「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙②

愛してる、そばにいて0313

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 「な、なぜ?い、いつから…」
 ぐるぐると頭の中で思考が渦巻いて、聞きたいこと、言いたいことがたくさんあるというのに、上手く言葉にすることができずにつくしは混乱していた。
 そんな彼女をよそに、隼斗の方はすでにある程度覚悟を決めていたのか、あるいは自分なりにケリをつけていたのだろう。
 テーブルに置いた手を組み、フゥッと小さく息をついた顔は薄らと微笑み、どこか安堵しているようにも見える。
 
 「いつから…は、君が道明寺と離婚して間もなく、だな」
 「…そんなっ」
 もしかしたら背後に感じていた人の気配は、勘違いなどではなかったということだろうか。
 「人の気配に怯えていた君には返ってすまなかったとは思うが、たぶん、それだけじゃなかったとは思う」
 「…………」
 「なぜ…に対する答えだが、君を監視していた道明寺の真意については、本当のところは俺にも知らされていないから推測でしかない。と、いうか、そもそも最初はこの依頼が、道明寺司本人からのものだとは俺も知らされていなかったことだからな」
 「…知らされていなかった」 
 ふにつくしの脳裏に和也の言葉が蘇った。
 『外部の人間を雇うとどうしても、知られたくないことを外部に洩らされる可能性があるから慎重にはなる』
 依頼を受けた会社の上層部は当然わかっていたことだろうが、隼斗のような末端には知らされていないことも多い…そういうことだろうか。
 「俺のことについて、何をどれだけ聞かされたのかはわからないが、俺たちはいわゆる世間で探偵と言われる生業の業種で、護衛と調査会社の両局面を担っている」
 つくしが一つ頷くのを見てとって、隼斗も頷き返す。
 「だから対象者に関しては当然、かなり詳しい情報を与えられるから、君の経歴…庶民出身の元大財閥夫人で、後に後妻となった道明寺司の前妻・神崎遥香と夫の不倫が原因で離婚したことも聞いていた」
 司と遥香の不倫―――当然、真実など話せようもないから世間一般ではそう通っているし、つくしにしてもどう…肯定も否定のしようもなかったから、曖昧な表情を浮かべて首を傾げることしかできない。
 「だが、依頼者については、今回は本人からの聞き取りや依頼内容の説明もなく、それどころか代理人との接見と資料提出だけ。もちろん代表には、俺なんかに寄越されたよりも多くの情報は渡されていたんだろうが。…ただ事ではないことは最初からわかっていた」
 ましてや、対象者はかつてシンデレラガールとして世間でも持て囃された、世にも著名な男の元妻だ。
 「道明寺司本人が依頼者…ということも考えないじゃなかったが、醜聞を嫌うその親、あるいは前妻の動向を気にする当時の妻や、その実家。そうでなければ、まるで方向性は変わってくるが、道明寺本家のスキャンダルを狙う分家や親族筋、会社幹部も考えられた」
 「…そう」
 「もっとデカけりゃ、君の息子、というのも有力な候補だが、…どちらにせよ、俺にとっては関係ない話だ」
 今までもそうした依頼がなかったわけではなったし、だからといって下手に首を突っ込めば返って自分にしっぺ返しがくるだけで、詮索することがけっしていい結果にならないことを承知していたという。
 「素行調査って…?」
 「そうだな、誰それと付き合って、どういう生活を送ってというごく一般的なことか」
 「ごく一般的なことって…ふふ」
 この状況では不釣合いなことだが、つくしは思わず笑ってしまった。
 自分の動向を逐一報告されることのどこが一般的なことだというのだろうか。
 つくしのひんやりとした嘲笑に気づいただろう。
 しかし、隼斗は視線をわずかに伏せただけで話を続けた。
 「特に、君からではなく、君を君だと…道明寺司の元妻だと知っていて近づいてくる人間に対してだな」
 「……………さっき隼斗さんは、道明寺があたしを調べたり、護衛したりする理由については知らされてなかったって言ったわよね?」
 「ああ」
 「でも、推測はあるのよね?…それはどうしてだと思うの?」
 「君の…10年間、道明寺財閥の次期総帥夫人だった君の持っている情報」
 「情報?」
 「ああ。君は彼の最も近くにいて、当然恥部や秘密にも触れていただろう?しかも、ある程度財閥の経営にも参画していたと聞く」
 「参画って言ったって…」
 おそらく隼斗が言っているのは、財閥のNGO団体への支援やその他、クリーンなイメージ作りの為の広報活動につくしが…‘道明寺つくし’が関わっていたことを言っているのだろう。
 だが、そうした情報を洩らそうにも、つくしはそれを憶えてはいない。
 そして、それは司や彼の母・楓も承知していることだ。
 しかし、司の恥部やら、暗部についてはいくらでも心当たる。
 …たしかにあいつのことを、よそには洩らされたくはないわよね。
 誰が信じるか、という部分ではあるが、そうしたものを知りたがる人間もいるということなのか。
 「それに、君に譲渡された莫大な資産に付随したトラブル回避が目的だったとも考えられる」
 「…………」
 やはり隼斗にも知られていたのだ。
 …それはそっか。
 元々司側から彼女についての情報を与えられ、さらには離婚後についても調査されて、司へと報告されていたのだから。
 「あの男があたしを心配してたとでも?」
 「心情はともかくとして、君は元妻と言えど、長男を道明寺との間にもうけている。君に何かあれば、その息子にも影響があることは確かだから、完全に無視しえないんだろう」
 …そうか。戒の迷惑になるって、あいつに言われてたんだっけ。
 自由になった、というのは錯覚で、単に司の手のひらの中で泳がされていた、というだけのことだったのだ。
 …それに気がつかないで、あたしは。
 なんておめでたかったのか。
 またも笑いたくなってしまった。
 「今も、あたしのことを報告してるの?」
 とんだ内部スパイがあったものだ。
 …どっかの秘密警察かっつーのっ。
 ジワジワと這い登ってくる不快感に吐き気がする。
 「いや…」 
 「いや?だって、それが隼斗さんの仕事なんでしょ?あたしをスパイして、それで報酬を得てる」
 「……っ」
 淡々と告白していた隼斗がさすがに息を呑む。
 ―――そして、その司からの報酬で養われていた自分。
 そこでふいに訪れた天啓のような悟りに、つくしは震える手で口元を押さえ、ゴクリと唾を飲み込んだ。
 「聞いてくれ、つくし。俺はもう、道明寺からは――」
 何かを言いかけた隼斗の言葉を遮って、つくしが話に割り込む。
 「仕事…」
 「…え?」
 「病院」
 …そうだ。
 東京で最初に就職した大学病院で採用されたのは、職業安定所ルートだった。
 最初に訪れた時には希望にマッチする職場が見つからず、福祉職専門の就職イベント等への参加を目論んでいたのだが、登録していた職安から間を置かずしてすぐに連絡があって、紹介されたのが以前に勤めていた大学病院だったのだ。
 つくしの経歴からして、ソーシャルワーカーとしてだけではなく、当時不足していた医療通訳的な役割も期待されていたようだが、さすがに東京でも音にしれた大病院だったから、兼任などする必要もなく自らの職分に集中することができた。
 しかし、今思えば、あまりにタイミングが良すぎたし、好条件すぎたのではないか。
 自分でも運が良いと思っていたではないか。
 社会福祉士の資格を取得したばかりで、右も左もわからないような新人、さらには社会人経験すらなく、新卒でもないつくしを常勤で雇い入れた理由はなんだったのだろう。
 さらにはこちらへの転居が決まった時、現在の病院へと口利きをしてくれた当時の上司の過分すぎる厚意の理由は?
 「あたしの就職にも、道明寺は関わっていたってこと?」
 眉根を寄せ考え込むように、わずかに首を傾げた隼斗の仕草はどこまでが本当で演技なのか。
 それでも自ら話しだした彼が、いまさらそんなことで隠し立てする理由がつくしにも思い当たらない。
 これから更なる策略が待っているというのならばともかくとして…。
 …そんな必要どこにもない。
 ないはずなのだ。
 「それは、俺にもわからない。…が、俺が頻繁に病院に出入りすることを、周囲に不審に思われず…君に疑われないためにカモフラージュをしてくれていた、当時の内科医長や事務長に紹介してくれたのも、顔を出さない依頼主だった」
 内科医長はともかくとして、事務長とは、医療行為以外の一切、いわゆる総務・人事・営業等を管理する病院の統括責任者だ。
 もちろん病院によってもその形態や職分はかなり変わるのだが、大事なのは人事権を有することであり、また当時の内科医長はその大学病院での有力派閥の長で、当時外科部長と次期副院長職を争っていた。
 それが、つくしが病院を退職してすぐに移動人事があって、なぜか副院長の地位をスキップし、病院長職についたと親しかった看護師から聞いている。
 「…そう、そういうこと。そっかぁ」
 「つくし」
 「それで?あなたは?あなたもそういうことなの?あなたも、あいつに…道明寺にあてがわれた、あたしの‘夫’だったというわけ?」




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