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「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙②

愛してる、そばにいて0307

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 「うわ、高そう」
 騒ぎになるほどではないが、周囲の席の何人かも指差して噂してるのが耳に入る。
 「ああいう派手な車に乗るのってどんな人種なんだろうねぇ」
 「内科の島田先生とか、外科の山一先生も車道楽でああいうのに乗ってなかった?」
 「外科のメンツはけっこういるよね」
 「島田先生とか、山一先生って、たしかどっかの開業医の二代目ボンボンだもんね」
 「家買うのと変わらない値段するって聞いたことあるよ」
 「ええっ!ホントっ?!」
 さすがにここのメンツは縁遠いらしく、皆ギョッと目を剥き、改めて車へと視線を向けている。
 「牧野さんの旦那さんも、ああいう車持ってたりするんじゃないですか?」
 「ええ?な、なんで?」
 「だって、牧野さんってなにげにセレブ臭っていうか、お金持ちっぽいんですもん」
 「えー、ありえないでしょ、それ」
 つくし自身も車通勤の為、一家で二台所有という意味では裕福な部類に入るのかもしれなかったが、それでもマンションは賃貸だし、特に現在‘お金持ち’と言われるような生活をしているつもりはない。
 …お昼だって、お弁当持参だよ?
 ただし、思い当たることがないわけではない。
 もちろん無意識でのことだが、対人関係を除けば得た知識などを保全できているように、失われた10年間の歴史は否応なく今もつくしの中に息づいているのだろう。
 「あたしなんて、国産車の軽に乗ってるし、主人だって似たようなものだよ」
 隼斗の方は4WDとかいうかなりゴツくて、新車価格はそれなりに高い車に乗っているが、思いっきり中古購入だ。
 「そういえば、そうですねぇ。でも、何ヶ国語も堪能で海外生活経験があるのといい、所作も綺麗だし。食べ方とか見ると氏育ちがわかるって言いますけど、なにげない普通の手作り弁当とか食べてても、すごく綺麗な食べ方してますよ。…そのわりには、たまにケーキとか口一杯に頬張って、モグモグしてるのが解せませんが…」
 「ははは…」
 それこそお育ちというやつで、後天的に得たものは、やはり何かの拍子に出てしまい地には適わないのだろう。
 とはいえ、そうして身につけたものも今や実になって、ある程度それなりには意識しなくても格好はついているらしいのだが。
 「MRならまあ、たしかにそんなに収入がバカ高いってこともないでしょうから、旦那さんはともかくとして、牧野さんって謎が多いっていうか、もしかしてご実家がそういうおウチの人なのかなとか、ね?」
 周囲にも同意を求められて、皆が頷いているのには驚かされてしまう。
 セレブどころか、おそらく今ここにいるメンツの誰よりも、底辺だったはずだ。
 司に飼われなかったら、父のリストラ後、間違いなく牧野一家は路頭に迷っただろうし、今現在だとて、彼女の両親は司に寄生したまま人に誇れる人生など送ってはいないのだ。
 「……ないよ。うちは…えっと、ごく普通の中産階級だし、高校一年までは普通に社宅住まいのサラリーマン家庭だったよ」
 「それに、それ…最近、通勤で使ってるバッグってグッチですよね?」
 「ええ!グッチ!!」
 「やっぱり、本物なんだっ」
 「いいなぁ」
 それぞれ4者4様の反応に、曖昧に首を傾げ、それでも一応は肯定した。
 「ん~、誕生日のプレゼントで主人に貰ったんだけど、そんなに高いやつじゃないと思うよ?」 
 実際の値段は不明ながらも、色眼鏡を忌避して謙遜する。
 グッヂやエルメス、プラダなどの高級バッグは平気で数十万するものもあるが、さすがに堅実な隼斗のことだ、いくらあぶく銭が入ったにしろそんな無駄遣いはしないだろうし、高級ブランドとは言え数万クラスの物もあるのだ。
 …それだって、十分高いと思うけど。
 「あ…車から人降りてきた」
 なんとなく外の様子を見守ってしまっていたらしい同僚の一人が声を上げ、皆の注意を引く。
 一同が見守る中、降車してきた人物に、つくしの目が大きく見開かれた。
 「わぉ、いかにもだね、あれって」




*****




 「おかわり」
 「あ…はい」
 差し出された茶碗を受け取り隼斗へと渡すと、不審な顔で隼斗と陽太が顔を見合わせていた。
 久しぶりに三人一緒の夕食の時間。
 しかし、黙々と目の前の食事を片付けているつくしは、そんな二人の怪訝な様子に気がつかないでいた。
 「…なあ、何かあったのか?」
 「え?なに?」
 だから、そんなふうに問いかけられてもなんのことかわからず、むしろジッと隼斗の顔を見返すばかりで、二人の疑惑を深めてしまう。
 「お母さん、帰ってから全然元気ないよ」
 「陽ちゃん?」
 「いつもだったら、あれだこれだって元気に動き回って、一人でもおしゃべりしてるのに。なんかボウッとしてばかりいるよね?」
 「具合でも悪いのか?」
 陽太の言葉を受け、隼斗にしても同様のことを思ったのか、ひどく心配げに尋ねてくれる。
 …隼斗さんは優しい。
 しかし、これは別に珍しいことではない。
 家にいることが少ないから、あまり実感させてもらえる機会は少ないが気遣いはある男なのだ。
 「そういうわけでもないんだけど、ちょっと今日は相談予約の患者さんが多くて、忙しかったからかな」
 つい誤魔化してしまった。
 「そうか?それならいいんだが、そんなに疲れてるようなら、今日は早く寝たら?」
 「うん、お茶碗は俺が洗っといてあげるよ!」
 「そうだな、陽太。俺と一緒にやるか?」
 「ええ!できるのっ!?」
 意外そうな息子の頭を小突くフリで、隼斗が苦笑している。
 「一人暮らしの時もあったんだから、お父さんをバカにすんなよ。…ま、洗い物が苦手で、ほとんど外食だったけどな」
 「ほらぁ!」
 「はは…いいよ、それくらいはできるから。隼斗さんも陽ちゃんもさっさとご飯食べて、お風呂に入っちゃって?」
 「は~い」
 「了解」
 つくしの指示を受けて、素直に父子が再びお膳に向かい合う。
 …あれは、見間違いだよね?
 昼間に見た光景がまるでフラッシュバックのように蘇って、つくしはそっと隼斗から視線を反らせた。
 同僚たちとランチに出た院外の喫茶店で見かけた光景。
 この辺ではそぐわない真っ赤なフェラーリに乗っていたのは、隼斗だった
 もちろん、隼斗の愛車ではないし、これまでつくしは彼がそんな車に乗っているのを見たことがない。
 そして…、
 …隼斗さん、一人じゃなかった。
 『わぉ、いかにもだね、あれって田町(※岡山の歓楽街)とか、どっかのクラブやバーのママとかなのかな?』
 運転席を降りた隼斗が回り込んで助手席から下ろしたのは、40才前後の派手な美人で、同僚たちが言っていたようにどこかのご令嬢や堅気の人間というよりも、いかにも玄人風な女性。
 しかし、浮気だというには、隼斗と女の様子はデートにはとても見えず、違う何かを連想させた。
 華やかな身なりの女とは真逆に、付き従う隼斗はあくまでもカッチリとした地味なダークスーツ姿だったということもある。
 …なんだろう。
 もやもやと思い出せそうで思い出せないジレンマが、つくしの胸を塞ぐ。
 家の中ではのんべんだらりとしてルーズなところもあるが、良き家庭人であり真面目なごく普通の男である普段の彼とは、まるで違う顔の男。
 鋭利で威嚇的な雰囲気が、よく知る誰かに重なる気がした。
 二人連れ立って消えたのは、つくしの誕生日プレゼントを隼斗が購入しただろうブランド・ショップだった。
 「ごめん、せっかくお父さんが早く帰ってきてくれてるのに。…やっぱり、ちょっと今日は疲れてるみたいだから、先に休ませてもらうね。お茶碗、流しに冷やかしておいてくれる?」
 これまで感じたことがない疑惑と不安を、初めてつくしが隼斗に抱いた瞬間だった。




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え〜どうなっちゃうの?!
気になってしょうがない(笑)

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本当にどうでもいいことなんですけど
お茶碗冷やかすに( º_º )びっくりしました!
文脈から水につけて置くことと理解はしましたが
そんな風に言う所があるんだなぁ☺️

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