白人女性がつくしの前に躍り出た。
 年若いカメラマンを付き従え、無遠慮にマイクをつくしへと突きつけながら、怒涛のように質問を浴びせかける。
 「今日発売の、洲崎麻紀乃さんの自叙伝はお読みになりましたか?」
 「は?」
 何のことか戸惑うつくしが、目を瞬かせ、身を半歩ひく。
 完全に虚を突かれ、戸惑っていた。
 「洲崎さんの自叙伝の中に、あなたのことと思しき女性が出てくるんです。メイルズフォート病院に勤務されていた女医のDr.S.C.Mというのは貴女のことですよね?現在の道明寺司氏の恋人であり、婚約者である洲崎さんから略奪愛をなさったという」
 大きく見開かれていたつくしの目がショックで虚ろのなり、次第に眉根が歪む。
 「…な、何なの?それ。洲崎さん?自叙伝?略奪って…いったい」
 半ばつくしを独占するような状態だった女記者の横合いから、業を煮やした中年の記者が、女記者とは異なり悪辣な表現でつくしへと迫ってきた。
 「マーベル医師!あなたが洲崎麻紀乃から道明寺氏を奪い、他の女性たちと手を切らせた経緯についてぜひ、答えていただきたい!あるパーティでは氏の愛人疑惑のあったウィンチェスター次官夫人を侮辱してひと悶着あったとか!?何か、医師として倫理観に恥じることがあるのでは?」
 ライバルたちが次々、つくしへとアプローチするのを見て、興奮状態に陥ってきた他の記者たちの意識も過熱し、つくしがろくに反論しないうちに、当の彼女を巡って押し合いへし合いの大混乱のていをなし始めた。
 つくしはあまりのことに、茫然とし、押しくらまんじゅうのようにもみくちゃにされるがままになってしまっている。
 見かねたマンションのガードマンが、つくしを混乱の中から救い出そうと健闘するも、人混みの中に割り入れない。
 「…ちょっ!やめて、放して。通らせてくださいっ!!ちょっとっ!!」
 必死で叫ぶつくしの声ももはや誰にも通らず、そのうち、つくしも身の危険を覚えてきた。
 やだ、どうしようっ。
 「…っわ!」
 「ぎゃっ。な、なんだ?」
 聞こえてきた声に、いつの間にか閉じていた目を開け、つくしが周囲を確認すると、3、4人の屈強な体格のスーツの男性たちが、つくしを取り囲んでいまにも押しつぶそうとしていた報道陣の襟首や腕をとり、彼女の周囲から少々手荒に引き離している。
 気色ばむ記者たちも、男たちの身を包む只者ならざる鋭い刃物のような気迫と、鍛え抜かれた体躯に気後れし、引きはがされるままに手をこまねいた。
 その合間から、冷然とした女がすり抜け、つくしの横に立って彼女背に手を当てた。
 「…え?」
 「Dr.マーベル。一緒にいらしてください。このまま、こちらに留まってもますます騒ぎになって厄介ですし、マンション内に戻っても、そうなるとこの騒ぎが収まるまで二度とは外へは出られないでしょう。どうされますか?」
 「あ、あの、あなたは確か…」
 薄らと微笑む美しい女は、以前にメイルズフォート病院の廊下でつくしのバラまいた荷物を拾ってくれた、司の第二秘書・高瀬冴子だった。
 

 結局、どちらにしろマンションに戻っても、今度は外に出られなくなると言う高瀬の助言に従い、周囲の住民への迷惑も鑑みて、とりあえずは冴子らに守られてマンションを出た。
 セキュリティはそれなりに装備されているマンションであるとはいえ、住人の誰かについて中に入られたら目も当てられない。
 マンションから出る姿を見せつけ、過熱する報道を司が押さえるまで2,3日メープル・ホテルに滞在することにした。
 仕方がない、後でレンにも連絡入れて、こっちに着替えもってきてもらおう。
 溜息をつきつつ、運転席でハンドルを握る冴子をそっと窺い見る。
 「…なにか?」
 いつの間にかジッと見ていたらしい、冴子が横目でつくしを見返していた。
 「あ、すいません。助けていただいてありがとうございました」
 「いえ、記者たちを押しのけたのは、道明寺家所属のSPたちですから」
 もしやと思っていたことが肯定され、一瞬つくしは黙り込んだ。
 「…道明寺が、私に内緒でつけていたんですか?」
 「もうしわけありません。彼らはマーベル先生が気が付かれないように密かに警護するように命じられていて、本来、このような場面では表に出ないように指示を受けていました」
 「えっと、つまり命や怪我の危険がなければ、本当は私に知られないように、助けたりしなかったということですよね?」
 「ええ」
 冴子が淡々と頷く。
 「ということは、高瀬さんが独断で彼らに指示を出して、私を助けてくださった、ということでよろしいのでしょうか?なのに、なぜ謝るんです?」
 「この場合、お助けしたことになるかどうか。彼らが道明寺家のSPであることが記者たちに知られれば、彼らの邪推をさらに煽る結果になるやも」
 「……」
 司がつけたSPであることを否定されず、結果的に肯定した冴子。
 その冴子が言った通り司がつくしに関与していれば、なおさら世間の噂通りに邪推される。
 邪推…どこでどうなっていったい、こんな事態になったというのだろうか。
 「あの…」
 「…はい」
 「高瀬さんは、今回の騒動の詳細をご存知ですか?私は、いったい何がどうなってこのような事態になっているのか皆目見当がつかないのですが?洲崎麻紀乃さんって、あの洲崎さんですよね?暴露本ってなんですか?記者たちが言っていた、道明寺に関する記事って??」
 長年激務に忙殺され、テレビなど見る機会がなかった習慣のままに、最近ではつくしはほとんどテレビは見なかった。
 そのうえ、メイルズフォート病院の看護師たちとの接触がなければ、ゴシップ雑誌などとは縁がない。
 結果、記者たちに突撃されるまで、自分が司と噂になっていることも、麻紀乃が司に攻撃をしかけ、自叙伝などを出版したことを知らなかった。
 もちろん、内容についてはいまだにわからないが、記者たちの言葉からだいたいのことは推察できる。
 だが、大半のことは司自身の問題で、つくしには直接かかわりがない。
 …たとえ、噂の中に真実の一端があり、つくしがシラを切りとおせる間柄ではないにしろ、とりあえずはスキャンダルに巻き込まれるのは御免だった。
 まったく、あの男は!? 
 「…Dr.マーベル?」 
 すっかり自分の世界に浸りきっていたつくしは、冴子の言葉を聞き逃した。
 「あ、はい、なんでしょう??」
 「ご子息をお呼びになるとのことでしたが、当方で手配いたしましょうか?」
 「あ、いえ、そこまでご迷惑おかけするわけには」
 一瞬、レンの方にもトバッチリがいったらと心配しながらも、実際には何の関わりもない未成年であることと、要領のいいレンであるから自分でなんとかしてくれるだろうと、冴子の申し出を断る。
 実際、司に対して怒りを感じていたのもあるが、これ以上よけいに関わりを持って、更なる邪推を買いたくなかった。
 やっぱり、道明寺はうちには立ち入り禁止!
 「…どちらにせよ、もうすでに渦中には巻き込まれているかと思われます」
 「高瀬さん」
 つくしの心を読んだかのような冴子の冷静なツッコミに、つくしが頭を抱える。
 その通りなのだから、反論のしようもない。
 そもそも、司と出会った17才の時から、何度となくあの男には迷惑をかけられっ放しだった。
 「お気持ちはありがたいのですが、こういう事態になったからにはできるかぎり道明寺家との接触は避けたいと思っています。SPについても、私から道明寺に連絡して引き上げてもらうつもりです。…いろいろあって、個人的に道明寺、さんと話す機会があったのは事実ですが、世間で報道されているような関係と取られるのは不本意ですから」
 「…おそらく、副社長は納得されないとは思いますが」
 つくしも同感だったので、内心大きく溜息をつく。
 実のところ、マスコミに囲まれた時、昔の嫌な思い出が湧き上がってきて、司が一緒にいなかったことを天に感謝した。
 天に…などというと大げさな言い草だが、つくしの中では過去が大きく現在の彼女とリンクしていて、無視しえないほどに大きい。
 今の彼女がキャサリン・マーベルであることも、少女の頃の彼女が思いもしなかった人生を歩んでいることも、思えばすべてはあの日に起因する。
 滋やF2の企てで別れるはずだった司とつくしが島へと運ばれ、愛を確かめ合い、共に歩むはずだったあの日。
 たくさんのマスコミに囲まれ港に降り立った彼女と司にあったのは、小さな小舟に乗り合わせた不安と互いへの想いの成就への希望。
 揺れ動く針のように行き交った思いの末に、二人にもたらされたのは17年という長い間の別離。
 もう、二度と交差するはずがない運命の二人だった。
 それが何の因果にか、この日本から遠く離れたアメリカ…NYの地で再び逢いまみえた。
 夢で逢えればいい…それだけが願いだったはずなのに、思いもしない再会を果たしたのだ。
 それならば。
 「道明寺さんは立場のある人間です。私のような人間にいつまでもかかずらわっていたりするから、つまらないスキャンダルに巻き込まれもする。…高瀬さんからも、道明寺さんに忠告してくださればありがたいですが、彼のことですから、きっと人の意見に耳を傾けたりはしませんよね?」
 「…そうですね、誰の意見もお入れになることはないかと。あえて、と申し上げれば、あなたの言葉なら、とは思いますけど」
 「ない、ない、ない。あの猛獣に言うこときかせるのは、もう無理です」
 昔、友人たちに『猛獣使い』と言われた時のようなパワーは、もう自分にはない。
 それ以前に、猛獣は年を食った分だけパワーアップしていた。
 高瀬がつくしの言い草にクスリと微笑む。
 「副社長が猛獣ですか?」
 「あ、いえ、すいません。大きな会社の副社長さんに失礼でしたよね?高瀬さんの上司でもあるし」
 「いえ、そんなことおっしゃる方がいままでいらっしゃらなかったので、意外で」
 「ああ~、まあ、そうでしょうね」
 つくしと冴子は一しきりクスクスと笑いあう。
 日頃、西田のように怜悧でとっつきがたい風情のあるいかにもできる女の冴子に、気兼ねがあったが、そうして柔らかく微笑む冴子を見ていると、存外、親しみを覚えた。
 よくよく考えれば、以前に司に脅迫された時に、動揺から書類をばら撒き、拾ってもらったおりにも具合を心配され気遣われた。
 あ、そういえば、あの時、ちゃんとお礼も言えなかった。
 いい年をした大人が何をしてるんだろう。
 「そういえば、高瀬さん」
 「はい?」
 「以前、メイルズフォート病院で書類を拾っていただいて、具合を心配していただいたおり、ろくにお礼も言えませんでした。あの時はちょっと個人的に動揺していて」
 「ええ」
 おそらく、ある程度は冴子も事情を察しているのだろうが、そっけなく合図を返される。
 だが、下手にそのことに感情を交えられるよりもビジネスライクな態度の方が、つくしにはありがたかった。
 「あのおりには、親切にありがとうございました」
 「…私にお礼を言われるんですか?」
 「へ?」
 素っ頓狂な返事を返すつくしに、冴子が苦笑する。
 「いえ。ある意味、司さまとグルである私ですし、麻紀乃様…洲崎さんは私を毛嫌いされてましたので」
 「洲崎さんがですか?」
 怪訝に見返すつくしに、冴子は視線を一瞬だけ流し、肩を竦める。
 「…いえ、お気づきになってらっしゃならないのなら、それでかまいません。もう、過去のことですし。お礼も言われることはありませんよ。具合が悪そうな人に声すらかけないほど、私は人非人ではないつもりです」
 「あ、いえ!そんなつもりではっ。道明寺だったら、声だってかけないと思うし、いや、あわわわわ」
 焦ってよけいなことをいうつくしの子供っぽい一面に面喰いながらも、冴子の唇に社交辞令ではない笑みが浮かぶ。
 病院ではつくしもどこまでもデキル医師として振舞うことに成功していて、熱意ある医者だとは思われても、大人の女としての落ち着きは失われなかった。
 それが、ここのところ少しづつ崩れてきているのはつくし自身自覚していることだ。
 「…そろそろ、メイプルホテルの正面玄関につきますよ」
 車は流れるような動作で、ホテルの豪奢な正面玄関に進入する。
 すぐに冴子が運転席を立って、恐縮するつくしの座る助手席のドアを開けた。
 「すいません、ありがとうございます」
 「いえ、仕事ですから」
 それは、ドアを開けたことに対するだけでなく、つくしが様々な礼の意味を込めて告げたことに対する返答だった。
 「では、私はこれにて社に戻ります。何かありましたら、副社長におっしゃるか、気兼ねを感じられるようでしたら私にでもご連絡ください」
 「本当に、ありがとうございました」
 冴子の車を見送るつもりで立ち去ろうとしないつくしに会釈をし、運転席に座ろうとした冴子がふと顔を上げる。
 「…Dr.マーベル」
 「え?はい」
 「副社長とお付き合いなさるおつもりなら、これからもこのようなことはたびたび起こるでしょう。それどころか、ますます激化し、あなたの身辺ばかりか、身近な人たちにも影響が及ぶやも。…私がこのようなことを言うべきではないのかもしれませんが」
 「はい?」
 冴子の真剣な顔に、つくしも居住まいを正す。
 「すべてを呑み込むご覚悟がないようでしたら、副社長のおそばを離れられるべきかと」




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