「愛してる、そばにいて」
第3章 風になる日⑥

愛してる、そばにいて0266

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 それは…つくしの結婚指輪だった。
 かつて司が贈り、この10年間片時も外されることがなかった彼の愛の証。
 彼の想いそのもの。
 司は震える手を伸ばして、その指輪を手に取った。
 そして、それを握り込んだまま、両手で顔を覆って項垂れる。
 さまざまなつくしとの思い出が、彼女の姿がまるで走馬灯のように彼の脳裏に浮かんでは消え、消えてはまた再び思い浮ぶ。
 笑った顔。
 拗ねた顔。
 怒った顔。
 泣いた顔。
 照れて恥ずかしそうにはにかんだ顔。
 どんな表情の彼女も、司にとってはこの世でもっとも美しく…可愛らしい。
 …つくし。
 …つくし。
 気が付けば、脳裏の面影へと語りかけてしまう。
 あれはいつのことだっただろう。
 もしかしたら、日本に帰国するホンの少し前のことだったかもしれない。
 戒が珍しく早寝をして、久しぶりにゆっくりと過ごせた夫婦二人っきりの時間。
 彼女を早く抱きたい司が誘惑していたというのに、照れたつくしにあれこれと躱されて、焦れて必死に口説いた。
 『なんだよ。ジらすんじゃねぇよ。俺が出張中、どれだけお前のことで頭いっぱいだったと思うんだよ?』
 『え~、だってさぁ』
 チュウチュウ吸い付く司にクスクス笑うばかりで、つくしは中々手の内に落ちてくれずに、なんだかんだとジャレ合った。
 それでも目と目が合ってしまえば、キスをせずにはいられなくて…。
 『好きだ。愛してる。…最高にお前に惚れてる』
 『ん、もうっ!』
 押し倒して両腕で囲って、覗き込んだ顔は真っ赤になっていた。
 それがまた可愛くて…何度も惚れ直したのを憶えている。
 『…マジすげぇ、信じられないくらい可愛い、お前』
 『あ、あんたってさ。普段からわりと平気でそういう…恥ずかしいこと真顔で言うよね』
 『は?恥ずかしい?なんだよ、それ』
 『好きとか、愛してるとか…可愛いだとかさ』
 『本当のことだろ?俺は思ってること言ってるだけだ』
 『そ、そ、それはそう…かもしれないけど、ね』
 『かもじゃねぇ、マジだっつーの』
 疑うような言い方をされて、ムッと眉根を寄せた司の顔を見上げ、つくしは困ったような複雑な顔で苦笑していた。
 『うん、わかってる、わかってるけどさ。十人並みの容姿の私を掴まえて、そんなこと言ったり…思ったりするのなんて、あんただけだよ。綺麗とか、可愛いとか、いつも普通にバンバン言うから…けっこう、その照れ臭いっていうかね』
 『お前は綺麗だし、可愛い』
 世界で一番。
 いや、彼女以外の誰のことも目に入ったことがなかったから、司にとって唯一綺麗なのも、可愛いのも彼女だけだったというだけのことで、それが彼の真実だったから、つくしが一々恥ずかしがる意味が彼にはわからなかった。
 『全部本気だ』
 『…うん』
 『誰が何をどう思おうと俺には関係ねぇ。お前を誰かと比べるつもりもない。俺にとっての‘オンナ’っていうはこの世でお前だけなんだ。…俺がそう思ってるんだから、それだけでいいだろ?』
 そろそろおしゃべりは辞めだと、司が顔を傾け、彼女のほっそりとしたうなじに顔を埋めようとしたところ―――、
 『…おい』
 唇に小さな手を押し当てられ、なおも邪魔をされてしまった。
 『邪魔すんな』
 『…邪魔するって、そうじゃなくってさ、そうじゃないんだけど。…どうしてあんたは私のことがそんなに好きなの?そんなに愛してくれるの?』
 それこそ真剣な顔で、彼女がそう聞いてくる意味こそ司にはわからなかった。
 『私はごく平凡な女だもん。それなのに、なんであんたみたいな凄い男が、そんなにも私のことを一途に愛してくれるんだろう』
 愛してるから。
 もはや司にもそうとしか言える言葉がなかった。
 遥か少年の日、たしかに彼自身も彼女と同じように疑問に思ったことはある。
 なぜ、彼女だったのだろう。
 彼におもねって、容易に手に入る女たちなどではなく、どうして彼を嫌って…違う男に恋していたこの女を愛さずにはいられなかったのだろうかと。
 『司?』
 つくしの顔をジッと見下ろしたまま、言葉を選ぶ彼に何を思ったのだろう。
 それ以上、彼を追求することなく、つくしは小さく微笑み甘く強請った。
 『ね、じゃあさ、あれ言ってよ』
 『あれ?』
 『あんたの最強呪文』
 なんのことかわからなくて戸惑う司に、ほらほら思い出せと迫って、しまいには彼の髪にくぐらせた手で頭を掴んで振り回してくる。
 『やめろっ!』
 『ほら、ほら、ほらっ!!』
 『てめぇっ』
 『ちょっ!ひ~~~ぃっ、く、くすぐらないでよっ。キャハハハハ』
 『お前が人の頭をシェイクしたりするからだろ』
 『やめてぇ~、ごめん、ごめんって!…じゃなくって、あれだよ。あんたがいつも私に言うやつ』
 妙に執拗なつくしの願いに、司も真剣に心当たりを探し、思い当たった言葉を口にした。
 『愛してる』
 『………もう一声』
 『愛してる、そばにいろ?』
 とたんつくしの顔が嬉しそうに輝いて、正解を悟る。
 だから、心をこめてもう一度願った。
 『そばにいてくれ、つくし』
 彼の頬に手を伸ばして、照れ屋な彼女が自分から彼の唇へと優しくキスをくれた。
 あの時のキスの甘さと幸福感をけっして自分はこの先もずっと忘れないだろう。
 『その言葉って最高の呪文だよね。あんたみたいな男にそんなこと言われたら、きっとどんな女もあんたに惚れずにいられない、あんたを一人になんかできやしないよ』
 そう言って幸せそうに笑っていた彼女の姿が遠ざかってゆく。

ままさん…愛してる、そばにいて266話

 「嘘つきめ、効き目…なかったじゃねぇか」
 彼女へと唱え続けてきた願いは、ついには叶うことがなかったのだ。
 …俺はお前にただ褒められたくて、愛されたいだけの男だ。
 それなのに肝心のつくしがいない。
 …それでも、たしかにお前はここにいた。
 耐え切れぬ苦痛と悲嘆に司は絶叫した。
 「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ、つくしぃっ!!」
 夜毎司を抱きしめ、愛してくれた女はもはやこの世のどこにもいないのだ、と。



*****



 黒塗りのリムジンが停車するかしないかのタイミングで、いつもは運転手が開けるドアが内側から開いて、転がるように小さな体が飛び出してくる。
 「坊ちゃんっ!」
 老婆の静止を無視して、いならぶ使用人たちの間を、周囲を見回しながら戒は駆け抜けてゆく。
 彼の脳裏にあるのはたった一人の名前と姿だけ。
 ―――お母さんっ!



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