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「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙②

愛してる、そばにいて0323

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 「君は俺を信じていなかったし、そもそも最初から、俺のことを愛していなかった」
 隼斗の糾弾に、つくしが言葉を詰まらせたのは、おそらく突然のことだったからでもなく、的外れだったからでもなかった。
 「男としての俺に惹かれたから結婚したんじゃない」
 「隼斗…さん」
 弾劾しておきながら、つくしの返答を聞きたくない、彼を軽蔑する彼女の顔を見たくないとでもいうように、片手で顔を覆い隼斗は彼女から顔を背け吐き捨てた。
 「君が欲しかったのは、陽太だろ。陽太に自分の息子を重ねて、俺への同情や共感、…哀れみを愛情にすり替えた」
 「……………」
 それでも、彼のことも愛しいと思った瞬間がたしかにあったのだ。
 恋ではなく、隼斗の言うとおり男としての彼に惹かれたのではなくても、隼斗の持つ慈愛、父性に惹かれたのは本当だったのに、つくしはそれをもはや口にすることはできなかった。
 その機会を奪われた―――当の、隼斗によって。
 「陽太を自分の息子の身代わりにして、自分の中の罪悪感や喪失への埋め合わせにしたくせに、やっぱり君は陽太の母親にもなりきることができなかったじゃないか」
 「あたしはっ」 
 あたしは…何を言おうとしたのだろう。
 「陽太の治療には金がかかることを知っていて、君は俺に何も打ち明けてくれはしなかったし、陽太を救う可能性への選択肢が増えることになるかもしれないと俺が訴えても、次の子を作ることに対しても消極的だった!」
 「……っ」
 「美沙ならっ…陽太の母親なら、きっと賛成してくれただろう。たとえどんなことがあったにせよ、あいつの生命を救うことを第一に優先してくれたはずなんだ!」
 顔を上げた隼斗の顔色は土気色で、だが拗けた笑みを浮かべた顔は、ゾッとするほど醜悪で…憐れを催すほどに生気が失せ力なかった。
 「結局、君は中途半端だった。陽太の母親としても、…俺の妻としても」
 「…あたしのせいだったと言うの?あたしが悪かったって?」
 自分のセリフにどこか既視感を感じながら、燻った憤りと軋る胸の痛みとを堪え、小さく縮んでしまったようにも見える愚かな男へと、つくしは声を震わせ静かに問いかける。
 ドロドロと湧き上がる怒りが確かにそこにあるのに、それでいてそれがひどく悲しく…寂しかった。
 「いや…それでもいい、陽太をかすがいにしてでも、いつの日か本当の意味で君を手に入れられれば、そう思ったのは俺だからな」
 だがしかし、人は一つ手に入れれば手に入れただけ、望みが叶えば叶っただけ、さらに強欲になって、より多くのものを望んでしまう。
 憎悪に猛っていた目が虚ろに焦点を失い、隼斗は小さくポツリと呟いた。
 「君はさっき、俺に何をしたかったのかと聞いたな?」
 「…ええ」
 つくしに金を貸してくれ。
 司から分与された資産を使って陽太を救ってくれと頼みながら、彼女の顔色を伺って結局はその要求を辞退した。
 「やり直したかった」
 「………!」
 「全部をなかったことにしたかった…スタート地点に戻って、君を取り戻したかった。俺も迷ってばかりで、結局は、中途半端な…男、だったんだよ」




*****




 「あっとぉ、化粧品は化粧ポーチと一緒にいれておけばいいよね」
 と、いつも使っていたバックパックを手にとって、小さく息を吐く。
 わずかに迷って…しかし、結局隼斗から誕生日に…と貰ったバッグに物を詰めることは辞め、逆に中身を外に出す。
 「…なんか、代わりのヤツあったかな」
 押入れに顔を突っ込み、家探しだ。
 元々物持ちは良い方だし、無駄に物を増やすタチでもないから、代わりと言ってもそれほど心当たりがあるわけはない。
 「うーん、前に使ってたヤツだとちょっと小さいよね」
 なるべくなら手荷物は少なく纏めたかった。
 ガサゴソとかなり奥深くまで入り込んで、見つけたそれを手に押入れから体を起こす。
 取り出したダンボールの箱を開け、その一番下にあったそれを見つけて、つくしは思わず小さく驚きの声を上げた。
 「…これ」
 ‘それ’はつくしが道明寺邸から出る時に持って出たハンドバッグだった。
 手にしっとりと馴染むフォルムのハンドバッグを手にマジマジと眺める。
 長く持っているつもりなど欠片もなかったのというのに、おそらく引越しや結婚、転職などのドサクサで、捨てる機会を逸してしまっていたのだろう。
 それでもそのバッグが司から直接贈られたバッグか何かだったら、つくしもとっくの昔に捨ていたに違いない。
 …どうしよう。
 ざっと確認したところ、さすが最上級品のバッグだ。
 どこも破損してなければ、ほとんど劣化している部分も見受けられない。
 大きさ的には…。
 「けっこう物、入るんだよね」
 ハンドバックとはいえ、元々つくし自身が気に入って購入したもの。
 高級ブランドバックという一点を除けば、かなり実用一辺倒品だ。
 しばしの逡巡の後に、つくしは広げていた物をバッグの中へと詰めだした。
 …明日だし。
 明日、先に東京へと出た隼斗と合流して、道明寺家の顧問弁護士である勅使河原の下へと赴くことになっている。
 一年と数ヶ月、たったそれだけの期間だったが、たしかにつくしの夢見た平凡な生活―――隼斗と陽太…つくしと三人の暮らしがここにあったのだ。
 つくしは畳から立ち上がって、柱や机に手を触れ、寂しく小さく笑いひっそりと一人呟く。
 「…終わちゃった」




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