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「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙②

愛してる、そばにいて0298

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 「藤堂さんですか?」
 「あ、うん。あっと、それとも今はもう結婚して、別の姓になってたりするのかもだけどね」
 「まあ、普通は先輩みたいに同姓の方と結婚とはいかないでしょうからねぇ」
 「ははは…」
 静もたいがいイイ年のはずだ。
 高校以来、彼女の動向については聞いたことがないが、たしか当時国際弁護士を志して家を捨てたようなことを聞いていた。
 あるいはバリバリのキャリアウーマンとして、今尚結婚していない可能性もあったが、類より2,3才年上だったはずだから、30代半ば近くか。
 …相変わらず、綺麗だったけど。
 「ん~、どうでしょう。藤堂さんも家を出られて、ほとんど社交界には出入りされなくなっていますからねぇ」
 「…美作さんからそういうの聞いたり、話したりしないの?」
 「聞けばたぶん教えてくれると思いますよ」
 ニッコリ。
 笑顔が胡散臭い。
 当然、なぜ聞かないのか、あるいは幼馴染みのことなど、そうした身近な人々のことをちょっとした雑談程度に話したりしいないのか等々聞きたいことではあるが、その澄ました顔が拒んでいる。
 …相変わらず、自分のことは話したがらないんだから。
 あるいは、桜子は愚痴ったりはしないが、婚約してかなり長いというのに結婚しないことから鑑みて、あきらと上手くいっていないのかもしれない。
 …桜子。
 つくしの性格的に、あえて本人が語りたがらないことを、物見高く聞き出す気持ちにはなれない。
 ソーシャルワーカーの仕事についてから、職種違いとはいえ、相談のついでに個人的なことも聞かされる立場になって、よけいにそんなことを気遣うようになった。
 たとえどんなに親しくても、人には触れられたくないことがあり、それに容易に触れたりしないことが人付き合いのルールなのだと。
 一見冷たいようではあっても、そうしたことは単なる社交術というだけでなく、相手への労わりであり思いやりなのだ。
 本当に深刻な状態になったら、きっと自分から話してくれるだろう。
 この3年あまり、桜子ともそれだけの友情と信頼を育んできた…そう信じたい。
 …あんたの力になりたい。
 そう思っていることだけは、常々伝えているつもりだ。
 「まあ、美作さんも西門さんほどではないですけど、無口とは言い難い方ですから。結構ご自分から話してくださったりもしますけどね」
 「…普通に、おしゃべりだと言えば?」
 「だから、西門さんほどじゃないですって」
 「まあ…そうだね」
 あきらは饒舌な男ではあったが、総二郎のように口が軽い男だったという印象はない。
 「で?藤堂さんとは、何を話されたんですか?」
 「ん?何も」
 「はぁ?何も?」
 桜子の怪訝な顔に、うんうん、と頷く。
 「だって、あんたと待ち合わせしてたし、静さんも急いでたみたいだしね。会釈し合ってそれで別れたよ」
 それに、静の疲れたような表情は誰とも会話を交わしたいような雰囲気ではなかったから。
 何かに意気消沈して、表情が陰っていた。
 病院という場所柄、そうした顔をしている人間の心当たりはいくらでもある。
 ましてや、つくしの勤める大学病院は、陽太が通院している血液内科だけではなく、各種癌や心臓病、動脈瘤治療の名医も在籍し、不妊治療などでも近隣地域にこの病院ありと謳われるほどの大病院なのだ。
 もちろん、東京にはなおさらそういった病院は多いだろうが、この医師、と名指しで指名して、治療を受けるために全国各地、それこそ東京からもやってくる患者もいるくらいだった。
 また、そうした一般患者とは別の観点―――人目を気にする芸能人などの各界著名人が密かに受診することも少なくないという。
 …もしかして、静さん。
 しかし、それらも余計な詮索だろう。
 頭を切り替え、あたりさわりのない話題を口にする。
 「静さん、弁護士になったのかなぁ」
 「ああ、それはね。最近のことは存じ上げませんが、フランスでそれなりに名の通った弁護士として、女性ながらに活躍されていることは、知人の噂で小耳に挟んだことはありますよ」
 「やっぱりそうなんだ」
 さすがは静だ。
 つくしにしても、彼女には憧れずにはいられなかった。
 その美貌や才知だけでなく、その志において、一お嬢様の枠に収まらない素晴らしい女性だと思う。
 …さすが、花沢類が好きだった人だよ。
 いや…、
 「ああ…そうか、もしかしたら、花沢類と結婚してるってこともありえるのか」
 当時、渡仏した静に置いて行かれるカタチになって、いわゆる腐っていた類だったが、彼だとていつまでも無力な少年なままのわけではあるまい。
 司や総二郎、あきらのように大人になって、花沢物産の若き経営者として活躍しているのだから。
 「…美男美女でお似合いだもんねぇ」
 「いえ、花沢さんはまだ独身ですよ?」
 「え?そうなんだ」
 「ええ、一時期、どこだかの令嬢と婚約したような話もありましたけど、結局破談になってますし…まあ、プライベートではそうでもないようですか」
 「へぇ」
 あの静に一筋だった類からは、とても想像だにできない。
 が、あれから10年以上の歳月が過ぎたのだ。
 類がどう変わっていたとしてもおかしくはなかった。
 …あたしだって、変わった。
 幼い頃の恋は恋として、若きエグゼクティブな男性として、人生を謳歌していても誰に非難されるいわれもないし、また必要もなかっただろう。
 「…先輩、気になります?」
 「は?」
 「花沢さんですよ」
 探るような目で、つくしを伺ってくる桜子の穿った質問を笑い飛ばす。
 「まさか」
 「でも、初恋の人なんでしょ?」
 「そうだね…初恋。子供の頃の…淡い思い出ってやつかな」
 ついさっきそんなことを思った自分を思い出して、つくしは苦笑する。
 子供の頃―――というには、自分にとっての認識はまだまだ埋まり難いものがあるが、普通に人生を送っていたとしても、高校時代の恋などいつまでも引きずっている人間もそうそういないだろう。
 ―――ただ、つくしにとっての類はただ‘初恋の人’というだけでなく、救いのヒーローでもあったというだけで。
 それも、ある時にピシャリと眼前で締め出されてしまった。
 『俺には、もう何もしてやれない』
そんな言葉で。
 …あたりまえだよ。
 恨んでいるわけではない。
 ただ、あの時の絶望や悲嘆が、つくしの夢見がちな美しい思い出をヒビ割れさせてしまっただけのことだ。
 「でも、先輩、本当にまるっきり思い出してないんですね」
 「…ん?」
 喉の渇きを覚えて、アイスティのグラスのストローに口をつけていたつくしが目だけを上げ問い返す。
 「3年…もう4年近く前のことになるでしょうかねぇ。先輩、花沢さんとお会いしているんですよ。この日本で」




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