「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙①

愛してる、そばにいて0271

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 「お前、再来月、学校の創立記念日が被って、三連休になる日があるよな?」
 てっきり学校でのことを叱咤される、あるいは忠告されるものと思っていたのに、思わぬ父のセリフに、寝たフリを決め込んでいた戒が反応する。
 怪訝に顔を上げた我が子のキョトンとした表情に、司がふっと小さく笑って、ワシャワシャと自分と同じクルクルの巻き髪をかき乱す。
 「やっと顔見せたな。この狸寝入り」
 「…やめてよ、お父さん」
 幼い頃は、きゃあきゃあ喜んでいた戒も、さすがに小学生にもなるとなんでも無邪気に喜んでいられるというものでもない。
 「ジョイポリスだったか?お前、どこだかのアトラクションパークに行ってみたいって、タマに言ってたんだって?」
 それほど強く要望していたわけではなかった。
 行こうと思えばたしかに屋敷内の誰かしらが連れて行ってくれただろうが、戒が行きたかったのはまさにこの目の前の父親とだけで、タマや他の使用人たちと一緒に行ったところで嬉しいはずもない。
 「俺もどこでオフを取れるかなんて、さすがにハッキリとはわからねぇし、本当はお前がサマー・バケーション(夏休み)に入る後半か8月がいいんだろうけどな。…ちょうどその時期上海に出張があって、あっちに東京と同系列のテーマパークがあんだよ」
 耳寄りな話に、体を起こして父と向き合いたいが、胸の下に隠したフォトアルバムの存在にそれをすることができない。
 「場合によっては、俺がお前と一緒にいてやれるのはその一日だけで、あとはSPたちとお前一人で過ごすことになるかもしれねぇが、それでも良かったら一緒に上海に行かねぇか」
 幼い頃のように、嬉しさのあまり歓声をあげて父に飛びついてしまいそうだ。
 ここのところなかった戒の嬉しそうな顔に、司の顔も柔らかく綻ぶ。
 しかし、脳裏に思い浮かんだ人物と事柄に、戒の顔が複雑に歪んで再び俯いてしまった。
 「いいよ、俺行けない」
 「行けない?なんでだ?」
 てっきり戒が二つ返事で快諾すると思っていたのだろう、父が怪訝に眉根を寄せる。
 「だって、遥…あの人と佑都も一緒に行くんでしょ?」
 「…………」
 行けない―――行かないではなく、行けないとそういう戒の言葉のその意味。
 ハァ~ッと大きく息を吐いて、司が自分の顔を片手で撫で戒に背を向けた。
 その隙に戒も胸の下のフォトアルバムを急いで取り出して、枕の下へと隠す。
 「戒」
 ドキッ。
 「…お前も座れ」
 「う、うん」
 振り返った司は特に何に気がついたわけではないようで、戒がフォトアルバムを隠した枕へはなんの関心も寄せはしなかった。
 それでもドキつく胸を抑え、チラチラと伺ってしまいそうな疚しさを戒は必死に誤魔化して、指示されたとおりにノソノソと父の横に並んで座る。
 「俺はお前を誘ったんだ。…他の人間も連れてゆくとは一言も言ってねぇよな?」
 「…でも」
 これまでも当たり前に司には出張があって、現地での必要に応じ、伴侶としての遥香がそれに同行することは珍しくなかった。
 もちろん遊びではなかったから、そのほとんどに戒や佑都を伴うことはない。
 佑都は乳幼児だったが、屋敷にはいくらでも養育の手はあったし、以前のつくしが妻であった時のように司も望みはしなかった。
 しかし、戒は知っていた。
 ごくたまにではあったけれど、司が戒だけを遊びに連れ出すこともあって、そのことを遥香や彼女の実家が気に病み、苦々しく思っていたことを。
 司がどうであろうと、遥香は司を愛している。
 愛されたいと願い、願うあまりにここのところ抗精神病薬と気分安定薬の服用を余儀なくされていた。
 本人はそれを、司や戒、ましてや楓に知られまいとしていたが、屋敷内の誰もが承知していることだった。
 そして、その病の一旦は、司との冷え切った夫婦関係だけが原因なのではなく、継子である戒との関係にもあるのに違いない。
 遥香が屋敷に入ったばかりの当初、彼と友好関係を築こうと何くれとなく気を遣い、接触を試みた彼女を、戒は当然のごとく手ひどく拒絶した。
 時には世話を焼こうとする彼女に物を投げつけて、軽い怪我をさせてしまったことさえもある。
 さすがにその時には司からも注意を受けたが、だからといって父が戒とこの継母との間を取り持とうとする気配はなかったし、当の司自身が遥香との冷え冷えとした関係をなんとかしようとするフシがまるでなかった。
 とはいえ、常に激務で一年の半ばを海外出張に費やしているような男だ。
 家庭のことに掛かりっきりになる余裕はなかっただろうから、それも致し方がないことだったのかもしれない。
 …また遥香が変になったら、俺のせいかもしれない。
 普段の遥香は以前の彼女とそう変わらないようだし、戒を虐げたりましてや虐待するような女ではなかったが、ごく稀に妙に悲観的になったかと思えば異常なくらいに朗らかで自信に満ち、あきらかに普通ではない精神状態になることがあって、戒はそれが怖かった。
 言葉を飲んで俯く戒の肩を抱き、司もまた彼らしくなく言いよどんでは言葉を探し、わずかに顔を顰めて戒の顔を覗き込み、小さく息をつく。
 「戒、お前、この屋敷にいるのが辛いか?」
 「………お父さん?」
 「俺はお前を手放すつもりはまったくないし、…手放したくない」
 「……………」
 父の口から飛び出したショッキングな言葉に息を呑んで、戒がその顔をジッと見上げる。
 「もしかしたら、ババアからお前に直接何か接触してくるかもしれねぇから、あらかじめ言っておく」
 父の話したいこと。
 それが実は、上海の出張への戒の同伴うんぬんなどではなく、そのこと――戒のこれからの進退こそが本題なのだと悟った。
 「お前を中学からイギリスのパブリックスクールにやる話が出てる。いわずと知れた全寮制の学校だ」




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