FC2ブログ

「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き①

夢で逢えたら137

 ←夢で逢えたら136 →プロミス~遠い日の約束~002
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「ふわあぁぁ」
 昨日、部屋に入るなり寝落ちしてしまったために、うっかりカーテンを閉め忘れ、朝日の光が顔にあたった眩しさで、レンは目が覚めた。
 時計を見ると、まだam.6:00前。
 旅行から帰宅して、昨日の今日で大学に復帰するつもりはなかったため、週末の金曜日に合わせて帰宅したので、今日明日はのんびりできる。
 そういえば、昨夜リビングに置き去りにした親と、その関係者?はどうしたかとトイレに行きがてら様子を見てみることにした。
 おそらく寝ぐせが付きまくった髪をかき上げながら自室を出ると、ちょうど身支度を整え終わったらしい司と目が合う。
 昨日のままの衣類で、元々濃くはないらしい髭が薄らと顔に生え出しているというのに、この男はむさ苦しくなく、むしろ同性から見ても男臭い野性的な魅力が増し、そこに退廃的な色香が加わって目に毒だった。
 おそらく、育ちからくる品の良さと、どこで寝たのか知らないが(自分と同居していて、よもやあのつくしが夫でもない男を自分のベッドに引き入れるということもあるまい)、そこらでゴロ寝したとは思えない完璧な身支度が、野卑さや荒んだ印象を与えないのだろうと、レンは推察する。
 まあ、スラックスによった皺くらいは大目に見るべきだ。
 しかし、美しい男だった。
 意外にもつくしはメンクイなのか、過去2度お目にかかった彼女の恋人だった男は、どちらも周囲から際立つ美貌の主。
 加えて、人目を引かずにはいられない高スペックな男たち。
 その男たちさえも霞むこの男を見ていると、つくしの好みの原点が知れて納得せざる得ない。
 しかも、初恋の男性という人物にも会って、呆れる思いもあった。
 …この人が最初の恋人で、初恋の人が類さんだったなら、そりゃあ、メンクイにもなるし、理想は高くなるよね。
 「おう、起きたか、はえぇな。お前の母親はベッドに運んでおいたからよ。昨日まで旅先だろ?さすがに若いよな」
 「もしかして…今日もお仕事ですか?」
 どうやら帰宅するつもりだったのだろうと見当をつけて、そういえば朝食どころかコーヒーも出さなかったなと、レンは気配り屋らしい気遣いをする。
 こんな時間に起きだして帰宅しようというのだから、おそらく自宅に帰って身支度を整えてから出社するつもりなのだろう。
 どれだけ眠れたのか知れないが、わずがに目元が赤く濁っているのをレンは目敏く発見した。
 「そういえば、世間は休日か。俺らみたいな職種の人間は、哀しいことにそうはいかねぇんだよな」
 肩を竦めて玄関に向かう司の後を追いながら、改めて男の傍につくしの姿がないことを確認する。
 「ま、昨日は夜分に悪かったな」
 「あ、いえ、すいません。コーヒーの一杯もお出しせず」
 一応社交辞令を述べたレンに、司が存外柔らかい微笑みを浮かべ、片手を上げて別れの挨拶にかえた。
 「気にすんな。また来るから、そん時にでも頼むわ。じゃあな、レン」
 自分も相当だが、司の馴れ馴れしいというか、こだわりない態度にレンは苦笑し、その後姿を見送った。



 カツカツカツ。
 踵の高いハイヒールの床を叩く堅い足音に、喫茶店のテーブルに広げた雑誌を繰っていた手を止め、麻紀乃は顔を仰向けた。
 キツク結い上げた金髪と、理知的でオシャレな眼鏡の美しい女が、麻紀乃の視線を受けて微笑む。
 どこか媚びを含んでいるその愛想笑いに、麻紀乃は自尊心を満足させられ、彼女も愛想良く微笑み返した。
 「…お待たせしてしまって、ごめんなさい」
 「こんにちは、大丈夫です。後ろの方は?」
 女の後ろに控えた男に気が付き、麻紀乃が小首を傾げて、ジッとその男を観察する。
 巻き毛のキツイ黒髪の男は、どこか崩れた印象があるものの、堀が深く濃い顔立ちの中々のイケメンで、麻紀乃の視線を受けてニヤリと笑う唇もセクシーだ。
 男から受けた動揺を隠すこともできず、わずかに赤く染まった頬に手を当てながら、目の前の席へと二人を促がす。
 座ると同時に、男の方が懐から名刺入れを取り出し、麻紀乃へと名刺を一枚差し出した。
 「M&K出版社・契約社員ニコラス・ペティロッシです」
 「彼はこう見えても、数々の著名人たちのゴーストも務めるフリーライターなの」
 女がニコラスを振り返ると、誘惑するような魅力的な笑みを浮かべて麻紀乃の目をジッと見つめたまま、自らが担当した著名人たちの名前を列挙してゆく。
 「…すごい、そんな人が私の自叙伝を?」
 「ええ。あなたの人生はまさに波乱万丈。平凡な女子高生が、あの道明寺司の寵愛を受けて社交界での華となり、あらゆる栄誉と名声を得たのよ。まさに現代のシンデレラ・ストーリーだと思わない?」
 女…ロザーナ・ドミンゲスのヨイショを受けて、麻紀乃が自分に酔う悦びに高揚する。
 「それが一転して、不遇の身に…。今は保釈中の身よね?」
 「ええ」
 天上から地の底…現実へと帰らされ、自信に満ちていた麻紀乃の顔が暗く卑屈に俯く。
 このところずっとそうだ。
 司との思い出を思い起こしては自分の栄華をも同時に思い浮かべ、総二郎の雇った弁護人と接見しては現実に舞い戻らされる。
 司と別れて以来、父の画廊は有力なパトロンを失い、借金だらけだったザル経営の画廊はあっという間に倒産。
 父は破産宣告をし、生まれ故郷の田舎へと隠棲した。
 一応は兄の浩一には兄妹の情愛が残っていたらしく、たびたび拘置所にも面会に来てくれたが、兄自身もあり日の栄華が忘れられないのか、決まって最後には麻紀乃の短慮をなじり、彼女への恨み節となった。
 当初は、自分のしでかしたことに動転し、わけのわからない状態だった麻紀乃も、総二郎の慈悲や弁護人の道理に合った厳しくも優しい諭しを受け、一時期は反省もした。
 殊勝にもあれほどに疎み嫉妬したキャサリン・マーベルや、結果的に殺し損ねてしまった要への謝罪の気持ちや後悔も生まれ、罪を償ったならいつか謝りたいとまで思うようにもなっていたのだ。
 だが、今まではチヤホヤしていた取り巻きたちの手のひらを返したような態度に傷つけられ、保釈されればされるで周囲の人々の冷淡な視線と悪意を持った好奇の眼差しに耐えられなかった。
 それでもまだ、馴染み親しんだ日本に帰れればマシだったのかもしれない。
 けれど、いまだ慣れぬこの外国の地で、麻紀乃は不安と孤独に苛まれ、だんだん躁鬱を繰り返すようになった。
 思わぬほど重い罪になってしまったら、どうしよう。
 もしかして、とんでもない重い罪で、もう日本に帰ることもできないのでは?
 あの司が手をまわしていたら、それもありえないことではない。
 そう思っては、
 …大丈夫、総二郎さんが優秀な弁護人を付けてくれたんだもん。
 ちゃんと反省して罪を償えば、理不尽な罪には陥れられることはないって言ってくれた。
 そう自分を宥める日々、一人の女が彼女を訪ねてきた。
 ロザーナは、麻紀乃の今の理不尽な境遇を助けたい。
 どう考えても、同情の余地は多大にあるのに、このままではまるで極悪非道な悪女のような扱いを受けるのではないかと心配しているといって彼女に甘い言葉を投げかけてきた。
 麻紀乃の境遇に同情したさる有力者の代理人であるという女は、麻紀乃に某3流ゴシップ雑誌の編集者を紹介し、メディアを通じて自分の優位性を訴えるべきだと誘いかけた。
 3流誌なのは道明寺財閥の力を考えれば、相手を本気にさせてしまうような力をもったメディアは財閥の影響力も強く事前に察知されやすく、またいきなりの掲載は宣戦布告のようにとられてしまう可能性がある。
 自分たち…いつの間にか女は麻紀乃と同じ側であるかのように話し、麻紀乃の依存心を惹きつけた…は、あくまでも道明寺司を陥れたいわけでなく、麻紀乃の潔白…ここでも、いつの間にか潔白へと話はすり替えられた…を証明し、麻紀乃の転落した人生を再び元あるべきところへと戻すことこそが重要なのだと熱く説いた。
 そして、再び麻紀乃は見果てぬ愚かな夢を抱いてしまった。
 「このニコラスに、その波乱万丈で涙を誘わずにはいられない貴女のお気の毒な境遇を、ぜひ世間の人々にもわかってもらえるように書いてもらうのよ。当然、世間はいま、先日のあなたの記事であなたのことを注目しているし、興味も持っている。そこにこの自叙伝をブツければ売れるわ」
 「…でも、司に見つかったら、発刊自体できなくなるだろうし、どこの出版社も相手にしてくれないのでない?私の記事を出した出版社も、圧力を受けてもう次は嫌だと断られたのでしょ?」
 ロザーナは同性の麻紀乃さえもを蕩かす甘い笑みを浮かべる。
 「大丈夫。何も同じ出版社を常に使わなければならない謂れはないわ。いくらでも、ショッキングな事件を取り扱いたがる会社はあるし、そんな圧力を恐れない出版社もあるのよ。所詮、道明寺は日本ではトップかもしれないけど、アメリカでは有力とはいえアメリカ経済界を牛耳るほどではないわ。しかも、私にはちょっとした有力な支援者がついていると前にも話したでしょ?彼らなら、道明寺の圧力があっても、あえてその圧力に耐えてあなたの記事を出してくれる出版社を見つけられる力があるのよ」
 一度はその言葉に力づけられ浮上しかけた麻紀乃だったが、さすがに浅はかな麻紀乃にしても女の甘言にどっぷり漬かり続けるにはわずかな躊躇もある。
 その躊躇を見て取って、ロザーナはさらなる一押しを仕掛ける。
 「それに、自叙伝で一躍スターダムに上がった貴女は数々のメディアの寵児になって、あなた自身のステータスもあがるのよ。夫の横領スキャンダルで成り上がったペルーのアニータ・アルバラードのように。富と名声が手に入り、そんな貴女を見た道明寺もあなたの価値を改めて再確認するかもしれないわ」
 麻紀乃の逡巡が…消えた。



 喫茶店に麻紀乃とニコラスを残し、ロザーナが街角を曲がって路上に立つと、間髪いれずにスッと長大な車体のリムジンが横付けされる。
 その車に躊躇なく乗り込むと、さっさと度の入っていない眼鏡を外し、キツクひっ詰めていた髪留めを取り去り艶やかな金髪を美しく散らした。
 そうしていると頼りになる理知的で怜悧なビジネスウーマンから、とたんに場末の娼婦のような蓮っ葉さと華やかな蠱惑に満ちた女へと変化する。
 女が髪を緩く掻き上げ、上着に忍ばせていた煙草を口に咥えると、横に座っていた男が自然な仕草でライターの火を差し出した。
 「…ありがとう、ウーゴ。まったく、イライラするったら」
 「上手く行ったのか?」
 ロザーナは、ニヤニヤしながら彼女を見やるウーゴにしなだれかかり、チラリと対面側の男に視線をやる。
 「大丈夫だ、美人の秘書さんの使いだ」 
 男の簡略すぎる紹介に、対面側の男は無表情に小さく頷きかけることでロザーナへの挨拶へとかえる。
 「ふん、あのもったいぶった女。あたしやあんたが苦労するのを高みの見物っていうのが気に入らないけど。まあ、可愛いお嬢ちゃんの方は簡単だったわよ。ちょっとヨイショしてやって、夢見せてやったらコロッと、ね。ニコラスの容姿も気に入ったんじゃない?なんだか、うっとり見ちゃってたしさ」
 「…まあ、さすがに道明寺の御曹司みたいなタイプはそうそういねぇから、用意できなかったが、ニコラスはあれでも女に関しちゃ、ちょっとしたものだしよ。別に惚れせる必要までねぇから上出来だろ。だよな?秘書さんよ」
 「ええ。目的を忘れないようにお願いいたします」
 ニコリともしない男の無表情に、アウトサイドに生きる男女は軽く肩を竦め、目の前の男は人間ではないとでも思ったらしい。
 人目も憚らず車の中でイチャつきだす。
 「それで、あちらの方はどうなりましたか?」
 「…花沢物産か。フランスの方はちょっと俺らも手が出しがたいからな」
 初めて目の前の男の目に表情…たとえ揶揄るものであれ、人間らしい感情が浮かんだのを見て、ウーゴがわざとらしく目をギョロギョロさせた。
 「待て待て、早とちりすんな、秘書さんよ。誰も手が打てなかったとは言ってねぇ。スペインだ」
 「スペイン?」
 「ああ、元々パラグアイはスペインの植民地だっただけあって、関わりも深い。あっちの身内にちょっと声をかけたら、二つ返事で協力してくれてよ。あんたらの望む時期にコトを起こしてくれるってよ。花沢はスペインにもけっこう進出してっから、そっちでもいいだろ?」
 「では、ミス・ドミンゲスの仕掛けと同時期に」
 「おう」
 男の強い視線に、ウーゴは冷酷な笑みを浮かべながら自信に満ちた頷きで返し、ロザーナへと視線を移す。
 その視線を受けて、ロザーナは嫣然と微笑む。
 「ミス・ドミンゲスはやめてちょうだい。ロザーナでいいわ、山之内」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【夢で逢えたら136】へ
  • 【プロミス~遠い日の約束~002】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【夢で逢えたら136】へ
  • 【プロミス~遠い日の約束~002】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク