「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙②

愛してる、そばにいて0322

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 「ああ」
 司のスパイだったと認めた時同様に、あまりにもあっさりと認める隼斗の返答に、つくしの顔がそれでも歪んでしまう。
 「あなたという人はっ」
 罵倒するつもりではなかった。
 彼がウソをついたにしても、どうしてそうしたのかもうわかっていたし、自分の中でもすでに決着をつけたつもりでいたから。
 それでも、いけしゃしゃあと認めることができる隼斗の態度に、憤らずにはいられなかった。
 「…一つ、ウソを付くと、まるで雪だるまのようにウソが膨らんでしまう。気がついたら、もう自分でもどうすることもできなくなっていた」
 「だったら、なぜ、最後までそのウソを押し通そうとしなかったの?中途半端に退いて、結局全部壊して、あなたは何をしたかったの?」
 道明寺家の顧問弁護士である勅使河原に連絡したことで、つくしは隼斗がついた嘘をまた一つ知ってしまった。
 つくしと隼斗が結婚した当時、隼斗の元に勅使河原が訪れたというのは本当のことだったし、隼斗に対して経営者になるつもりなら援助をしようという、司からの申し出があったのもウソではなかった。
 しかし、当初、彼女の持つ資産について、つくしがすでに放棄する意志を固めていて、彼女にもしものことがあったとしても、隼斗にはなんの相続権も発生しないと説明されたのだ。
 「君と結婚しても、俺にはなんのメリットもない。無一文の女と結婚するつもりか、財産目当てなら今のうちに手を引け、そういう意味だったんだろうな」
 「……そうね」
 今となってはそうとしか言い様がないだろう。
 それを隼斗は一顧だにしなかった。
 そして、経営者にするという提案にも頷かなかった。
 以後、道明寺家側からは特に接触はなかったのだという。
 その時、その当時の彼のつくしへの気持ちは、彼の言うとおり純粋なもので、けっして彼女の持っているものを利用しようとしたわけではなかったのだ。
 しかし…。
 「陽太の治療が八方塞がりになった。韮崎先生から、新しい治療法のことを聞いて魔が差した」
 「……ええ」
 まさに魔が差した、そのとおりなのだろう。
 「韮崎先生にもある程度は聞いたが、実際に調べてみたら、アメリカでいざ治療を受けるとしたら、とんでもない費用がかかることがわかった。とてもじゃないが、俺一人の力でなんとかできるもんじゃない。…オヤジ達の家屋敷を抵当に銀行から金を借りるにしても、返済の目処が立たなきゃそうそう借りれるもんじゃないし、それだけで全てを賄えるわけじゃなかった。そもそもオヤジたちを説得できる自信自体なかったが、案の定、今回、改めて頼んでみたけど渋られたよ。オヤジ達も陽太のことが可愛くないわけじゃないだろうが、自分たちの老後のこともあるからな」
 「…そうだね」
 人間は霞を食べて生きてゆくわけにはいかないのだ。
 たとえ病に伏せたのが我が子だったとしても、究極の選択を迫られることもあるだろう。
 隼斗のように。
 ましてや、孫だ。
 できるだけのことはしてやりたいとは思ってはいるだろうが、難しい問題ではある。
 「そんな時に、ふとこんなことを思っちまったんだ。君に借りればいい。君からなら無利子無期限で借りることも可能だろう。もちろん、貰うんじゃない。陽太の治療を終えて、日本に帰国した後に死に物狂いで働いて返せばいい…そんなふうに思った」
 「…………」
 「だが、君が俺と結婚する時に、君が持っていた分与資産を放棄する意志を弁護士に伝えていたことは聞いていたから、もしかしたらすでにそれはなされているのかもしれない。…いや、そもそも君はいったいどれくらいの資産を、道明寺から分与されたんだ?」
 だから調べた。
 彼のありとあらゆる伝を辿って。
 元々、そうした職種の男だし、彼はそれゆえにつくしにつけられたボディガードだったのだ。
 隼斗には、難しくなかったことだという。
 「本当にたまげたよ。…まあ、海外のセレブたちは数百億、数千億と、慰謝料を離婚の際に別れた妻に支払ってるわけだから、それに比べれば君なんかはほとんど二束三文で叩き出されたようなものなんだろうが」
 司との離婚当初、彼がつくしに提示してきた資産の時価総額は、まさにその海外セレブたちに匹敵するとんでもない巨額だった。
 兆を超える慰謝料も過去に事例があるくらいだ。
 道明寺財閥の規模、そして司の立場や財力からすれば妥当だったのかもしれなかったが、司からビタ一文受け取るつもりがなかったつくしはそれを拒絶した。
 司からの慰謝料を受け入れること。
 それは司の彼女への非道の代価を受け取ることであって、彼女にとって身売りしたにも等しい行為。
 しかし、結局、彼女が自立する為の最低限は…という制限付きで受け取ることになってしまったのだが。
 …どこが最低限よ。
 本当にそう思う。
 そして、さらに、隼斗はつくしの許可を取ることなく、勅使河原にアプローチしてしまったのだ。
 『―――資金の件は、牧野氏から打診を受けて、すでに準備する用意はできております。過去に返却のご意志は承っておりますが、司様からの承諾を受けられませんでしたので、こちらの方で留保・保全させていただいておりますからご安心を。あとは、つくし様のご承諾を得られれば、いつでもお引き落としに応じることができますので、ご都合がよろしい日時・口座をご指定ください』
 もちろん、隼斗の一存でどうこうできるものではない。
 勅使河原は準備する用意をしているというだけのことで、実際にはつくしの承諾がなければその資産をどこそこに移すことなどしはしないだろう。
 だが、そういうことではない。
 「どうして…あたしを信じてくれなかったの?」
 …待っていてくれなかったの?
 たしかに隼斗が司の手先だったことを知ったのはショックだったし、裏切られた気がした。
 だが、それとこれとはまるで別のことだ。
 隼斗の陽太へと注ぐ愛情はわかっていたし、その心情は同じ親としてつくしにもよく理解できる。
 …あたしだって、戒の為だったらきっとなんでもしてあげたいと思う。
 生み育てた記憶のないつくしでさえそうなのだ。
 男手一つで、苦労しながら妻の思い出を胸に、大切に陽太を育ててきた隼斗ならばなおのことだったに違いない。
 そして、たとえ彼が選んだのが、安易な道だったとしても、その手段を得る方法が身近にあって、どうして諦められるだろうか。
 それに、つくしもまた陽太のことを愛していた。
 たとえ二年弱という短い間の歴史であろうと、母と呼ばれ子と呼んで、一生そうして生きてゆくつもりだったのだから。
 「信じて、正直に全部話してくれれば、あたしは…っ」
 「…君の何を信じられると言うんだ?」
 「っ!?」
 悲痛に引き歪んでいた隼斗の顔がつくしを見て、さらに複雑に…醜悪に歪む。
 その表に浮かんでいたのは、哀しみ、憎しみ、愛情、それらすべてが複雑に混じりあった修羅の顔。
 「君も俺を信じてくれてなかっただろう?そんな君をどうして俺が信じられる?」




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