「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙②

愛してる、そばにいて0302

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 「へぇ、幼馴染にねぇ」
 「そうなの。つい最近、高校生の時にちょっと縁のあった先輩にも出くわしたところだったから、ホント驚いた。まさか、東京からこんなに遠く離れたところで、そんな偶然が重なるなんて凄いでしょ?」
 「まあな。…けど、あんがい偶然ってあるもんでさ。俺もこっちに来て、中学の時のダチが同じ職場にいて驚いたって話、前にしたよな?」
 「…そうだよねぇ」
 等々、会話を交わし合いながら、夜景が美しいことで知られているホテル・レストランでの誕生日ディナーをつくしは隼斗とともに楽しんでいた。
 さすがに年末年始で繁忙期のこの時期、特等席の窓際というわけにはいかなかったけれど、段差のあるステージ形状になっている各席からは、遠目にではあっても窓の向こうの見事なビル明かりが覗ける造りになっている。
 いつも家族の為に頑張ってくれているつくしへの感謝の印だと、今日この日を用意してくれたのは隼斗と陽太の優しさだった。
 …デート行ってきなよ、だなんて、まさか陽ちゃんから言われちゃうなんてなぁ。
 陽太と同い年の息子と中学生の娘がいる隣の一家とは家族ぐるみの付き合い。
 隣の夫婦もつくしたち夫婦と同年代で、さらに妻もフルタイムで働く夫婦共働きだ。
、子供たちは学校から帰って親が帰宅するまでの時間を、たいがいどちらかの家で過ごしていた。
 それだけに親たちも親しく、こうして互いに都合が付かない時や用事がある時には、互いの子供達の面倒をみたり頼める仲だ。
 彼女の誕生日だということを陽太から聞いた一家が、今夜は彼を泊まらせてくれることになっていた。 
 「しかし…やっぱ、けっこう混んでるよな」
 周囲を見回し、隼斗が苦笑する。
 そこかしこに、特別な日を楽しむカップルや家族連れの姿が見える。
 「師走のこの時期だもんねぇ。やっぱり、珍しい隼斗さんのお休みなんだから、陽ちゃんも連れてきてあげればよかったね」
 プチ後悔だ。
 いつもは外では滅多に酒を飲まない隼斗が、サーブされているワインを口に含んで首を横に振る。
 「陽太が言ったんだよ。いつも仕事仕事って、ほったからしにしてばかりなんだから、たまには奥さん孝行しないと捨てられちゃうぞってさ」
 「ええ~、陽ちゃんがそんなこと言ったの?」
 驚きだ。
 つい先日まで、ニコニコと無邪気に笑っているばかりの子供だと思っていたのに、どこから得た知識なのか、ポンとマセたことを言い出したり、めったにないが生意気なことを言うこともあるから子供の成長とは本当に早い。
 …っていっても、たぶん、陽ちゃんは素直な方なんだろうなぁ。 
 同い年の子供を持つ隣の妻の話によると、既に息子は母親である彼女と一緒に歩くのを恥ずかしがって、外ではかなりそっけないらしい。
 もちろんウチの中ではまだまだ甘えっ子のようだが、陽太はそんな子たちに比べればどこに行ってもお母さん、お母さんと、つくしを慕ってくれているし、男の子だが乱暴な口を利いたりしたことがまったくなかった。
 「それにこの間、君が陽太の為に開いてくれた誕生日会、よほど嬉しかったらしいな」
 「…喜んでくれてたね」
 ほっこりと思い出す。
 さすがにいくら子煩悩とは言え、隼斗までもが仕事を休むわけにはいかなかったが、つくしは有給を取り、陽太の為にと彼の友達を招いて、少し早めの誕生日会を兼ねたクリスマス会を催していた。
 本当は誕生日に開いた方がいいのだろうが、陽太の誕生日は年末も年末のことだ。
 それぞれの家庭の事情もあって、友達を呼ぶのは難しいだろうというつくしの気遣いからだった。
 今時自宅に子供を招く親は、この辺では珍しい。
 当日は集団の子供達相手に相当手を焼かされたものだが、陽太の輝く笑顔にそんな苦労も報われた。
 後日、隣の息子を始め、招待された子供たちに相当羨ましがられたらしいと聞いては尚更のこと。
 「どのみち明後日に、あらためて家族だけで陽太の誕生日のお祝いはするんだから、今日はお母さんをたくさん楽しませてあげてくれってさ」
 「……………」
 じんわりと目頭が熱くなって、つくしはそっと目頭を押さえて隼斗へと微笑んだ。
 そんな彼女を見る隼斗の眼差しも柔らかく、目尻を下げて微笑み返してくれる。
 「…君には本当に感謝している」
 「なによ、突然」
 「本来は生さぬ仲で、それだけでも気苦労が多いだろうに、あいつを実の子のように可愛がって、…笑顔を増やしてくれた」
 「陽ちゃんがいい子だからだよ」
 「俺も俺なりには、精一杯育ててきたつもりだけど…やっぱりダメだな、男一人の子育ては」
 つくしと結婚する前、隼斗は陽太をほとんど実家に預けていた。
 たまの休みには会いに行っていたようだが、物心付く以前に母親を亡くしたばかりではなく、激務の父親にも滅多に会うことができなかった陽太は相当寂しかったようだ。
 隼斗の実家もそこそこに裕福で、彼自身も高級取りだったから金銭的には恵まれていただろうが、やはり子供の幸せとはそればかりのことではない。
 「…俺が留守がちなことも、君には大きな負担をかけてるだろうし、君にも寂しい思いをさせていると思う」
 隼斗は家族想いの男だし口も重い方ではないが、だからといって普段からペラペラとその想いを容易に口にできるような男ではなかった。
 今は相当努力しているのだろう。
 食前酒のせいではなく、男らしい顔が真っ赤だ。
 ほんわかと胸を温めてくれる夫の不器用な想い。
 「そんなことないよ。あたしは幸せ。隼斗さんが頑張って働いてくれて、そういうふうにいつもあたしたちのことを気にかけてくれていることも知っているから」
 男の甲斐性は働きばかりとは言わないが、いつも家族を不安にさせていた晴男に比べて、隼斗は一家の大黒柱として頼りがいのある男だった。
 「それに陽ちゃんのことも。隼斗さんは、陽ちゃんのことをちゃんと愛してあげられてるよ」
 「…つくし」
 「陽ちゃんもそれを知ってるから、あんなふうに素直で明るい子に育っているんだと思う。だから、大丈夫」
 ぎこちなく笑んだ隼斗の顔は、わずかに泣き笑いのように歪んで奇妙なものだったけれど、照れ臭くなったのか、わざとらしく咳払いをして誤魔化しているのがありありだった。
 よくよく顔を見てみれば、盛んに瞬かせている目元に薄らと滲むものがある。
 「ん…、なんかここ暑いな」
 「…そう?」 
 もちろん完璧に空調された一流レストラン内が、言うほどに暑いはずもない。
 よほど居た堪れなくなったのか、隼斗が席を立つ。
 「ちょっと、トイレ」
 「あ、うん」
 「この後、レイトショー観に行くだろ?あまりワイン飲みすぎて、居眠りなんかするなよ」
 「なによ、それは隼斗さんの方でしょ?失礼しちゃうわね」
 もちろんバツが悪い隼斗の照れ隠しのセリフだと分かっていて、つくしもわざとらしくムッとしたフリを装う。
 「前から君が観たいって言ってたヤツだから、楽しみにしてろよ?」
 言い置いて席を離れる隼斗の背中を見つめ、つくしは思わずフフフと小さく声を洩らした。
 「観たいって言った時には、そんなの少し待てばDVDになるんだから、レンタルして家で見れば十分とか言ってたくせに」
 隼斗のぶっきらぼうな思いやりが与えてくれる安らぎや癒しに慰められる。
 …幸せだ。
 それはけっして自己欺瞞などではなく、真実の気持ち。
 かつて見せられた夜景は、ここから見る夜景などよりも遥かに見事で煌びやかなものであったけれど…。
 テーブルに片肘をついて手のひらに顎を乗せ、ぼんやりと窓の外へと顔を向ける。
 …東京じゃなくても、こんなにも夜が明るいんだなぁ。
 『こんなもんどこ行ったって、似たようなもんだろ。お前、ホント行くところ行くとこで、よくそう毎回感動できるよな。NYの方がよほど凄かったじゃねぇか』
 呆れたような男の声が耳元で不意に蘇る。
 「…だって、ホント、凄い綺麗なんだもん」
 「なんだって?」
 「え?」
 ハッと我に返る。
 白昼夢を見たような感覚に、つくしはしばし今の状況がわからず、目を瞬かせて呆然とした。
 いつの間にか隼斗がトイレから戻ってきていたようで、彼女がさっきまで見ていた窓へと顔を向け小さく嘆息する。
 「…ハァ、もう少し早めに予約してたら、窓際の席もとれてたんだろうけどな」
 「え~全然いいよぉ。ここから見ても、十分いい眺めじゃない。…次デザートだよね?何が出るんだろう、すっごい楽しみ!」
 
 


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