「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙②

愛してる、そばにいて0310

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 「ボディガード?」
 頭を締めつけられるような重鈍い痛みに、つくしは和也に悟られないように内心で小さく呻いていた。
 「ボディガード専門っていうより、調査会社の業務の一環として、ボディガードを引き受けることもある探偵的な位置づけの人たちだね」
 場所を変えて、元々ランチをする予定だったレストランへ。
 耳目を憚って院外に出ることも考えたが、下手に人目を忍ぶと妙な噂の元になり、よけいな誤解を招くことになるからと、もっともな和也の意見に賛同してのこと。
 しかし、さすがに院内外の食事客でごった返すレストランで、どんな秘密が飛び出すかもわからないプライベートなことを話すつもりにはなれず、時間があるという和也の好意に甘えて午後の予定を無理矢理に繰越し、遅すぎて妙な時間帯のランチへと二人で訪れた。
 目論見のどおり昼食時を外れ、診療時間を終えて今度は入院患者の見舞い客が訪れる時間帯まではまだ間があったから、二人の他に客の姿はまるでない。
 従業員の姿も厨房の向こうに見え隠れするくらいで、声を潜めさえすれば話の内容を盗み聞きされる心配はないだろう。
 当初の約束通り和也の妻に挨拶をして、軽い雑談を交わしている間も、正直つくしは気もそぞろで、和也の妻がどんな人で、どんな話をしたのかほとんど憶えていない。
 「こっちじゃないんだけど、当時青池商事が手がけていたプロジェクト関連で、一時期地元の商工会と揉めたことがあってね。僕もちょっと荒っぽい人たちに付け狙われちゃったりして、牧野さんたちにお世話になったんだよ」
 和也が言うには、彼の東京勤務時代。
 6年ほど前のことだそうで、身の危険を感じる出来事があったらしい。
 とはいえ、隼斗もフリーランスというわけではなく、そうした専門企業に勤めていて、そこの一職員としての派遣だったのだと言う。
 以来、ボディガードとしてだけではなく、何度か世話になるようなことがあり、和也も言葉を濁してハッキリとは言わないが、いまだにそれなりにその会社とは付き合いがあるのだろう。
 最初にボディーガード専業ではない調査会社と断りをいれているのだから、ようはそういう類の依頼だったということだ。
 和也もつくしが英徳を自主退学するのと前後して、他校へと転校しているが、やはり富裕層の多い永林学園に編入し、短期留学などを得て、永林大学を卒業している。
 そこで築いた人間関係の中で、やはり同じような立場のいわゆるJr.と呼ばれる人々との交流も増えたのだそうだ。
 本来、和也の両親は英徳学園でこそ、そうした交流を期待していたのだろうが、当時、つくしの存在がそれを妨げ裏目に出てしまい、むしろ疎外される状況になっていた。
 そんな彼が英徳を飛び出して得た人脈で紹介されたのが、隼斗の所属していた企業であり、隼斗だったというのは、どんな運命の数奇だったというのか。
 「僕のうちは成金だからね。元々そうしたツテに詳しくなかったんだけど、以前からそうした会社にお世話になっていた大学の先輩に紹介されたんだ」
 「そう…なんだ」
 「うん。双方の安全や秘密保守の都合上、派遣された人の個人的なプロフィールに関しては、資格や実績、それに警備員歴と簡単な履歴などを除いては、ほとんどクライアント側にも知らされない。特にプライベートについてはね。だから僕も直接接した範囲での人となり以外は、牧野さんがどういう人かよくは知らないんだ」
 「それでよく自分の安全を任せようとか思えるね?」
 皮肉ではなかった。
 しかし、曲りなりにも危険を感じたからこそ、高額の報酬を払ってまでそうした人間を雇うのだ。
 相手を信頼するにたる確証とも言えるべきものをなくして、とても自分の生命や安全を任せる気にはなれないのが本当ではないのだろうか?
 「そこは、人伝の紹介だから」
 「ああ、なるほど」
 いわゆるクチコミのようなものだろうか。
 「それに、かなり大きな会社の幹部とか、国際会議みたいな大きな政治的イベント出席者の、個人的な要人警備にも関わったことがある会社だとも聞いてたしね」
 …大きな会社の幹部。
 それはもしかして…。
 ブ―――ッ、ブ―――ッ。
 突然話の合間に割り入ったバイブの重低音の振動に、二人同時にポケットを探って、携帯電話の着信画面を確認した和也がつくしへと一言断って席を立つ。
 思い起こせば、不審なことなどたくさんあったのだ。
 激務だと言われるMRにしても、忙しすぎる日常。
 そのわりには営業マンだというのに、外で飲んでくることはほとんどなかった。
 遠隔地の出張だと言っては、数日単位で外泊することも頻繁で、曲りなりにとも同じ業界にいるはずなのに、こちらへと転居してからは不思議なくらいに隼斗の気配を職場近辺で感じることがなかったのはなぜだ。
 つくしが勤めているのは、地元でも名の知れた大きな大学病院だというのに。
 その他にも疑い出せば、いくらでも疑えることがボロボロと思い浮かぶ。
 つくしが見て見ぬフリをして、目を塞ぎ耳を塞いで、辛い真実など知りたくはないと知らないフリをしていただけだ。
 どうして、時々怪我をして帰ってきた。
 いくら学生時代からの習慣だったからと言って、どんなに忙しい時にも鍛錬を欠かさなかったのはなぜ?
 そして何よりも、隼斗は道明寺家のSPによく似ていた。
 雰囲気が身のこなしが、周囲を威嚇し警戒する仕草が、彼の職業をあきらかに物語ってはいなかったか?
 フェラーリの美女と同伴していた隼斗を見た時に感じた既視感は、錯覚などではなかった。
 かつて身近にいた人々、つくし自身の護衛とよく似ていただけのこと。
 「ごめん」 
 「あ、ううん」
 席に戻ってきた和也が一言詫びを告げ、テーブルのお茶へと手を伸ばす。
 「はぁ~、今日は久々に取れた休みだっていうのに、なんだかんだって連絡入るんだよなぁ」
 「えっと、時間大丈夫?」
 「…休みは死守します!」
 大真面目な顔で拳を突き上げる和也のおどける様子に、つくしも暗くなりがちだった気分を引き上げられ、ぷっと噴き出す。
 「なんだか、やっぱり相変わらずなんだなぁ、和也君たら」
 「そうかな?」
 「うん、そうだよ。もちろん、こうして話してると、すごく大人になったんだなあって感心させられたり、たぶん会社では、今ここであたしが見ている和也君とはまた別人なんだろうって思うけどね。昔のままの和也君もいて、なんだかそれがホッとするっていうかさ。…失礼なことだったらごめんね?」
 つくしの言葉に照れ臭そうに頭をかいて…だが、彼女へとあらためて和也が向き直って微笑んだ。
 「実は、僕もホッとしてるんだ…元気そうで」
 「そう?」
 「すごい綺麗になってるし…」
 「え~なにそれぇ」
 「はは。…つくしちゃんと最後に会ったのは、あの高等部の非常階段が最後だったよね」
 「そう…だったかな」 
 遠い昔へと思いを馳せる。
 けっして懐かしくも、優しくもない過去だったけれど。
 「突然、病気療養の為に学校を辞めたとか、つくしちゃんのクラスの人に聞いただけで、家や…道明寺んちを訪ねて行っても、結局会えずじまいだったからさ」
 「ああ」
 そういうことになっていたのだったか。
 本人だけが長く知らなかったこと。
 「ずっと僕の中では、あの日の…苦しそうに無理して笑ってるつくしちゃんのままだったんだ」
 「………和也君」
 だからよけいに忘れられなかったのかもしれないと、和也が悲しそうに言う。
 「つくしちゃん、あいつの奥さんだったんでしょ?」
 覚悟はしていた。
 それでもビクリと肩を揺らさずにはいられなかった。
 「ずっと、あれから心配してたし…後悔もしてた」
 「なにを?」
 「つくしちゃんが聞いて欲しくなさそうだったからとか言って、結局何も聞いてあげられなかったことをさ」
 「…っ」
 「弱虫で役立たずの僕だったけど、何かを聞いてあげられていたら、こんな僕でも何かできることがあったんじゃないか。つくしちゃんが突然いなくなって、僕の前から消えてしまうことはなかったんじゃないかってさ」
 もはや過ぎ去った過去だ。
 それどころか、当時和也が真実を知ったとしても何もできはしなかった。
 彼を破滅させてしまうだけで。
 結局、どう足掻こうと、司や彼を構成する強大な権力の前には、誰にもどうすることも出来やしなかったのだ。
 何度となくそう唱えるたびに、軋るような哀しみと嘆き、憎悪や怨嗟が滲み出して、彼女の心を荒み濁らせ、昏く翳らせてきたというのに、なぜか和也の悔いる言葉が彼女にまったく異なる感慨と感情を思い出させ、光を灯す。
 温かな何かが染み入る気がして、つくしは熱くなってしまいそうな目を無理矢理に見開き、瞼を瞬かせて窓の外へと視線を反らした。
 「役立たずなんかじゃなかったよ」
 「…………」
 「いつも感謝してた。和也君がいたから、救われてた」
 救われた一瞬がたしかにあった。
 そして今もまた、新たな灯火を。
 和也が何をしてくれた、でなはく、彼の心が、思いやりが、つくしへの優しさが。
 進や優紀が、彼女の苦しみを思い、心を痛め心配してくれていたのを教えられた時と同様に。
 次の言葉を探して、互いに沈黙する。
 いやな沈黙ではなかった。
 しかし、先に気持ちを切り替えたのはつくしで、どうしても聞きたいこと、聞いてしまわなければならないことがあったのだ。
 「あのね、和也君、聞いていいかな?」
 「え?あ、うん、どうぞ。僕にわかることなら、なんでも聞いて?」
 「隼斗さんが東京で勤めていた調査会社が過去に関わっていた大きな会社って、もしかして道明寺財閥も含まれてるのかな?」




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