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「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙②

愛してる、そばにいて0321

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 「そうだね…その通りだとあたしも思うよ」
 子供の悟り。
 「病気がわかった時もね、僕の寝ているベッドに突っ伏して頭を抱えて啜り泣いてたよ。…お父さんは、僕が寝てるって思ってたみたいだけど」
 つくしも隼斗の気持ちは痛いほどわかった。
 交通事故で最愛の妻を失い、またその交通事故に今度は息子が奪われかけた。
 そして、死の宣告を受けたにも等しい息子の病の発覚は、隼斗にとっていかばり苦しく、辛いものだったか。
 「それにね、よっちゃんも言ってたんだ」
 「よっちゃん?」
 『よっちゃん』、というのは、一昨年、陽太の白血病が発覚し、一時期入院していた時に同室になった一つ年上の女の子のことで、陽太とは大の仲良しだった。
 やはり陽太と同じく慢性骨髄性白血病を患っていて、陽太には知らせていないが、造血幹細胞移植の予後が悪く、昨年亡くなったとつくしは人伝に聞いていた。
 おそらく彼女の死が、隼斗に与えた影響も少なくはなかっただろう。
 陽太と同じ病を患った、似たような年頃の子供の死。
 「よっちゃんのパパとママはね、いつもよっちゃんのことで喧嘩してばかりだったんだってさ」
 「……………」
 個々の家庭の事情。
 おそらくその両親は子供には悟られまいとしていただろうが、当の子供はよく見ていて、あんがいその事情もわかっていたりするものなのだ。
 「ママは泣いてばかりで、ママが泣いてるのを見るとよっちゃんまで悲しくなってくるんだって」
 「…そう」
 「パパも怒ってばかりいたんだけどね。でも、よっちゃんが笑ってあげると、パパもママも少しは笑ってくれる時があるんだって」
 「…………」
 「だから、よっちゃんはどんなに痛くても苦しくても、泣いたりしないし、頑張って笑ってた」
 当時、まだつくしは隼斗と結婚していなかったので、それほどよっちゃんと親しく接してはいなかったが、たしかに陽太によく似た気性の子供で、病気のわりに明るく人懐っこい子だった憶えがある。
 「僕はそんなの無理だよ、って思ってたんだけど、でも女の子のよっちゃんが頑張ってるのに、恥ずかしいって思って、僕も頑張ることにしたんだ」
 そう子どもが笑う。
 「僕が笑うと、つくしちゃんも笑ってくれるでしょ?」
 「…うん」
 「お父さんも同じ。おじいちゃんたちや友達もね。それに、お父さんや、つくしちゃんが笑ってくれると、僕も嬉しくなれるんだ。凄いでしょ!?」
 「陽ちゃん…」
 「でもね、二人が泣いちゃうと、僕まで悲しくなっちゃうんだよね」
 だから泣かないんだ、笑うんだと語る子供のいじらしい思いと慈愛に、つくしの目から再びポロリと涙がこぼれ落ちる。
 「もしも僕が死んじゃったりしたら、きっとお父さんはもっともっと泣いちゃうと思う。だから僕はどんなに痛くても辛くても、治療を嫌がったりしちゃダメなんだよ」
 「よ、陽ちゃん」
 陽太は自分の病が白血病だとは知らないはずなのだ。
 おそらく『白血病』だと言われてしまえば、テレビやネットの氾濫する今の世の中、いくら幼くても自分の病がどんなものなのか、ある程度わかってしまうだろう。
 しかし、隼斗やつくしは他の親たちがそうしているように、陽太に告知はしていなかった。
 …まさか。
 陽太がニコッと笑う。
 「こんなに頑張ってるんだもん。もうちょっと頑張ったら、きっと僕の病気、治るよね?」
 「う、うんっ、もちろんだよ!」
 あえて明るく力強く、つくしは大きく頷いた。




*****




 朝になって帰った隼斗と入れ違いに、学校へ登校していった陽太を見送り、つくしは隼斗へと向き直った。
 おそらく、そのまま一眠りするつもりだったのだろうが、つくしの決然とした眼差しに何かを感じたのか、隼斗も寝室へとは篭らず、ダイニングの椅子へと腰を下ろす。
 「…フゥ」
 「疲れた?」
 「ああ、鳥取まではクライアントと一緒だったから、新幹線でも寝れなかったんだ」
 「そっかぁ。…じゃあ、話があるんだけど、一眠りしてからの方がいいかな?」
 つくしの気遣いに小さく苦笑して、隼斗が首を横に振る。
 「いや、いい。…君のその顔じゃあ、よほど重要なことなんだろ?気になって逆に寝れないから、話を先に聞くよ」
 「そう、じゃあ」
 促されて、つくしも隼斗の対面側に腰を下ろす。
 気まずい沈黙が、互いの間を流れた。
 が、つくしが顔を上げたのを合図のように、隼斗の方が先に切り出す。
 「もしかしなくても、この間、俺が君に申し入れた借金の件だろ?」
 「うん」
 「そのことだったら…」
 しかし、今度はつくしの方が、先に隼斗の言葉に被せるように言い切ってしまう。
 「昨日、勅使河原さんに電話したの」
 「………………」
 隼斗の表情に変化はなかった。
 だが、わずかにくすんだように見える顔色が、唯一その心情を語っていたかもしれない。
 どちらにせよ、つくしの顔を見た時から、おそらく隼斗にもある程度の予感があったのだろう。
 「道明寺から分与されたあたしの離婚慰謝料の詳細を、勅使河原さんに聞いたっていうのは、あなたのウソだったのね」




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