「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙①

愛してる、そばにいて0275

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 疲れた足を引きずり、戒は父と自分の私室の居間に戻って、バフッとソファへと倒れこむ。
 …足が痛い。
 むやみやたらに東京中を闊歩しても、母の在所に行き当たることなどないとわかっていた。
 それでも、探さずにはいられない。
 母の優しい笑顔や温もり、明るい声を求めて…。
 もしかしたら、母もまた戒に逢いたがって泣いているのではないか、辛い目にあっているのでは?
 …俺が助けてあげなきゃ。
 その想いに堪らずいつものように母の顔が見たくなって、子供部屋に隠してある写真を見ようかと立ち上がり…かけた。 
 トントン
 聞こえたノックの音に溜息。
 直接にはタマが何かを言ってくるということはなかったけれど、自分が学校をサボって、あるいは休日の日の空き時間を使って、母を捜し回っていることは付き従っているSPを通じて、老婆にも伝わっていることはわかっていた。
 おそらく、父にも。
 しかし、母のことは忘れろ、もう二度と口にするなと命じたわりに、司はそうした戒の行為を咎めることもなく、今のところ叱咤されたこともなかった。
 もし、もしも、それさえも制限されてしまったら…。
 今の戒はギリギリだった。
 トントン、
 『戒君?』
 ギクッ。
 しかし、扉の向こうから聞こえてきたのは、タマの声などではなく、また他の使用人たちの声ですらなく―――遥香のもの。
 使用人でさえ戒や司がいる時には、無断で彼らの私室に入らないというのに、寝室への前室の居間とはいえ、遥香が彼に無断で部屋に入ってくるとは思えなかったけれど。
 『いないの?』
 …どうする?
 ガチャリ。
 ドアノブに触れる音がした。
 「なにっ!?」
 遥香と顔を合わせたくない。
 慌てて大声を上げた戒の返事に、今度は遥香が息を飲んだようだ。
 自分で声をかけておきながら、一瞬の逡巡の後、
 『あのね、部屋に入っていい?』
 「入らないで。俺、今、シャワー浴びたばかりでまだ裸だから」
 嘘をつく疚しさが、わずかに胸を疼かせる。
 しかし、今、戒が彼女と顔を合わせても、また再び辛辣な言葉を吐きかけてしまうだけだろうことはわかっていた。
 …俺のことは放っておいてよ。
 本当にそう思う。
 遥香の苦しそうな…悲しい顔を無視することが辛い。
 彼女を真実憎めたら、本当に楽になれるのに。
 『そっかぁ…あのね、今日、佑都と動物園に行ったじゃない?昔…戒君も、動物園に行った時にお土産くれたから。たしか、缶バッチとかそういうの好きだったよね?』
 たしかに子供の頃の物は、今でも宝物として大事に持っていた。
 けれど、そういう物を収集していたのは過去のことで、いまさらそんな物など集めてはいない。
 ただそれらが母との思い出の品だったから、それだけ。
 それなのに―――、
 『佑都と一緒に選んだの。佑都がお兄ちゃんとお揃いのが欲しいって言うから、色違いのやつなんだけどね』
 …あいつがまだお揃いとか、そんなのわかるわけないじゃん。
 そう皮肉ってやりたいのに、なぜか喉が詰まって声が出なかった。
 『…後で、タマさんに渡して置くから、良かったらもらってね』
 扉の向こうの気配にジッと耳を澄ませていたから、遥香が去ってゆく衣擦れの音さえも聞こえる気がした。
 「…きらい、キライ、大っ嫌いっ。お前なんて嫌いだぁっ!!」
 まるで言い聞かせるように、呪文のように何度も唱える。
 そうでもしなければ、彼女を受け入れてしまいそうな自分が怖い。
 父を母から奪って、追い出させた女を受け入れることは、彼を生んだ母への裏切りだった。
 「お母さん」
 …お母さんに、逢いたい。




*****




 クスクス笑うおしゃまな小さな女の子の声。
 …戒と同じくらいの年頃か?
 おそらく女の子は中近東かどこか、あるいは複合的な血を持つハーフなのだろう。
 日本人よりもわずかに色味の濃い肌色に、彫りの深い顔立ちをしていた。
 すぐ傍にいる日本人の女と顔立ちが似ていたから、親子もしくはそれに近い血縁か。
 いつもだったら、気に留めることもないのに、見るともなく司はその方向へと目を向ける。
 今夜―――道明寺邸で開かれたパーティは、千人規模の大掛かりなもので、当然ホストの司や妻の遥香だけでは把握しきれない招待客たちも多い。
 そのために幾人かの秘書も随伴してはいたが、その女の子と、保護者なのだろう子供に同伴している女は、その装いや佇まい、周囲を取り囲む招待客たちの態度からして、どう見ても司と同格、あるいは近い階級に位置する家の者であることは間違いなかった。
 しかし、
 …見覚えねぇな。
 既に司が東京に本拠地を移して3年以上、たしかNYやヨーロッパでも見かけなかった顔だ。 
 彼の腕に手を絡ませ、付き従っていた遥香も自然、司の視線の先を追う。
 「……あ」
 思わず声を上げてしまっていた。
 その声音の響きに、その目立つ母子が遥香の知人であることを司も察する。
 「…誰だ?」
 「滋さんです」
 「滋?」
 怪訝な顔の司に、遥香が頷く。
 「ええ、大河原財閥の大河原滋さん。私とは遠縁にあたる方です」




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NoTitle

おはようございます☆更新ありがとうございます☆

呟き。見ました(*^-^*)☆つくし、幸せな家庭で暮らせるですね(;_;)☆☆良かった☆☆☆でも、戒には残酷になるんだな~(>_<)★☆複雑だ・・・(ToT)

でも、その前に悲鳴をあげるような事件?が道明寺家で起こるのかな?
なんだか、発狂した遥香が邪魔な戒を殺そうとしなけりゃ良いんですが(>w< )自分の欲望に忠実な女ってなにするかわかりませんからね★

あと、ラストにはつくしは道明寺家に戻れそうな?\(☆^〇^☆)/良かった(;_;)☆☆☆こ茶子さんが書くラストならなんでも良いんですが、でもこの二人には苦難を乗り越えて、もう一度愛し合ってもらいたかったので☆良かった☆良かった☆
次回も楽しみにしてます(*^-^*)

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