「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙②

愛してる、そばにいて0315

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 なじるつくしの言葉に、隼斗が体を丸めるようにして項垂れる。
 「言えるはずがない」
 「…………」
 「さっき、君も言っただろ?どのツラ下げて、君をスパイしてた…スパイして、君の前夫に報告してたと告白できると思うんだ」
 「………っ」
 それでも…、そう言いかけて、つくしにも答えられる言葉がないことに気がつかされる。
 もし、そう隼斗にあらかじめ告白されていたとしたら、彼と結婚しただろうか?
 彼と結婚生活を続けることができただろうかと、自問自答してあっさりと出てしまった自分の答えの酷薄さに、つくしは言葉を飲み込んだ。
 「…ご両親は」
 「俺の仕事についても詳しくは知らない」
 「そう」
 「ガキの頃ヤンチャして、親の望むようなエリートコースは進めないのは二人共承知してたから、俺がまっとうに生きてさえいればとあきらめてくれているからな」
 そんな話を、そういえば以前にチラッと聞いていたか。
 温厚とは言わないが、けっして粗野ではない今の彼をして、そんな時期があったとはとても思えないが、隼斗にも隼斗なりの過去があり今があるのだろう。
 「ご両親は、まったく隼斗さんが何をしているのか知らないってこと?」 
 「…それはさすがに、陽太を預かってもらっていた手前できないから、警備員的なことをしているとだけは言ってある」
 思えば、結婚して1年と半年ほど。
 隼斗の両親と会ったのは結婚の挨拶の時と、家族でこちらへ引っ越して来る時の見送りくらいだったから、それほど深い話をする暇もなかったのだ。
 「両親とは元々別居していたしな。口裏合わせをしてもらわなくても、よけいなことを言わないでもらえればそれで事足りた」
 それで一生なんとかなるというものではなかっただろうが、遠方に住んでいることもあってなんとかなってしまっている。
 「ずっと黙っているつもりじゃなかったんだ…たぶんな」
 最後につけ加えられた、‘たぶん’、という言葉の中に彼の気持ちが集約されている気がした。
 けれど、今それですべてを水に流すには、つくしにとってあまりに衝撃的な真実で。
 だから、なんとはなしにポツリと口から零れ落ちたのは、本当にどうでもいいことだった。
 つくしは重すぎる秘密の開示に、すでに呆然自失していたのだ。
 「別に職務の秘守義務からとか、そんなんじゃないんだ?」
 「それもある。…たとえ職務から離れたにしても秘守義務は継続されるし、君が妻だから、家族だからといって、仕事内容をおいそれと話していいというものじゃないんだ」
 それはそうだろう。
 つくしにも当然、仕事柄秘守義務が存在するし、それはどんな仕事にも当てはまることだ。
 「君に惹かれれば…惹かれるだけ、本当のことが言えなくなった。それに惹かれる気持ちを自覚してからも、俺は君にそれを伝えるつもりはなかったんだ」
 声のトーンの変わった隼斗へと、つくしが視線を向ける。
 「…だが、陽太の白血病の発覚で俺のタガが外れてしまった。君は、…君は、美沙が死んで以来、俺が初めて心惹かれた女性だ。だけど、だけど…陽太は、美沙が遺してくれた俺のたった一人の息子なんだっ」
 両手で頭を抱え込み、軋る声音で悲痛に叫ぶ隼斗の姿をボンヤリとつくしは見守った。
 牧野美沙―――隼斗の前妻、陽太の母親。
 交通事故で亡くなったという彼女は、まだ24才という若さだったという。
 それだけに事故で搬送された陽太のもとへと駆けつけた隼斗の脳裏には、自分の職務のことも、依頼対象者であるつくしの存在もなかったのではないだろうか。
 ただただ、我が子を心配する父親にすぎなかったのではないかと、その現場を見ていないつくしでさえ想像できるほどに、隼斗は陽太を愛していた。
 それは同時に、その母親・美沙への愛。
 小さく胸の奥に疼く気持ちはおそらく‘嫉妬’であるに違いなかった。
 しかし、同時にその嫉妬は隼斗に愛されている前妻への嫉妬というよりは、死してなお一人の男にそうまで愛され、大切にされている一人の女性への嫉妬であることにつくしは気がつかされる。
 …たぶん、あたしはそんなふうに、また誰かに愛されたかったんだ。
 ドキリと心臓が鳴る。
 自然に思い浮かんだ、‘また’という言葉に動揺してしまった自分の心の動きに、さらに動揺してしまう。
 ゴクリゴクリと、隼斗の唾を飲み込む音が妙につくしの耳についた。
 「そう…陽ちゃんの為だったんだね」
 そして、同時に陽太のせいでもあったのだろう。
 隼斗がそんなつくしの推測を肯定する。
 「ああ…そうだな。陽太が母親を欲しがった。美沙が亡くなった時、まだほとんど赤ん坊だったあいつは母親を憶えていないから、よけいに君に懐いて…恋しがったんだろう。それまでほとんどワガママらしいことを言わなかったあいつが、君がお母さんだったらと頻繁に口にするようになった。それに何より、俺が一人では耐えられなかった。陽太を失うかもしれない…その恐怖に一人で耐えて、戦うことがいかにもあの当時の俺には難しいことに思えたんだ」
 「……そう」
 人は弱い生き物なのだ。
 愛する者によっていかようにも強くもなれるが、同時に弱くひどく脆くもなってしまう―――たとえ隼斗のように頑健な男性であっても、愛する人を失う恐怖に耐えうるには途方もない胆力と努力、そして支えが必要なのだ。
 その支えにと、つくしを選び頼った。
 だからこそ、戒を重ねるつくしの想いを感じ取った陽太がつくしを求め…ドライな言い方をすれば互いのニーズにマッチした結果、現在の家族のカタチがある。
 隼斗の告白は続く。
 「君と陽太を連れて、こちらに来たのは、慢性骨髄性白血病の権威の韮崎教授がいたことだけが理由じゃない」
 「…それって」
 「あの頃はよもや道明寺司自身が出てくるとは思わなかったが、君が監視されていたのは事実だ。それに俺も依頼主の関係者に手を出したんだから、とても東京にはいられなかった。だから、君と結婚すると同時に、当時勤めていた会社を辞めて、こっちにいる訓練生時代の先輩を頼って転居することにしたんだ」
 「それなら…今は」
 「ああ、今はもう俺からは誰にも何も報告していない。…今のところ俺から見て、他には特に誰も君に護衛も監視も付けられてはいないようだ」
 それを安堵していいのか、つくしは複雑な気持ちで黙り込んだ。 
 それに、今の隼斗の口ぶりからして、彼がつくしの身辺を調査・報告していた当時、依頼主が司だとハッキリとはわかっていなかったようなのに、それならばいつその依頼主が司だと確信したというのだろう。
 「そんな時だ」
 「え?」
 「俺がこちらへの転居の目安をつけて、君と陽太を連れ東京を離れる間際、道明寺司の代理人だと名乗る人物が現れた」
 「っ!」




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