「愛してる、そばにいて」
第4章 凍える牙①

愛してる、そばにいて0269

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 「戒さん、あなたの学園での生活態度が芳しくないと学園長や校長から伺っていてよ?」
 冷たく見据える楓の眼差しには、血の繋がった孫だというのに、情愛の欠片も見えない。
 「…芳しくないって、どういう意味ですか?」
 顔色を青ざめさせ、わずかに唇の端を震わせながら、それでも大人さえも萎縮させる楓の威圧にも真っ向から立ち向かい、戒が楓の顔をジッと睨み据える。
 もちろん、子供の威嚇ごときに動じる楓ではない。
 しかし、少年を見下ろす楓の目にはわずかな賞賛がなかったか。
 「授業に出ていないそうね」
 「必要ないでしょ?」
 「…そうね、学業成績的に言えば、当家の家庭教師たちで十分に賄えることでしょうし、実際にあなたの学力に関しては何も心配していないわ。でも、校内でもたびたび見過ごし難い問題を引き起こしているのだとか」
 「奥様」
 ひっそりとして落ち着いた声音が緊迫している二人の間に割り入る。
 けっして大きな声でも威圧的なわけでもないのに、従わせずにはいられない厳かな重みのあるタマの言葉に楓も口を噤む。
 「子供相手に、そう一方的に畳み掛けられては、言い訳したいことがあってもロクに言えやしませんよ」
 ハラハラと楓と戒の間で視線を往復させて、口を挟み兼ねていた遥香も、タマの言葉に力を得て、意を決して声を上げる。
 「お義母様、戒君が悪いのではありません。…戒君からは直接聞いたわけではありませんが、戒君の一学年上に在籍している私の親族の者の話ですと、戒君に見過ごし難い嫌がらせをする子がいるのだとか」
 「道明寺家の息子が、イジメを受けているとでも言うのですか?」
 「イジメ…とまでは、聞いてませんが、たびたび聞き捨てならない暴言や態度で戒君をからかうことがあるそうなんです」
 「戒を、ですか?戒が、ではなく?聞くところによると、クラスメートの何人かに暴力を奮ったこともあるのだそうだけど、それをあなたは知ってらっしゃるの?」
 「…それは」
 遥香の顔は楓の言葉を肯定していた。
 「なにがきっかけだったにしろ、海外でならばともかく、戒の体格は他の同世代の日本人の子達に比べて遥かに大柄で、誘拐対策の為に武道も習わせています。そんな戒が暴力を奮うことが許されるとでも?」
 ジロリと睥睨され、息を呑むものの、かつては楓の秘書としても働いていた経験がある遥香だ。
 ゴクリと唾を飲み込み、一瞬反らしてしまった視線を懸命に戻して、それでも引き下がることなく言い募る。
 「暴力のことも聞いています。でも、手を出したのだって、お母…」 
 「話に関係ないくせに、黙ってろよっ」
 鋭い制止の声が、遥香の言葉を飲み込ませる。 
 叱咤する楓にではなく、自分の味方をしてくれた遥香を睨み据え、傲然と顔を上げフンと鼻を鳴らした。
 「イジメられてたわけじゃない。気に入らないから殴った…ただそれだけです。別に入院するほど酷く怪我させたわけじゃないんだ、問題ないでしょ?うちにとっては」
 「問題ない?他人に暴力を奮っておいて、問題ないですか?」
 「先手必勝、どっちが上かわからせてやらなきゃ、図に乗る馬鹿がいるからわからせてやっただけ。それでも、多少は我慢してやったし、警告もしてやったんだ。それでやられて、まさか言いつけられた親が学園に何か言えたなんて、そっちの方が驚きだな」
 戒は悪びれていないが、これまでも似たようなことはいくらでもあったし、その度に暴力で黙らせてきたことは確かで、今回は珍しく外部からの途中入学者で戒のことを知らなかったというだけのことだった。
 ただ親に聞きかじったことだけをイジメのネタに、戒に刃向かった。
 「ぷ―――ッ!!」
 その場にそぐわない声音で噴き出した司へと、一同の視線が集中する。
 「くくく、やるじゃねぇか、戒。さすがは俺の息子だ」
 「…三田川大臣の孫息子なんですよ、相手の子は」
 「ああ、次期総理大臣の呼び声が高いお偉方のってか?戒と同年代だったのが、不運だったな」
 「司」
 不謹慎に明るく笑い飛ばす息子を楓が不快げに睨み据える。
 「俺の時にはさんざん放置で、金で黙らせてきたあんたが、戒の時にはずいぶん目くじら立てるんだな。…それとも三田川んとこの孫息子が相手じゃなきゃ、別に口出しするつもりでもなかったってだけか?」
 「……私も同じ過ちを何度も犯すほど愚かではありません」
 「ふっ」
 含んだ物言いにも鼻で笑い、司が戒の肩をポンポンと小さく叩いて、この場から立ち去れと促す。
 「お前が他人に命じて、フクロにでもさせたってわけじゃねぇんだろ?」
 「するわけがない」
 むしろ相手の方が複数だった。
 わりに体格もいい相手だったから、それだけにいつもよりはやりすぎてしまったきらいはあるが、卑怯な真似をしたわけではなかったし、それで叱咤されようと戒はけっして自分を曲げるつもりはなかった。
 …誰にも頭は垂れない。
 たとえ道明寺家の保護や威容がなかったとしても、戒には戒の少年ながらの矜持がある。
 「じゃ、いいじゃねぇか」
 「司っ!」
 「いいかげんにしろよ…俺なんかより、戒の方がずっと上等だ」
 納得したわけではないだろうが、我が子の荒廃を放置した責任の自覚くらいはあるのだろう。
 小さく息を吐き、楓が口を噤む。
 「戒、そろそろおやつの時間だろ?鞄おいて、食堂にでもいってやれよ。パティシエがお前のため手ぐすね引いて美味いもん作ってんだろうからな」
 「………じゃ」
 今度は楓も引き止めない。
 ただ冴え冴えとした眼差しでその後ろ姿をいちべつしたのみで、既に関心は失せ、息を潜めて成り行きを見守っているメイドに抱かれた子供へと向き直っていた。
 「…佑都はずいぶん大きくなったようね」
 「え、あ…はい」 
 やはり緊張に手に汗を握っていた遥香もホッと息を吐く。 
 「その後は順調ですか?早産で未熟児に生まれた子は、生後何年間かは経過観察が必要と聞いてますが、発達の方はどうなんです?」
 「はい、先日も主治医の先生に、この調子でゆけば小学校に上がる前には、体重も…」
 幼い子供を囲んでの姑と嫁の会話をよそに、司もその横をすり抜け自室へと向かう。
 階段ですれ違いざま、
 「ぱーぱ!」 
 佑都の小さな手が司へと伸ばされたが、チラリとも見ることなくそのまま通り過ぎてゆくのを、タマがやるせなく小さくため息をついて見送る。
 そして、遥香もまた表向き何食わぬ顔で楓と談笑を交わし合いながら、その冷たい背中をいつまでも切なく…苦痛に満ちた眼差しで追い続けていた。




*****




 楓との突然の遭遇は、思いのほか戒の気力を奪い、気分を塞がせていた。
 まさか、今日この日に、自分に声をかけてくるとすら思っていなかったのだ。
 …さんざん無視しておいて。
 冷たい楓の眼差しや口調に傷つくにはもう慣れすぎていていまさらだったが、まさかイジメもどきの嫌がらせを受けていたことを、白日の下に晒さることになるとは思っていなかっただけにショックだった。
 …なんで、あいつが知ってたんだ。
 たしかに、何か困ったことはないか、嫌な目に合ってるのではないかと折を見て遥香がたびたび聞いてくることはあったが、まさか英徳学園内にあの女の親族が潜伏しているとは思いもしなかった。
 …スパイしてたんだ、あいつ。 
 自分をいつも冷遇し無視する楓よりも、なおいっそう遥香が許しがたい気がした。
 …なんで、あんなことお父さんたちにバラすんだっ。
 戒の小さな胸にあるプライドが軋んだ。
 キングサイズの巨大なベッドにうつ伏せに顔を伏せ、大の字になって…、もやもやする胸のうちを抱えて戒は荒い呼気を繰り返す。
 …お母さん。
 トントン――。
 ビクッ。




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