「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙①

愛してる、そばにいて0291

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 「美味しい!本当にすごく美味しい!!」
 ニコニコ笑ってハンバーグを食べては、今日見かけた病院での人々の様子をおどけて真似て、つくしに報告していた陽太も、さすがに半日以上病院や薬局で過ごしたのは疲れたようだ。
 食事を終え、家族三人でテレビを見ている内に、いつの間にかコックリコックリと船を漕ぎ出してしまっている。
 「…陽ちゃん、もう寝ちゃったら?」
 「ん~、もう少しだけぇ」
 目を擦ってふにゃふにゃ言う様は、病気のせいで痩せた体や小柄な体格もあって、年齢よりも幼く見えて、とても戒と同じ年には見えない。
 初めて出会った2年前、別れた当時の戒を重ねてしまったのもそのせいだ。
 「陽太、もう寝ろ。体調を崩すことになったら、また入院するハメになるぞ」
 「あ~う~」
 「…陽ちゃんがまた学校を休むことになったら、松井君とか花田君、寂しがるよ?」
 つくしも隼斗の忠告の後押しをする。
 「そうだね。松井たちとも学年変わっちゃったらイヤだし…」
 「…………」
 「…………」
 陽太は今年の12月には9才になる。
 本来なら小学校3年生だ。
 しかし、ちょうど小学校に入学してまもなくの1年間を闘病生活に費やすことになり、一年学年が遅れている。
 白血病ーーー特に陽太が患っている慢性骨髄性白血病の名医がいる大病院が近くにあること、隼斗の大学時代の先輩がこの地でそれそこに名の知れた製薬会社の人事部にいて、引き抜きを受けたことを理由にこの地へと引っ越してきた。
 つくしも苦労して就職した病院を退職して後の、再就職の難しさを覚悟しての転居だったが、幸いにして再就職先にも恵まれ、安定した生活を営む現在がある。
 しかも、国家資格である社会福祉士の資格を有しているとはいえ、そう簡単に再就職することは出来ないだろう覚悟だったというのに、幸運な偶然が重なっての好待遇で。
 …本当に運が良かった。
 「そうそう!病院で、去年、風邪で入院した時に同室だった真央ちゃんと会ったんだよ~」
 「え~、そうなんだぁ、懐かしい!」
 「真央ちゃん?」
 「ほら、エレベーターホールの前でバッタリ会ったじゃない?」
 「…トイレの前でも誰かと話してなかったか?」
 「それは恵ちゃんだね。小児科の看護師さんの娘さんなんだ」
 「へぇ~」
 人懐っこく明るい陽太にはあちらこちら知人が多い。
 隼斗もわりに社交的で交友範囲も多いが、たぶんに社交辞令的な部分も多く、おそらく職業的なものなのだろう。
 しかし、陽太は本当に人好きで、誰彼となく話しかけてはその名のとおり太陽のような笑顔で、たくさんの人たちとの触れ合いを楽しんでいた。
 時々、彼が場合によっては死ぬこともありえる難病を患っていることを忘れそうになってしまうくらいだ。
 そうして、顔見知りにすぎなかった隼斗とつくしの縁も結んでくれて家族になった。
 「ね、…やっぱり、今日はもう寝た方がよくない?顔色良くないよ」
 「寝ろ」
 両親二人にたしなめられて、さすがに陽太もシュンと忠告を受け入れる。
 「……うん、そうだね。ごめん、聞き分け良くしなくて。お父さんとお母さんが揃っていてくれてる時って、あんまりないからさ」
 つくしと隼斗が何とも言えない表情で顔を見合わせる。
 大きな病院で他にも複数人の非常勤のカウンセラーがいるとは言え、ほとんどフルタイムの常勤カウンセラーとして働いていたから、つくしもかなり忙しい。
 そして父親の隼斗の方は、担当病院の医師からの呼び出しなど、土日祝日がなく、家にいること自体が稀だ。
 鍵っ子の陽太は、普段かなり寂しいのだろう。
 …MR(※製薬会社営業)って言っても、最近ではいろんな規制でそんなに忙しくないのが一般的だと聞いているけど。
 同じ医療業界にいても、つくしと隼斗では業種が違いすぎて、その実態はわからないから何とも言えないが、それにしても夫は激務すぎるように思えた。
 そうかと思えば、こうして陽太の受診のためにキッチリと休みをとることもできたりするのだが。
 隼斗の体を心配して、つくしもたびたび彼に無理をしないようにと頼んではいる。
 しかし、仕事だからと言われてしまえば、それ以上は何も言えず。
 また、隼斗は仕事のことをうちには持ち込みたがらなかったから、つくしもあまり夫の仕事の詳細についてはよく知らなかった。
 「悪い。この流れの直後に言い出しにくいけどさ…実は、明日から泊まりで出張がある」
 今度はつくしと陽太が顔を見合わせる。
 「…えっと、明日だけ?」
 「ん~、もしかしたら3日くらいになるかも。マズイかな?」
 「あたしは特に夜勤とかある仕事じゃないから、大丈夫だけど」
 つくしが陽太を伺えば、幼い頃からそうした状況に慣れている陽太は特に駄々を捏ねることなく素直に了承する。
 「平気、今はお母さんがいるもん」
 「そっか、ごめんな、今度まとまった休みとれるように頑張るから。…お母さんの言うこと聞いて、いい子にしていろよ?」
 「うん」



*****



 病院の混雑には大人で頑健な隼斗も疲れたくらいなのだから、やはり陽太も相当無理をしていたのだろう。
 つくしが布団を敷いたとたん横になって、そのままバタンキューで寝入ってしまった。
 さっきまでご機嫌で話していたものだから、つくしなどは彼がまさかもう寝てしまっているとは思わずに、他の布団を敷きながら雑談をしていたくらいだ。
 なんだか返事が返って来ないなあ、などと振り返ってみれば…、
 「ありゃ、やっぱり寝ちゃってたんだぁ」
 苦笑しつつ、陽太が体の下敷きにしてしまっている毛布を引き出して体にかける。
 まだ暑い日もあるとは言え、朝方にはかなり冷え込んでいる。
 よほど熟睡しているらしく、いびき混じりに寝息を立てて、無理な姿勢を直してやろうと転がしてもまったく起きる気配がなかった。
 触れる手足は棒のように細くて、頼りなく…切ない。
 亡くなった母親に似ているという柔らかな癖っ毛に手を入れ、手櫛で梳かすと、小さく開けていた唇がかすかに微笑んだ気がした。
 …可愛いな。
 本当にそう思う。
 「ああ、なんだ。やっぱりもう寝たか」
 歯を磨いてきた隼斗が部屋に入ってきて、寝入っている我が子の無邪気な姿に微笑する。
 「相当疲れてたんだね」
 「…予約してて、あの時間だからな」
 病院側には病院側の言い分もあるのだが、いざ自分が患者の立場になると、文句の一つも言いたくなる隼斗の気持ちはつくしにもよくわかる。
 …具合が悪くて行くのに、よけいに悪くなっちゃうよね。
 ため息をつかずにはいられない。
 「明日も早いんでしょ?隼斗さんも今日はもう早く寝ちゃった方がいいよ」
 「だな。…君は大丈夫か?」
 「え?」
 不意打ちに、つくしの心臓がドキリと音を立てた。
 「最近、カウンセリング、行ってないんだろ?」




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